コラム

どこからがパワハラになるの?企業側の弁護士が解説

2024-02-12

近年、会社内でのパワハラに対して、社会全体の目が厳しくなっています。

それゆえ、企業運営を行っていると、従業員からパワハラ被害の申告を受けたり、パワハラを理由に会社が訴えられてしまうこともあります。

ところが、一概にパワハラといっても、その判断が難しく、その内容が本当にパワハラに該当するのかについて、判断に迷うこともあると思います。

そこで、今回は、どこからがパワハラになるのかについて、会社側で労働問題に注力する弁護士が解説します。会社経営者の方や、会社の担当者の方は、是非参考になさってください。

1.職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)とは

職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く人に対して、①職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に②業務の適正な範囲を超えて③精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為を言います。

上司が部下に対して、かなり強い言動で注意を行ったとしても、業務上必要かつ相当なものであれば、パワハラには当たりません。

また、その行為を受けた従業員がパワハラであると感じたか否かで、パワハラに該当するかが決まるわけではありません。パワハラといえるためには、同様の状況で当該行為を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるものであることが必要となります。

パワハラの類型や具体例などの、パワハラに関する詳しい解説は、「セクハラ・パワハラで訴えられそうな会社・経営者の方へ」の記事でしていますので、興味がある方は参考になさって下さい。

2.パワハラに当たるのか

(1)業務上のミスに対する強い叱責

業務上のミスに対する、指導目的の叱責は、強めに注意をしても、パワハラには該当しないと判断される傾向にあります

例えば、これまでも業務上問題点があった部下が、顧客からテレアポの感じが悪いという苦情を受けた際に、上司が部下に「かなり厳しく注意をした」事例も、その内容が、苦情に対する改善策として、まっとうなものであるとして、違法性が否定されています

また、医療現場において、ミスの多い部下に上司が厳しく指導した事例でも、上司が部下に対して、「時には厳しい指摘・指導や物言いをしたことが窺われるが、それは生命・健康を預かる職場の管理職が医療現場において当然になすべき業務上の指示の範囲内にとどまるものであり、到底違法ということはできない」とされています。

(2)ミスの多い従業員に日々反省点を記載した日報の提出を命じる

ミスの多い従業員に、日々反省点を記載した日報の提出を命じることが、パワハラに該当するか争われた事例もあります。

裁判所は、「教育指導的観点から少しでも業務遂行能力を身につけさせるために、日報の作成を命じたと考えられるのであり、不合理な自己批判を強制したものでないことは明らかである」として、違法性を否定しました。

(3)遅刻に対する強い叱責

遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない従業員に対して、一定程度強く注意をしても、パワハラには該当しません。

(4)メールでの強い叱責

保険会社のサービスセンターに勤務する部下(役職は課長代理)の勤務成績が芳しくないため、サービスセンターの所長が当該部下に対して、下記のような強い叱責のメールを送りました

「1.意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績を挙げますよ。本日現在、搭傷10件処理。Cさん(途中入社2年目)は17件。業務審査といい、これ以上、当SCに迷惑をかけないで下さい
2.未だに始末書と「~~病院」出向の報告(私病?調査?)がありませんが、業務命令を無視したり、業務時間中に勝手に業務から離れるとどういうことになるか承知していますね。
3.本日、半休を取ることを何故ユニット全員に事前に伝えないのですか。必ず伝えるように言ったはずです。我々の仕事は、チームで回っているんですよ。」

上記メールの部分は、赤文字で、ポイントの大きな文字で記載されており、また、上記メールは、当該部下のみならず、同じ職場の従業員十数人に送信されました。

一審は、上記メールが、業務指導の一環として行われたものであり、私的な感情から出た嫌がらせとは言えず、その内容も部下の業務に関するものにとどまっており、メールの表現が強いものになっているものの、部下の人格を傷付けるものとまで認めることはできないとして、違法性を否定しました

一方、控訴審では、上記メール中には、退職勧奨とも、会社にとって不必要な人間であるとも受け取られるおそれのある表現が盛り込まれておりこれが本人のみならず、同じ職場の従業員十数名にも送信されていること文面が赤文字でポイントを大きく記載されていることをも合わせかんがみると、指導・叱咤激励の表現として許容される限度を逸脱したものと評価せざるを得ないとされています。

もっとも、メールの目的が、部下の地位に見合った処理件数に到達するよう部下を叱咤督促する趣旨であることがうかがえ、その目的は是認することができるなどと判断されたため、慰謝料としては、5万円という低額となりました。

■弁護士の見解

この裁判例は、一審が平成16年12月1日に出され、控訴審が平成17年4月20日に出されています。その後の時代の変化からしても、今であれば、一審でも違法性が肯定されてしまう可能性が高く、慰謝料金額ももう少し上がってしまう可能性が高いと考えられます。

