コラム

整理解雇について弁護士が解説

2023-09-29

会社の業績が悪化した場合などに整理解雇が行われることがあります。

もっとも、整理解雇の有効性については、労働者の雇用確保という観点から厳しく判断されることとなります。

この記事では、整理解雇について京都の弁護士が解説します。

整理解雇を検討している企業の方はぜひ参考にしてみてください。

1 整理解雇とは

整理解雇とは、不況や経営不振などの使用者の経営上の理由による人員削減のための解雇をいいます。

労働者側の事情ではなく使用者側の事情による解雇となることから、次の判断枠組みにより、厳しく判断されます。

2 整理解雇の有効性についての判断枠組み

(1)整理解雇の必要性

人員の削減につき、経営上の必要性に基づいて実施される必要があります。

裁判例によって、この必要性をどの程度厳格に要するとするのかについての判断が分かれています(たとえば、整理解雇をしなければ直ちに倒産の危機に瀕する程度に差し迫った必要性を要するのか、経営上の合理的理由があれば足りるのか)。

(2)解雇を回避する努力

会社は、配置転換、出向、退職勧奨、希望退職の募集など、整理解雇を回避するための努力をしなければいけません。

解雇を回避する努力についても、具体的にどの程度のことが要求されるかについては、最大限の経営上の努力を尽くす必要があるとする見解や、解雇を回避することができる相当の経営上の努力で足りるとする見解などがあります。

(3)人選基準や人選の合理性

公正であること、合理的に行われることが求められるため、人選基準が客観的に合理的であり、その運用も合理的である必要があります。

人選基準については、抽象的な基準、使用者の恣意が介在する余地が大きい基準については、人選基準の合理性が否定されるおそれがあります。

(4)解雇手続きの妥当性

会社は、労働者・労働組合に対して整理解雇の必要性と具体的な実施方法等について十分に協議、説明をしなければなりません。

裁判所は、これらの4つの要件(要素)によって、整理解雇の有効性を判断するのです。

3 まとめ

以上みてきたとおり、整理解雇については、厳格な判断がなされています。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。

整理解雇を検討しているという企業の方は、お気軽にご相談ください。

賃金を減額する方法について弁護士が解説

2023-09-22

賃金は、労働者と使用者との間の契約内容であるため、労働者の同意なく使用者が自由に減額できるものではありません。

また、賃金の減額は、労働条件の不利益変更にあたるため、適切な手続きが必要です。

この記事では、賃金を減額する方法について京都の弁護士が解説します。

従業員の賃金の減額を検討している企業の方はぜひ参考にしてみてください。

1 賃金を減額する方法

賃金を減額する方法としては、以下のものがあげられます。

(1)就業規則の変更

労働契約法は、原則として、使用者は労働者と合意することなく就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないとしています(9条本文)。

もっとも、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性などに照らして合理的なものであるときには、労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするとしています(10条本文)。

賃金の減額は労働条件の不利益変更に当たるため、変更が合理的なものである必要があります。

(2)労使の個別の合意

労働契約法8条により、労働者及び使用者は、その合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができるとされています。

この合意については、明示的もしくは黙示的な合意であるとされています。

明示的もしくは黙示的な合意については、裁判例において、労働者の自由意思に基づくものであるかなどについて、慎重な判断がなされています。

(3)労働協約の改定

労働協約とは、労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する協定です。

労働条件の変更について、使用者と労働組合との間で協議がなされ、合意により労働協約が締結された場合には、規範的効力(労働組合法16条)を有し、原則として合意内容が組合員に適用されます。

もっとも、一部の労働者をことさら不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたような場合には規範的効力は否定されると考えられています。

2 まとめ

以上のとおり、賃金の減額には、適切な手続きが必要となり、それがとられていない場合には、労働者との間でトラブルを招くおそれがあります。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。

従業員とのトラブルで困っているという企業の方は、お気軽にご相談ください。

賃金の支払に関する原則とは?

