未払残業代で訴えられそうな会社・経営者の方へ

昨今、会社が従業員や元従業員から、未払残業代を理由として、訴えられることが増えています。

また、未払残業代のみならず、未払給料の請求をされることもあります。

そこで、今回は、未払残業代・未払給料を理由として訴えられそうな場合や、訴えられた場合の対処方法についてご説明いたします。

1 未払残業代・未払給料の請求に対する代表的な3つの反論

(1)相手方の主張する労働時間が誤りである

未払残業代や未払給料は,労働の対価として支払われるものです。

そのため、相手方の主張する労働時間が正しいのかを検討することが重要です。

まずは、①相手方の出勤及び退勤時間を把握することになります。

もし、タイムカードや労働時間管理ソフトなどの、出退勤時間を裏付ける資料があれば、それを確認することになります。

次に、②相手方が業務以外の行為をしていないかという視点が重要です。

例えば、相手方が毎日タバコ休憩をとっていたり、副業などの業務以外の行為に時間を使用していた場合には、その時間は労働時間から除くべきと考えられます。

(2)管理監督者に該当する

「監督もしくは管理の地位にある者」(いわゆる「管理監督者」)に対しては、未払残業代を支払う必要はありません。

「管理監督者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。

「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、①その職務内容、②責任と権限、③勤務態様等の実態によって判断されます。

具体的には、経営者と一体的な立場といえるほどの、①重要な職務内容を有しており、②経営者から重要な責任と権限を委ねられており、③労働時間も厳格に管理されておらず、賃金等についても一般労働者と比較して、相応の待遇がされていることが必要になります。

(3)時効により消滅している

未払残業代や未払給料は、3年で時効により消滅します。(※ただし、2020年3月31日までに支払われるべきものについては、2年で消滅します。)

そのため、相手方による未払残業代や未払給料が、時効により消滅していないかを検討することが重要です。

2 従業員や元従業員から内容証明が届いた場合(訴えられそうな場合)

(1)事実関係の調査

内容証明が届いた場合、その中で相手方の主張する労働時間や、未払残業代・未払給料の金額が記載されていることが通常です。

そこで、まずは、相手方の主張する労働時間が正しいのかを調査することが必要になります。

また、上記の通り、相手方が管理監督者に該当しないか、未払残業代・未払給料が時効により消滅していないかなどを検討することが重要です。

(2)交渉する

内容証明が届いた場合、その中で金銭の請求がされていることが通常です。

そこで、①その金銭を支払うのか、②減額の交渉をするのか、③金銭の支払いを一切拒否するのかを決断し、相手方と交渉する必要があります。

もし、交渉が決裂すれば、労働審判や裁判などで訴えられる可能性が高いです。

そのため、内容証明が届いた時点で訴えられそうな状況であるといえます。

(3)弁護士への相談

内容証明が届いた場合、その時点で弁護士へ相談することが重要です。

というのも、弁護士は法律のプロですし、企業法務を取り扱っている弁護士であれば、その時点で会社がとるべき行動を知っているためです。

自社で対応しようとしても、冷静な観点から客観的に判断することは難しいですし、場合によっては、事実に反する不利な証拠を相手方に渡してしまうことさえあります。

そのため、訴えられそうといった早い段階から、弁護士に相談することが重要になってきます。

3 訴えられた場合の対処方法

(1)事実関係の調査

訴えられた場合には、裁判所を通じて、相手方からの書面が送られてくることになります。

この書面の中には、相手方の主張する労働時間や未払残業代・未払給料の金額、及びそれを裏付ける証拠が含まれています。

そこで、まずは、相手方の主張の適否について、調査をする必要があります。

(2)書面の作成

訴えられた場合、会社側は反論の書面を作成する必要があります。

この書面においては、相手方の主張が誤っている点や、会社側が認識している事実関係及びそれを裏付ける証拠などを引用することになります。

特に、労働審判の場合、この反論の書面提出まで、時間がかなりタイトなため、速やかに準備をすることが必要になってきます。

(3)訴えられた場合のリスク

裁判の場合には、「付加金」や「遅延損害金」の支払といったリスクがあります。

■「付加金」とは

未払残業代などを支払わなかった会社に対する制裁で、会社が支払うべき金額と同一金額の支払いを命じられるものです。

要は、裁判所において悪質性が高いと判断した場合に、判決において、未払残業代などを2倍支払うことを命じられる制度となります。

■「遅延損害金」とは

未払残業代・未払給料には、在職中は年3%、退職後には年14.6%の遅延損害金が加算されます。

特に、退職後の年14.6%の遅延損害金によって、支払金額が大幅に増額することになってきます。

(4)弁護士への依頼

訴えられた場合には、速やかに弁護士に相談することが重要になります。

裁判においては、提出する書面の内容と証拠が極めて重要になってきますが、適切に書面を作成し、証拠を収集するには、弁護士の力が必要不可欠です。

未払残業代・未払給料で訴えられた場合、書面提出の締切日まで、時間があまりない可能性もあるため、速やかに弁護士に相談に行くことが重要です。

当事務所は、1983年の創業以来、東証一部上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、多数の労働問題を解決してきました。

当然未払残業代・未払給料案件の対応経験も有しており、未払残業代・未払給料問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。

もし、未払残業代・未払給料を理由として訴えられそうな場合や訴えられた場合には、お気軽に当事務所までご相談下さい。

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