但し、今回のようなメール内容でも、部下個人に送っており、文面が赤文字で大きく記載されているなどの事情がなければ、メールを送付した背景や上司と部下の関係性などの他の事情次第では、現代でも違法性が否定されうると考えています。

(5)留守番電話への暴言の吹き込み

■違法性が否定されたもの

直帰が原則として禁止されていた会社にて、部下が直帰したため、上司が部下に対して会社に戻るよう指示をしましたが、部下がそれを拒否しました

これに憤慨した上司は、午後11時頃に、部下に対し、「部下さん 電話出ないのでメールします。まだ会社です。うらやましい。僕は一度も入学式や卒業式に出たことはありません。」との内容のメールを送り、その後2度にわたって携帯電話をかけ、その留守電に「えー部下さん、あの本当に、私、怒りました。明日、本部長のところへ、私、辞表を出しますんで、本当にこういうのはあり得ないですよ。よろしく。」、「部下さん、こんなに俺が怒っている理由わかりますか。本当にさっきメール送りましたけど、電話でいいましたけど、明日私は、あのー、辞表出しますので、でー、それでやってください。本当に、僕、頭にきました。」と怒りを露わにする録音を行いました。
但し、3日後、上司が部下に対し、深夜、携帯電話をしたり、メールを送信しきつい言い方をしたことについて謝罪しています。

かかる事例について、裁判所は、「私、辞表を出しますんで、」、「明日私は、あのー、辞表出しますので、でー、それでやってください。」とは何を意味するのか必ずしも明らかではないが、ただ読みようによっては、要するに、上司の命令を無視して強引に直帰した部下に対し、上司が代わって辞表を出すからこれに応じるよう求めているように解することもできないわけではなく、仮にそうだとすると上司が行った上記留守番電話の録音は、その時刻が深夜であることに加え、不穏当な内容を含んでいるものといわざるを得ない。

しかし、被告上司が上記のようなメールや留守番電話への録音をするに至った経緯は、上記の通りであって、かかる経緯及び内容等に照らすと上記留守番電話の録音等は、一種のパワーハラスメント的要素を含んでいるとしても、直ちに不法行為と評価し得る程度の違法性を備えた行為であるとはいい難く、民法709条の不法行為を構成するまでには至らないものというべきである。

■違法性が肯定されたもの

上記と同様の上司と部下において、今度は、出張の打合せに関する日程調整のトラブルがありました。具体的には、日程調整をめぐり、部下が上司の要求を受け入れなかったため、準備期間が足りずに不十分な企画書のまま対応せざるを得なくなりました。

このような部下の対応に、上司は怒りを抑えられなくなり、午後11時頃に、部下に携帯電話をかけ、「でろよ!ちぇっ、ちぇっ、ぶっ殺すぞ、お前!お前何やってるんだ!お前。辞めていいよ。辞めろ!辞表を出せ!ぶっ殺すぞお前!」との録音を行いました。

裁判において、こちらの録音については、違法性が認められ、慰謝料として、70万円の支払いが命じられています。

そして、この暴言は、業務と密接に関連する行為であるとされ、慰謝料を、会社も連帯して支払うことが命じられました。

3.最後に

今回は、どこからがパワハラになるのかについて、会社の方向けに、具体的な事例を交えて解説しました。

実際に、会社内で、パワハラであるか否かが問題になった際には、会社自らがその判断を行うことが難しいことも多いと思います。

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働問題を解決してきました。

パワハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、会社が従業員からパワハラ被害の申告を受けたり、パワハラに関する問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。

パワハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

■参考情報

①厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

②職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告 (https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021hkd.html

セクハラで労災認定される?会社の対応方法についても解説

2024-02-04

近年、企業内での、セクハラ防止に対する意識が高まってきています。

セクハラが原因で、従業員がうつ病などに発症した場合、労災に認定されることもあるのです。

そこで、今回は、①セクハラで労災に認定される基準や、②セクハラ問題が会社内で発生した場合に、会社が取るべき対応方法について、会社側で労働問題に注力している弁護士が解説します。企業の経営者の方や、担当者の方は、是非参考になさって下さい。

1.セクハラに関する労災認定基準

下記の3つの基準を満たす場合には、セクハラが労災として認定されます。

(1)労災認定の対象となる精神障害を発病していること

まず、一つ目は、労災認定の対象となる精神障害を発病していることです。

セクハラで、労災が認定されるためには、一定の精神障害にかかったことが前提となっています。

業務に関連して発病する可能性のある、代表的な精神障害は、うつ病や、急性ストレス反応、適応障害などですが、労災認定の対象としては、これらのみならず、下記のものも認められています。