2023-09-15

労働者の生活を支える賃金が全額確実に労働者に支給されるように、賃金の支払いについては、労働基準法によって、①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月一回以上、⑤一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています(賃金支払の五原則。労働基準法24条)

この記事では、賃金支払の五原則について京都の弁護士が解説します。従業員への給与の支払について検討している企業の方はぜひ参考にしてみてください。

1 通貨払の原則

通貨払の原則は、賃金は通貨で支払わなければならず、原則として現物支給を禁じるものです。

通貨とは、日本の通貨を指し、原則として外国の通貨や小切手は認められません。

2 直接払の原則

直接払の原則は、賃金は、直接労働者に支払わなければならないとするものです。

労働者の委任を受けた任意代理人への支払いは、原則として、直接払の原則に反することとなります。

3 全額払の原則

全額払の原則は、賃金は、原則としてその全額を支払わなければならないとするものです。

ただし、給与所得税の源泉徴収や社会保険料の控除など、法令に別段の定めがある場合や、労使の協定があるときも、例外として一部控除することが認められています。

4 毎月払の原則

毎月払の原則は、賃金は、毎月1回以上支払わなければならないとするものです。

この原則の趣旨は、労働者の生活の不安を除くことにあります。

5 一定期日払の原則

一定期日払の原則は、賃金は、一定期日を定めて支払わなければならないとするものです。

この原則の趣旨は、支払期日が不安定となることによって、労働者の計画的な生活が難しくなることを防ぐことにあります。

6 まとめ

賃金支払の五原則については、意外と知らなかった、ということもあると思いますので、この機会に正確に理解されてはいかがでしょうか。

京都の益川総合法律事務所では、企業側の労働法務に力を入れて取り組んでいます。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。

民法改正による法定利率の変更について―企業の方へー

2023-09-08

2020年(令和2年)4月1日に施行された民法の改正により、法定利率について大きな変更がなされました。

この記事では、民法改正による法定利率の変更について、京都の弁護士が解説します。企業の債権の管理や契約にも影響を与える事項ですので、企業の方は参考にしてみてください。

1 法定利率とは

法定利率とは、契約当事者の間に利率や遅延損害金について合意がない場合に適用される利率のことです。

たとえば、金銭の消費貸借などの場合に当事者の間で利率について合意がない場合には、法定利率が適用されることとなります。

2 改正前の定め

法定利率について、改正前は、一般の債権については民法により年5%、商行為によって生じた債権については商法により年6%とされていました。

これについては、昨今の低金利の情勢の下、法定利率が市場の金利を大きく上回っているため、不公平であるという問題点が指摘されていました。

3 改正後の定め

改正後においては、改正前の問題点をふまえ、市場の金利の水準に合わせるために、民法の法定利率を年3%に引き下げ、あわせて商法の法定利率が廃止されました。

また、市場の金利の動向は今後とも変動することが予想され、将来的に法定利率が市場の金利動向と大幅に離れてしまうことを回避するために、市場の金利動向に合わせて法定利率が自動的に変動する仕組みを採用しています。

具体的には、法定利率は法務省令において定めるところにより3年を1期として、以下の基準により変動します。

各期における法定利率は、直近変動期(法定利率に変動があった期のうち直近のもの)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

ここで、基準割合とは、法務省令で定めるところにより、過去5年間(各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月)における短期貸付の平均利率の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満の端数は切り捨て)として法務大臣が告示するものをいいます。

4 まとめ

本記事では、民法改正による法定利率の変更について解説しました。

企業においては、法定利率について正確に把握し、契約書の見直しなどが必要でないか、検討されてみてはいかがでしょうか。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。お困りごとのある企業の方は、お気軽にご相談ください。

無断欠勤が続く社員への対応について弁護士が解説

2023-09-01

無断欠勤が続く社員がいる場合、会社はどのように対応するのがよいのでしょう。

今回は、無断欠勤が続く社員への対応について弁護士が解説します。

1.無断欠勤と解雇

無断欠勤は、労働者の義務違反となり、通常、就業規則において解雇事由として定められています。

だからといって、無断欠勤が続いた場合、すぐさま解雇が有効とされるわけではありません。

無断欠勤が続いた場合であっても、解雇が客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であることが必要です。

判例では、精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めたうえで休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、労働者の出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして論旨退職の処分を無効としています。

2 まとめ

判例からもわかるように、会社としては、社員の無断欠勤が続いた場合には、具体的な事実関係にもとづき、慎重な対応が求められます。

また、社員の処分を検討するにあたっては、無断欠勤の日付や理由、会社の対応などを記録しておくことが重要です。

無断欠勤が続く社員への対応にお困りの際には、京都の益川総合法律事務所まで、お気軽にご相談ください。

民法改正による消滅時効制度の変更について―企業の方へー(2)

2023-08-25

2020年(令和2年)4月1日に施行された民法の改正により、消滅時効制度について大きな変更がなされました。

前回の記事に続いて、この記事では、民法改正による消滅時効制度の変更について、京都の弁護士が解説します。企業の債権の管理にも関わる問題ですので、債権管理をしている企業の方は参考にしてみてください。

2 改正のポイント


(3)③人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の見直し

改正前民法においては、権利を行使できる期間について、不法行為に基づく損害賠償請求権については、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年、債務不履行に基づく損害賠償請求権については、権利を行使することができる時から10年と定められていました。

この点、不法行為に基づく請求とは、契約関係に基づかない請求で、交通事故(通常被害者と加害者の間に契約関係がない)の場合などが例にあげられ、債務不履行に基づく請求とは、契約関係に基づく請求をいいます。

上述した権利を行使できる期間の制限については、人の生命・身体の侵害によるものかといった観点による区別はなされていませんでした。

しかし、人の生命・身体に関する利益は、一般に、財産的な利益等の他の利益と比べて保護すべき度合いが高く、また、生命や身体について被害が生じた後の被害者は、普段通りの日常生活を過ごすことも難しくなってしまうなど、時効完成の阻止に向けた措置を迅速にとることができない状況となってしまう場合も少なくありません。

そこで、改正民法では、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間を長期化するという観点から、不法行為に基づく損害賠償請求の場合、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合のいずれの場合にも、損害及び加害者を知った時(権利を行使できるのを知った時)から5年、不法行為の時(権利を行使する事ができる時)から20年とされました。

(4)④不法行為の損害賠償請求権の長期の権利消滅期間に関する見直し

改正前民法においては、20年の権利消滅期間について、判例は除斥期間を定めたものであるとしていました。除斥期間とは、期間の経過によって当然に権利が消滅するものであって、時効の中断や停止の規定の適用がなく、除斥期間の適用について信義則違反や権利濫用に当たると主張することはできないとされていました。そのため、長期間にわたって損害賠償請求をしなかったことがやむを得ない場合であっても、被害者の救済が図ることができないという不都合がありました。

そこで、改正民法では、この長期の権利消滅期間について、消滅時効期間としました。

これによって、時効の更新・完成猶予の規定が適用され、また、消滅時効の援用について、信義則違反や権利濫用と主張することができるようになりました。

3 まとめ

本記事では、消滅時効制度の概要、改正のポイントのうち、③人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の見直し、④不法行為の損害賠償請求権の長期の権利消滅期間に関する見直しについて解説しました。

消滅時効制度について正確に把握することは、企業の債権管理にとって重要なポイントとなります。

前回の記事でもお伝えしましたが、改正のポイントのうち、①職業別の短期消滅時効の見直しが特に重要なので、正確に把握することが有用となります。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。お困りごとのある企業の方は、お気軽にご相談ください。

民法改正による消滅時効制度の変更について―企業の方へー(1)

2023-08-18

2020年(令和2年)4月1日に施行された民法の改正により、消滅時効制度について大きな変更がなされました。

この記事では、民法改正による消滅時効制度の変更について、京都の弁護士が解説します。

企業の債権の管理にも関わる問題ですので、債権管理をしている企業の方は参考にしてみてください。

1 消滅時効の概要

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合、その権利を消滅させる制度です。

時効制度の意義については、

  • 継続している事実状態は保護すべきである
  • 期間が経過することにより証拠の提出が困難になる当事者を保護すべきである
  • 権利の上に眠る者は保護しない

と説明されています。

2 改正のポイント

主な改正のポイントは、以下の4つです。

  • ①職業別の短期消滅時効の見直し
  • ②時効の中断・停止の見直し
  • ③人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の見直し
  • ④不法行為の損害賠償請求権の長期の権利消滅期間に関する見直し