■労災認定の対象となる精神障害

①統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害

②気分[感情]障害

③神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害

④生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群

⑤成人の人格及び行動の障害

⑥知的障害〈精神遅滞〉

⑦心理的発達の障害

⑧小児〈児童〉期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害、詳細不明の精神障害

(2)精神障害の発病前おおむね6か月間に、セクハラによる「強い心理的負荷」を受けたこと

2つ目は、①発病前のおおむね6か月間に②セクハラによる「強い心理的負荷」を受けたことです。

①の期間については、セクハラが継続して行われていた場合には、発病前6か月間に限定されず、セクハラが始まった時点からの心理的負荷で評価されます。

②の、セクハラによる「強い心理的負荷」が認められるのは、次のような場合です。

■強い心理的負荷が認められる場合

1.強姦や、本人の意思を抑圧してわいせつ行為をされたなどの、セクハラを受けた場合

2.胸や腰などへの身体接触を含むセクハラであって

(1)継続して行われた場合

(2)行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった、又は会社へ相談などをした後に職場の人間関係が悪化した場合

3.身体接触のない性的な発言のみのセクハラであって

(1)発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた場合

(2)性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクハラがあると把握していても適切な対応がなく、改善されなかった場合

■強い心理的負荷が認められない場合

以下の場合には、強い心理的負荷とは認められず、原則、労災とは認定されません

1.胸や腰などへの身体接触を含むセクハラであっても行為が継続しておらず、会社が適切かつ迅速に対応し発病前に解決した場合(心理的負荷「中」)

2.身体接触のない性的な発言のみのセクハラであって

(1)発言が継続していない場合

(2)複数回行われたものの、会社が適切かつ迅速に対応し発病前にそれが終了した場合(心理的負荷「中」)

「○○ちゃん」などの発言があった場合(心理的負荷「弱」)

4.職場内に水着姿の女性のポスターなどを掲示していた場合(心理的負荷「弱」)

(3)業務以外の心理的負荷やその人固有の要因により、精神障害を発病したとは認められないこと

3つ目は、①業務以外の心理的負荷や、②その人固有の要因により、精神障害を発病したとは認められないことです。

これらが認められると、セクハラと精神障害との因果関係が否定されるためです。

①の業務以外の心理的負荷とは、例えば、自身が離婚又は配偶者と別居をした、家族が亡くなった、多額の財産を損失した、犯罪に巻き込まれたなどが挙げられます。

このような業務以外のプライベートでの心理的負荷があった場合には、これらが発病の原因ではないといえるかが慎重に判断されていくことになります。

次に、②のその人固有の要因とは、被害者が過去にも精神障害にかかっていたり、アルコール依存症があった場合などが挙げられます。

このような、個体型要因がある場合にも、それらの要因が発病の原因でないといえるかを、慎重に判断してくことになります。

2.セクハラが発生した場合の企業の対応方法

社内でセクハラ問題が発生したにもかかわらず、会社が適切な対応をしなかった場合、上記の通り、労災と認定される要素にもなってきます。

そして、セクハラが労災と認定された場合には会社がその従業員から損害賠償請求を受けたり、SNSやマスコミの報道などにより、社会的な非難を受けることも考えられます

従業員からセクハラ被害の申告を受けた場合には、当事者から事実関係を迅速かつ正確に確認したり、被害者に対して適切な配慮措置を実施することが必要になってきます。

この辺りの詳細な解説は、「従業員からセクハラ被害を相談された時に会社が取るべき対応」で行っていますので、企業内でセクハラ問題が発生した場合には、是非参考になさってください。

3.最後に

今回は、セクハラに関する労災認定基準や、セクハラ問題が発生した場合の企業の対応方法について、解説いたしました。

社内のセクハラ問題に関しては、人的関係などから、企業内のみでの対応が難しいことも多く、そのような場合には、是非とも弁護士をご活用下さい。

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。

セクハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、セクハラ問題に関する、企業側の対応策を熟知していると自負しております。

セクハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

■参考情報

厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署

120827.pdf (mhlw.go.jp)

https://www.mhlw.go.jp/content/001004368.pdf

従業員からセクハラ被害を相談された時に会社が取るべき対応

2024-01-28

近年、社会情勢として、セクハラに対する意識が高まってきています。

それゆえ、企業を運営していると、従業員からセクハラ被害を相談されることも増えてきているかと思います。

そこで、今回は、従業員からセクハラ被害を申告された時に企業が取るべき対応について、会社側で労働問題に注力している弁護士が解説いたします。経営者の方や、企業の担当者の方は、是非参考にしてみてください。

1.セクハラとは

まず、最初に、セクハラについて、簡単に説明します。

セクハラとは、職場において行われる、①労働者の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり②「性的な言動」により就業環境が害されることをいいます。

ここでは、相手方の意に反する「性的な言動」が、セクハラであると考えて頂く形で大丈夫です。

例えば、性的な関係を要求したり、不必要に身体に触ること、性的な事実関係を尋ねること、食事やデートへの執拗な誘いなどは、セクハラに該当します。

セクハラに関する詳しい解説は、「セクハラ・パワハラで訴えられそうな会社・経営者の方へ」でしていますので、興味がある方は参考になさってください。

もし、従業員からセクハラ被害を相談されたにもかかわらず、企業が適切に対応しなかった場合には、企業はその従業員に対して、損害賠償責任を負うことになりかねません。

2.セクハラ被害申告時に企業が取るべき対応

それでは、会社は、従業員からセクハラ被害を相談された時に、どのような対応を取ればよいのでしょうか?

(1)事実関係の迅速かつ正確な確認

まずは、被害者から、事実関係を迅速かつ正確に確認することが必要です

初動対応が遅れてしまうと、被害者に不信感を与え、弁護士などが介入してくることがありますので、注意が必要です。

被害者が録音やメール、ラインなどの証拠を持っている場合には、会社側でこれらのコピーを取るようにしてください。

次に、加害者からも、事実関係を迅速かつ正確に確認することが必要です

この聞き取りに際しては、断定的に確認するのではなく、被害者が申告している事実が存在するのかを中立的な立場から確認するようにしてください。

もし、被害者と加害者の主張が食い違う場合には、同じ部署にいる従業員からも事実確認を行ったりすることが必要となります。

そして、被害者、加害者、同じ部署にいる従業員から、聞き取りを行った際には、聞き取り内容を記録化しておきましょう。記録化にあたっては、①会社側で聞き取り調書を作成して、聞き取り対象者から署名押印してもらう、又は、②聞き取りの際に聞き取り対象者から同意を得て、録音をするなどが考えられます。

(2)セクハラがあったか否かの認定を行う

次に、調査の結果、どのような行為がなされ、それがセクハラに該当するのか否かの認定をしていくことになります

加害者と被害者の主張が食い違う場合には、再度、両者への聞き取りを行ったり、証拠などを照らし合わせて判断していくことになります。

事案によっては、どのような行為がなされたのや、それがセクハラに該当するのかの認定に苦慮することもあると思います。

仮に、誤った認定をしてしまった場合には、会社は被害を申告している方からも、加害者とされた方からも訴えられる危険があります。

そのため、判断に迷った場合には、是非弁護士にご相談ください。

(3)被害者に対する適切な配慮措置を実施する

職場におけるセクハラが生じた事実が確認できた場合には、速やかに被害者に対する適切な配慮措置を行うことが必要です

事案の内容や状況にもよりますが、

①被害者と加害者の間の関係改善に向けての援助、②被害者と加害者を引き離すための配置転換、③加害者の謝罪、④被害者の労働条件上の不利益の回復、⑤被害者のメンタルヘルス不調への相談対応

などの措置を講じていくことになります。

(4)加害者に対する適切な処分を行う

次に、セクハラが生じた事実を確認できた場合には、速やかに加害者に対する適切な処分を行うことが必要となります

就業規則のハラスメントに関する規定などに基づき、加害者に対して懲戒処分その他の措置を講じていくことになります。

この懲戒処分は、セクハラの程度に応じたものであることが必要です。

もし、セクハラの程度が軽微であるにもかかわらず、それに比して重い処分をしてしまった場合には、違法な懲戒処分にもなりかねません

加害者に対する懲戒処分の選択についても、慎重に行うことが求められます。

(5)再犯防止措置の実施

セクハラ被害の申告があった場合には、改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止措置を講じていくことが必要になります。

具体的には、セクハラに厳正に対処する旨の会社の方針を、社内報やパンフレット、啓発のための資料などに掲載し、全従業員に配布していくことになります。

3.最後に

今回は、従業員からセクハラ被害を申告された時に企業が取るべき対応について、解説いたしました。

従業員からセクハラ被害を相談された場面では、会社が一つ対応を間違うと、被害者からも加害者からも訴えられる状況に陥るため、慎重に対応していくことが必要になります

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。

当然、セクハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、従業員からセクハラ被害の相談を受けたり、セクハラに関する問題で訴えられた場合の、企業側の対応策を熟知していると自負しております。

セクハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

■参考情報

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000378144.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

会社に求められるセクハラ対策とは?会社側の弁護士が解説

2024-01-21

近年、会社内のセクハラに対する意識が高まっています。

当事務所も、企業の顧問弁護士をやっておりますが、顧問先の企業様より、「企業のセクハラ対策としては、どのようなことをやっておけば良いですか?」といったご質問を受けることがあります。

そこで、今回は、企業に求められるセクハラ対策について、会社側にて労働問題に注力する弁護士が解説します。経営者の方や、企業の担当者の方は、是非参考にしてください。

1.会社にはセクハラの防止措置を講じる義務がある

男女雇用機会均等法第11条では、会社が、職場内のセクハラについて、対策を講じることを義務付けています

そのため、会社がセクハラ対策を行うことを怠っていた場合には、会社内でセクハラ被害が発生した際、会社が責任を問われる可能性が生じてきます

2.会社が取るべきセクハラの防止措置

それでは、会社は、どのようなセクハラの防止措置を取ればよいのでしょうか?