以下、順に解説していきます。

(1)①職業別の短期消滅時効の見直し

改正前民法においては、職業別の短期消滅時効の特例が定められ、また、商法においても、商事消滅時効の特例が設けられていました。

しかし、これについては、ある債権について、どの時効期間が適用されるのか分かりにくい等の問題が指摘されていました。

そこで、改正民法では、職業別の短期消滅時効、商事消滅時効について廃止し、「権利を行使することができる時」から10年という時効期間は維持しつつ、「権利を行使することができることを知った時」から5年という主観的起算点からの消滅時効期間を追加し、そのいずれか早いほうの経過によって
時効が完成する、としました。

(2)②時効の中断・停止の見直し

時効の中断とは、法定の中断事由があったときに、それまでに経過した時効期間がリセットされて、改めてゼロからスタートすることです。

時効の停止とは、時効が完成する際に、権利者が時効を中断するのに障害がある場合に、その障害が解消された後一定期間が経過するまでの間時効の完成を猶予するものです。

時効の中断については、制度が複雑でわかりにくいという問題点があり、また、時効の停止についても、「停止」という用語から意味が理解しにくい、時効の中断とともに整理すべきではないかという指摘がなされていました。

そこで、改正民法では、時効の中断について、その効果に応じて「完成猶予」(時効の完成を猶予する効果)と「更新」(時効を新たに進行させる効果)に整理し、時効の停止については「完成猶予」に整理しました。

また、時効の「完成猶予」事由と「更新」事由についての整理もなされました。さらに、協議を行う旨の合意が時効の完成猶予事由となるという規定が新設されました。

3 まとめ

本記事では、消滅時効制度の概要、改正のポイントのうち①職業別の短期消滅時効の見直し、②時効の中断、停止の見直しについて解説しました。

債権の管理という観点からいうと、①職業別の短期消滅時効の見直しにより、消滅時効期間が統一されたことが重要なポイントとなるのではないでしょうか。

次の記事では、③、④について解説していきます。

経歴詐称を理由に懲戒解雇ができるのか?

2023-08-11

採用の段階では経験者であると聞いていたけれども、入社後に経験者でなかったことが発覚した場合など、採用の段階で聞いていた経歴が入社後に虚偽であったことが発覚した場合、会社は懲戒解雇をすることができるでしょうか。

この記事では、経歴詐称を理由に懲戒解雇ができるのかについて、京都の弁護士が解説します。社員の経歴詐称が発覚して困っているという会社の方はぜひ参考にしてください。

1 経歴詐称

経歴詐称は代表的な懲戒事由であり、多くの会社では就業規則の懲戒事由としています。会社にとって、履歴書に書いてある学歴や職歴は、社員の採用を決めるにあたって重要な判断要素となるからです。

もっとも、経歴詐称を理由に懲戒処分を行うためには、詐称された経歴が重要なものであることが必要とされています。

2 どのような経歴の詐称が重要な経歴の詐称にあたるか

では、どのような経歴の詐称が「重要な経歴の詐称」にあたるのでしょうか。

これについては、最終学歴、職歴、犯罪歴などがあげられます。

もっとも、これらに当たる場合であっても、具体的な事実関係から採否決定において重要な内容であったかどうかという観点から判断がなされます。

このうち、最終学歴については、高く詐称した場合だけでなく、低く詐称した場合にも問題となるものです。過去の裁判においては、最終学歴について低く詐称した事案で懲戒解雇を認める判断がなされているので、注意が必要です。

3 まとめ

以上のとおり、経歴詐称を理由に懲戒解雇ができるのかについては、「重要な経歴の詐称」に当たるかについて、具体的な事実関係から採否決定において重要な内容であったかどうかという観点から判断がなされます。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。

経歴詐称を理由に懲戒解雇をしてもいいかという判断については、弁護士の法的なアドバイスが有効ですので、お困りの会社の方は、お気軽にご相談ください。

懲戒処分の種類について弁護士が解説

2023-07-28

社員が問題を起こしたとき、会社は、懲戒処分を行うか、行うとすればどの懲戒処分とするかについて検討するのではないでしょうか。

検討にあたっては、どのような懲戒処分があるのか、しっかりと把握する必要があります。

この記事では、懲戒処分の種類について京都の弁護士が解説します。懲戒処分を検討している会社の方はぜひ参考にしてください。

1.懲戒処分の種類

懲戒処分の種類について、法律で規定があるものではありませんが、多くの会社では、軽い処分から順番に、譴責・戒告、減給、出勤停止、降格・降職、諭旨解雇、懲戒解雇が定められています。

2.譴責(けんせき)・戒告

譴責・戒告は、口頭又は文書によって将来を戒めるものであり、最も軽い懲戒処分です

譴責・戒告自体によって実質的な不利益を受けるものではありませんが、譴責や戒告を受けたことを理由として、人事考課が低くなり、昇給や賞与に不利に働くことがあります。

3.減給

減給とは、本来その労働者が受けるべき賃金額から一定額を差し引くことですが、労働基準法91条により、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められています。これは、1回の問題行為について平均賃金の半日分が上限であり、複数の問題行為があったとしても、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えることができない、ということです。

4.出勤停止

出勤停止とは、労働契約を存続させながら労働者の就労を一定期間禁止するものです。

出勤停止期間中は賃金が支給されず、勤続年数にも通算されないことが通例です。期間としては、1週間から2週間程度が多いですが、1か月から3か月などの長期になる場合には、「懲戒休職」とされ、労働者の不利益が大きいことから、処分の有効性は厳しく判断されます。

5.降格・降職

降格・降職とは、人事制度における役職・職位・職能資格などを引き下げることです。

人事権の行使のみならず、懲戒処分として行われることもあるため、就業規則上の根拠が必要です。

6.諭旨解雇(ゆしかいこ)

諭旨解雇とは、一般的には、労働者から退職届けを提出させたうえで解雇する処分であり、懲戒解雇よりも多少緩やかな懲戒処分とされています。

諭旨解雇も、労働者の不利益(職を失う)が大きいため、懲戒解雇に準じて厳しく有効性が判断されます。

7.懲戒解雇

懲戒解雇とは、懲戒処分の一態様として行われる解雇であり、最も重い懲戒処分です。

退職金の全部又は一部が支給されない場合が多く、再就職にも不利になるなど、労働者への不利益が大きいものです。そのため、処分の有効性については厳格な判断がなされます。

検討が十分でないまま懲戒解雇を行って、労働者から無効を主張され、その主張が認められてしまうと、地位の回復や未払い賃金の支払いを求められるなど、会社にとって大きなダメージとなってしまうので、処分の前に慎重な検討が必要です。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。

懲戒解雇については慎重な検討が必要ということをご存知かもしれませんが、その他の処分については、どのような問題行動に対して、どの処分が妥当かはよくわからない、という方も多いと思います。

どの処分が妥当であるかについては、問題行動の態様、原因、動機、当該社員の処分歴、同種事案の処分例との均衡等について考慮する必要があります。

社員が問題を起こして処分を検討されている等のお困りごとのある会社の方は、お気軽にご相談ください。

懲戒解雇した社員に退職金を払わなければいけないのか?

2023-07-21

社員が問題行動により懲戒解雇となった場合、当然退職金を払わないでよい、又は迷惑をかけられたのだから退職金を払いたくないとお考えになる経営者の方がいらっしゃいます。

では、会社は懲戒解雇した社員に退職金を払わなければいけないのでしょうか

この記事では、懲戒解雇した社員に退職金を払わなければいけないのか、京都の弁護士が解説していきます。興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

1.退職金の法的性質

懲戒解雇した社員に退職金を払わなければいけないのか、という問題について考えるにあたっては、退職金にどのような法的性質があるかが関わってきます。

これについては、退職金が就業規則や労働協約によって支給条件が明確に定められている場合、退職金は、賃金の後払い的性格と功労報償的性格が混在しているとされています。

2.退職金不支給条項

このような退職金の法的性質をふまえて、退職金の支給条件として、一定の事由がある場合に退職金の不支給や減額を定めることは認められますが、不支給や減額をするには、労働者のそれまでの功労を抹消また減殺するほどの信義に反する行為があった場合に限られるとされています。

今まで述べてきたとおり、懲戒解雇した社員には当然に退職金を支払わなくてよい、ということにはなりません。

退職金を支払わなくてよい事案であるか、労働者のそれまでの功労を抹消また減殺するほどの信義に反する行為があったか否かについては、慎重な検討が必要です。

京都の益川総合法律事務所では、退職金の不支給などの労働問題(使用者側)についてのご相談に力を入れて取り組んでいます。お気軽にご相談ください。

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