厚生労働省のガイドラインには、会社が取るべきセクハラ対策が解説されています。

そのため、以下では、このガイドラインをかみ砕いて、会社が取るべきセクハラの防止措置を解説します。

(1)会社の方針の明確化及びその周知

まずは、会社内でセクハラがあってはならない旨の会社側の方針等を明確にし、従業員に周知・啓発することです。

この方法としては、就業規則や職場における服務規律等を定めた文書に、会社の方針を規定し、労働者に周知する方法や、社内報・パンフレット等の資料に、セクハラへの会社の方針を規定する方法があげられます。

一つ注意して頂きたいのが、セクハラ対策についての会社の方針を示すことやそれを従業員に周知する方法は、口頭ではなく、書面等で残して頂きたいとの点です。

もし、従業員がセクハラ被害を申告して、会社を訴えてきた場合、口頭で会社の方針を示していても、裁判の証拠としての価値がとても低いです。

仮に、就業規則や、社内報・パンフレット等で、会社のセクハラ対策の方針を示すことが難しかったとしても、せめて、会社のセクハラ対策の方針を書面にしておいて頂きたいです。

そして、その書面を従業員に配布して、社内に掲示する、又は全従業員にメールにて、その書面を送付する等の措置を取っておくのがよいです。

(2)行為者への厳正な対処方針の規定作成及びその周知

次に、就業規則において、職場でセクハラを行った者について、厳正に対処する旨の会社の方針、及び具体的な対処内容を規定し、従業員に周知することが必要です。

セクハラを行った者への対処(懲戒)内容を規定するのは、セクハラを行ってしまった場合のルールを明確にすることで、従業員への注意喚起を行うことを目的にしています。

(3)相談窓口の設置

次に、セクハラに関する相談窓口を設置することが必要です。

この相談窓口は、従業員に周知されていることが必要となります。

この周知の方法は、口頭ではなく、書面又はメールにて行って下さい。

(4)相談に対応できる状況を整えること

相談窓口を設置しても、その相談窓口が形式的なものであったり、相談に適切に対応できないと意味がありません。

そのため、相談窓口の担当者が、セクハラに関する相談に対して、その内容や状況に応じて適切に対応できる状況を整えておくことが必要となります。

また、相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、関係部署と連携を図ることができる仕組みを整えておくことが望ましいです。

(5)被害者等のプライバシー保護のための措置の実施と周知

せっかく相談窓口を設置して、相談に対応できる状況を整えても、相談した内容が外部に漏れるのであれば、従業員も安心してセクハラに関する相談を行うことができません。また、行為者についても、一定程度のプライバシーを保護する必要があります。

そのため、相談者や行為者等のプライバシーを保護するために、必要な措置を講じるとともに、それを従業員に周知することが必要となります。

(6)相談等を理由に不利益な取扱いをしないことの定めと周知

男女雇用機会均等法第11条においては、従業員がセクハラ被害に関する相談等を行ったことを理由に、会社がその従業員に、不利益な取扱いを行うことが禁止されています。

そして、会社は、書面にて、従業員がセクハラに関する相談等を行ったことを理由に不利益な取扱いをしないことを定めるとともに、それを従業員に周知することが求められます。

3.最後に

今回は、企業に求められるセクハラ対策について、厚生労働省のガイドラインをかみ砕いて、解説いたしました。

中小企業においては、セクハラの防止措置を講じている会社様の方が少なく、実際にセクハラ被害を申告されたり、従業員から会社が訴えられてから、その必要性に気がつくという会社様が多いというのが実情だと思います。

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決してきました。

当然、セクハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、会社が従業員からセクハラ被害の申告を受けたり、セクハラに関する問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。

セクハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

■参考情報

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000378144.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

どこからがセクハラになるのか?会社側の弁護士が解説

2024-01-14

企業運営を行っていると、従業員からセクハラ被害の申告を受けることもありますが、その内容が本当にセクハラに該当するのか、判断に迷うこともあると思います。

そこで、今回は、どこからがセクハラになるのかについて、会社側の労働問題に注力する弁護士が解説します。経営者の方や、企業の担当者の方は、是非参考にしてください。

1.セクハラとは

まず、最初に、セクハラについて、簡単に説明します。

セクハラとは、相手方の意に反する「性的な言動」を言います。

男性から女性に行われるものに限らず、女性から男性に行われるものや、同性に対するものも、セクハラに該当します。

例えば、性的な関係を要求したり、不必要に身体に触ることなどは、典型的なセクハラに該当します。

もっとも、実際に企業運営を行っていると、その事実が、「セクハラ」に当たるのかについての判断を迷うことも多いと思います。そのため、以下では、具体的事例を交えて、セクハラに当たるかについて、解説します。

セクハラに関する詳しい解説は、「セクハラ・パワハラで訴えられそうな会社・経営者の方へ」の記事でしていますので、興味がある方は参考になさって下さい。

2.セクハラに当たるのか

(1)食事やデートに誘う

基本的に、業務上、必要な食事の誘いであれば、セクハラには該当しないと考えられます。

他方、厚生労働省のガイドラインなどでは、食事やデートへの「執拗な」誘いは、セクハラに当たるとされています。

例えば、その従業員が食事やデートを拒否しているにもかかわらず、何度も、これらに誘う行為は、「セクハラ」に当たりうるでしょう。但し、実際にセクハラに当たるかは、①両者の関係性(上司と部下かそれとも同僚か)や②誘い方、③誘った回数、④誘われた側の従業員の感じ方等を考慮して、セクハラに該当するかを判断していくことになります。

(2)個人的な性的体験談を話す

厚生労働省のガイドラインにおいて、個人的な性的体験談を話すことも、セクハラに当たるとされています。実際の裁判例上も、セクハラに当たるとされました。

言葉によるセクハラについては、身体的接触を伴うセクハラに比べて、一般的に軽視されがちではありますが、このような自己の体験を話すことについてもセクハラとされているので、注意が必要です。

(3)秋葉原で働いた方がいいと話す

裁判例上、他の言動と相まって、セクハラに該当すると認定されました。

この裁判例では、「秋葉原で働いた方がいい」との発言は、メイド喫茶又はメイドカフェで働くことに向いているとの趣旨のものであり、加害男性の発言を「全体的にみると」、女性が性的な行動を揶揄し又は非難するものと受け止めたことにも理由があるとされています。

■弁護士の見解

この裁判例では、「秋葉原で働いた方がいい」との発言のみならず、加害男性が被害女性に対して、「頭がおかしいんじゃないの」、「僕はエイズ検査を受けたことがあるから、Aさんもエイズ検査を受けた方がいいんじゃないか」などとも発言をしていました。

そして、裁判例においては、「上記各発言は、全体的にみると、被害女性において加害男性の各発言を強圧的なものとして受け止め、又は性的な行動をやゆし又は非難するものと受け止めたことにも理由があるというべきであり、男性から女性に対するものとしても、上司から部下に対するものとしても、許容される限度を超えた違法な発言であったと言わざるを得ない」とされています。

要は、裁判例では、「秋葉原で働いた方がいい」という発言も違法性の根拠にはしていますが、この発言だけで、セクハラであると認定しているわけではありません。あくまで、発言を「全体的にみると」違法であると評価しているだけです。

なので、私見としては、「秋葉原で働いた方がいい」といいとの発言だけで、セクハラに当たって違法であると評価されるかというと、そうではないと考えています

(4)男のくせに根性がない、女には仕事を任せられない

この辺りの発言は、実際に被害の申告がされた場合に、セクハラに該当するかの判断がかなり悩ましい部類となります。

人事院のページでは、これらの発言は、「セクハラになり得る言動」とされています。

他方、厚生労働省のガイドラインによると、「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などの発言は、性別役割分担意識に基づく言動の例とされており、この性別役割分担意識に基づく言動そのものがセクハラに該当するわけではないとされています。但し、セクハラの発生の原因や背景となり得るため、こうした言動も含めてなくしていく必要があるとされています。

そのため、「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などの発言は、それのみでセクハラに該当するかは怪しいですが、実際に、加害従業員によって、このような発言がなされていた場合には、始末書の提出等を求めるなどの措置を行っていくことも検討する必要があります。

3.最後に

今回は、どこからがセクハラになるのかについて、企業の方向けに、具体的な事例を交えて解説していきました。

従業員からセクハラ被害の申告があった場合、適切に処理をしないと、会社が被害者から訴えられるリスクがありますし、対して、処理の仕方を間違えると、加害者からも会社が訴えられるという二重のリスクがはらんでおり、会社としても、慎重に処理をすることが求められます

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働問題を解決してきました。

当然、セクハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、会社が従業員からセクハラ被害の申告を受けたり、セクハラに関する問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。

セクハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

■参考情報

①厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

②人事院 「セクシュアル・ハラスメント」

https://www.jinji.go.jp/sekuhara/1homu.html

弁護士から内容証明郵便が届いたらー企業の方へー

2023-12-29

ある日突然、会社宛に弁護士から内容証明郵便が届いたー

会社を経営していると、それにまつわるトラブルはつきものです。

そして、トラブルの相手方が弁護士を依頼し、内容証明郵便を送付することも、珍しいことではありません。

この記事では、弁護士から内容証明郵便が届いた場合の対応について解説します。

もしもの時に困ることがないよう、この機会に確認してみてはいかがでしょうか。

1 内容を確認する

まずは内容を確認しましょう。

何らかの請求をされていることが多いので、内容を把握し、記載されている事実関係が正しいか、誤っているのかについて確認して下さい。

その際には、記載されている事実関係の正誤に関連する資料があるかについても確認すると良いでしょう。

2 弁護士に相談する

顧問弁護士がいるのであれば、連絡をして相談をすればよいでしょう。

その後の対応についても、話をすることとなると思います。

顧問弁護士がいない場合には、紹介やインターネットで検索するなどして、弁護士を見つけて相談の予約を取って相談しましょう。

相談の際に持参する物については、予約した弁護士からの指示があるかと思いますが、届いた内容証明郵便と、関連する資料があると良いように思います。

ここで、弁護士に相談せずに対応しても良いのでは、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、おすすめできません

なぜならば、相手方の請求が法的に妥当であるかについて把握したうえで対応しなければ、相手方の請求に応じるべきなのか、応じるとして、どの程度応じるべきなのかについての判断ができないからです。

3 放置はしないように

弁護士から内容証明郵便が来たにもかかわらず、放置してしまうと、裁判などの法的手続きとなってトラブルが長期化する可能性があります。

内容証明郵便に対応することで、裁判などの法的手続きとなることを避け、早期にトラブルを解決できることもあります。仮に放置するとしても、放置することのリスクなどについて弁護士に相談してからのほうが良いように思います。

4 まとめ

この記事では、弁護士から内容証明郵便が届いた場合の対応について解説しました。

京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、企業法務に力を入れて取り組んでいます。

企業法務に関してお困りごとがある方は、お気軽にご相談ください。

この記事が2023年最後のコラムとなります。来年も、皆様方のお役に立てるよう、尽力していきます。

皆様方におかれましては、良いお年をお迎えください。

顧問弁護士をつけるメリットとは何か?

2023-12-22

顧問弁護士とは、顧問先から継続的に日常業務等に関する法律相談を受け、法的に顧問先をサポートする弁護士のことをいいます。

顧問弁護士については、「顧問弁護士に依頼できる内容や契約すべきタイミング」という記事でも詳しく説明しているので、参考にしてみてください。

本記事では、顧問弁護士をつけるメリットとは何か?について解説します。

顧問弁護士をつけるか検討しているという会社の方は、ぜひご一読ください。

1 日常業務について気軽に相談ができる

顧問弁護士がいると、日常業務において、法的な疑問が生じた場合に気軽に相談をすることができます。

内容によっては、電話やメールで質問することもできるので、大きなメリットとなるでしょう。

2 トラブルが発生した際に優先して対応してもらえる

トラブルが発生した際、顧問弁護士がいなければ、相談に行くことができる法律事務所を探して、予約を入れるなどの手間がかかってしまいます。

その弁護士と相性が合うかもわかりませんし、相性が合わず、安心して依頼できないということになれば、別の弁護士を探さなければいけません。

また、依頼したい弁護士が見つかったとしても、その弁護士が多忙であったりすると、急ぎの対応が難しいこともあるでしょう。

顧問弁護士がいれば、顧問先を優先して対応するので、急いでいる場合にも安心です。

また、日常的に相談をしていれば、会社の業務内容についても把握していると思われるため、会社の実情にあった回答を得られるというメリットもあるでしょう。

3 弁護士費用の割引を受けられる場合がある

顧問弁護士に対して、事件を依頼する場合には、顧問料とは別に弁護士費用(着手金、報酬金など)が発生します。

この弁護士費用については、顧問先であることから、割引を受けられることがあります

4 まとめ

この記事では、顧問弁護士をつけるメリットとは何か?について解説しました。

京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、企業法務に力を入れて取り組んでおり、会社のトラブルの際には、お役に立てることも多いと自負しております。

顧問弁護士をお考えの場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。

セカンド顧問弁護士をお考えの方へ

2023-12-15

セカンド顧問弁護士とは、既に顧問弁護士を活用している会社が、2番目につける顧問弁護士のことをいいます。

セカンド顧問弁護士については、「セカンド顧問弁護士のすすめ」という記事でも詳しく説明しているので、参考にしてみてください。

本記事では、どのような場合にセカンド顧問弁護士を活用することが有効かについて解説します。

セカンド顧問弁護士をお考えの方は、ぜひご一読ください。

1 顧問弁護士の回答に不安や疑問がある

自社にトラブルが発生した場合、顧問弁護士がいれば、通常はまず顧問弁護士に相談をするでしょう。

相談をした際の顧問弁護士の回答について、不安や疑問を持ち、それを解消することができないのであれば、セカンド顧問弁護士の活用がおすすめです。

セカンド顧問弁護士から意見をもらい、その結果、顧問弁護士の回答についての不安や疑問を解消することができたり、場合によっては、当該トラブルについては、セカンド顧問弁護士に相談することにしたりすることが可能です。

無理に顧問弁護士への相談を継続してしまうと、いつまでたっても不安や疑問が解消されず、ストレスとなってしまうので、セカンド顧問弁護士の活用も検討されてはいかがでしょうか。

2 顧問弁護士の対応のスピード感に不満がある

顧問弁護士が多忙であったり、高齢であったりする場合には、急いで相談したかったとしても、すぐに対応してもらえないこともあるかもしれません。

そのような場合には、迅速な対応が求められる案件については、セカンド顧問弁護士を活用することが有効でしょう。

3 顧問弁護士とコミュニケーションがうまくとれていない

顧問弁護士に相談しても、うまく言いたいことが伝わらない、遠慮してしまって本音で話すことができないなど、コミュニケーションに問題を抱えてしまう場合もあるでしょう。

先代からのお付き合いで長年顧問弁護士をしてもらっているというような場合には、そのような問題が発生してしまいがちです。

そこで、セカンド顧問弁護士を活用し、顧問弁護士に相談しにくいような日常的な問題について、気軽に話をする機会を設けるのも有用でしょう。

4 まとめ

この記事では、セカンド顧問弁護士をお考えの方へ向けて、どのような場合にセカンド顧問弁護士を活用することが有効かについて解説しました。

京都の益川総合法律事務所は、セカンド顧問弁護士についても力を入れております。

興味があるという方は、お気軽にご相談ください。

社員がマイカー通勤中に交通事故を起こした場合の会社の責任

2023-12-08

コロナ渦の影響もあり、社員がマイカー通勤をしているという会社も多くあるように思います。

では、社員がマイカー通勤中に交通事故を起こした場合、会社は責任を負うのでしょうか。

社員がマイカー通勤中に交通事故を起こした場合の会社の責任について、京都の弁護士が解説します。

1 会社が責任を負う法的根拠

会社が責任を負う法的根拠としては、民法715条の使用者責任と自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任があげられます。

(1)使用者責任

使用者責任は、使用者は、被用者が事業の執行について行った不法行為について、被害者に対して損害賠償責任を負うというものです。

詳しくは、「使用者責任とは何か、使用者責任の要件などについて」という記事で解説しています。

マイカー通勤の場合には、「事業の執行について」といえるのかが問題となります。

(2)運行供用者責任

運行供用者責任は、自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任があるというものです。

マイカー通勤の場合には、「自己のために自動車を運行の用に供する者」に当たるかが問題となります。

2 どのような場合に会社が責任を負うのか

裁判例では、会社の業務においてマイカーを使用しているか、通勤にあたってマイカー以外の通勤手段がなかったか、通勤手当の支給や駐車場の提供があったかなどに着目して判断がなされています。

たとえば、社員が会社の業務にはマイカーを使用せず、通勤のみに使用しており、会社はマイカー通勤を禁止していたというような場合には、会社の責任が否定される可能性が高いと思われます。

3 まとめ

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に力を入れて取り組んでいます。

社員がマイカー通勤中に交通事故を起こし、被害者の方から損害賠償請求を受けて困っているという会社の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

試用期間と本採用拒否について弁護士が解説

2023-12-01

本採用決定前に試用期間が設けられることが多くありますが、会社は、試用期間の満了をもって自由に本採用を拒否することはできるでしょうか。

この記事では、試用期間と本採用拒否について弁護士が解説します。

本採用の拒否を検討しているという会社の方は参考にしてみてください。

1 試用期間とは

試用期間は、本採用決定前に労働者の資質、性格、能力等の社員としての適性を判断して、本採用するか否かを決定するための期間とされています。

また、その法的性質については、解約権留保付労働契約と解されています。

2 試用期間満了後の本採用拒否

では、試用期間満了後の本採用拒否は自由に認められるのでしょうか

本採用の拒否は、上述した解約権の行使に当たります。

そして、解約権の行使も解雇に当たることから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利濫用として無効とされるものです。

もっとも、上述したとおり、試用期間が本採用決定前に労働者の資質、性格、能力等の社員としての適性を判断して、本採用するか否かを決定するための期間であり、その法的性質が解約権留保付労働契約と解されていることから、試用期間中の解雇については、通常の解雇よりも広く使用者の裁量の幅が認められるとされています。

具体的には、会社が採用決定後の調査の結果により、当初知ることができず、また、知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしてその者を引き続き会社に雇用しておくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に相当であると認められる場合には、解約権の行使が相当であるとされています。

3 まとめ

京都の益川総合法律事務所では、企業側の労働トラブルサポートに力を入れて取り組んでいます。

この記事で解説したとおり、本採用の拒否は自由に認められるものではなく、個々の事案ごとに解約権の行使が相当であるかについての検討が必要です。

本採用の拒否を検討している企業の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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