コラム

弁護士の交渉により、交通事故の損害賠償額を約25万円増額することに成功した事案【解決事例】

2023-02-03

・キーワード

交通事故人身示談交渉

・ご相談内容

ご依頼者は、自動車で右折のため道路上で停車中、後方から進行してきた相手方から追突され、頸部捻挫等の怪我をしてしまいました。相手方保険会社との交渉をご自身でされてきたのですが、弁護士に任せたいということで、当事務所にご依頼されました。

・当事務所の対応及び結果

症状固定後、相手方保険会社から、通院慰謝料について、当方の希望よりも低い金額での提案がなされました。この点については、本件事故によって、後遺障害等級は認定されていないものの、ご本人の身体には影響が残り続けていること、訴訟となった場合のリスクや法的見通し等の観点から粘り強く交渉を行いました。その結果、当初の提示金額より約25万円増額した賠償額を引き出すことに成功しました。

・コメント

弁護士の交渉により、損害賠償額を約25万円増額することに成功した事案です。

また、ご依頼者からは、事件に関連する様々な質問についても丁寧に対応してくれたとのことで、損害賠償額の増額とともに、大変喜んで頂くことができました。

相手方保険会社との交渉が負担である場合や、事件に関連する疑問点について法的なアドバイスを受けたいという方は、お気軽にご相談頂ければと思います。

※事件の内容については、特定できない程度に抽象化しています

労働訴訟の対応について弁護士が解説

2023-01-27

残業代請求や解雇トラブルなど、労働問題が起こった場合には「労働訴訟」を利用すると解決につながりやすくなります。

労働訴訟とは、労働者と使用者間の労働トラブルを解決するための裁判です。

訴訟なので時間や労力はかかりますが、最終的にトラブルを解決できるメリットがあります。

この記事では、労働トラブルを解決するための労働訴訟について、京都の弁護士が解説します。

労働トラブルの渦中にある企業や個人の方は、ぜひ参考にしてみてください。

1 労働訴訟の概要

労働訴訟は、労働者と使用者間の労働トラブルを解決するための訴訟です。

(1)労働訴訟で取り扱えるトラブルの内容

労働訴訟で対象となるトラブルの例を挙げると、以下のようなものがあります。

  • 残業代請求
  • 未払い退職金や賞与の請求
  • 解雇トラブル
  • 雇止めのトラブル
  • 退職強要や退職勧奨のトラブル
  • 労災に関するトラブル
  • 安全配慮義務違反に関するトラブル
  • セクハラやパワハラで企業が適切な措置をとらなかった場合のトラブル(職場環境配慮義務違反)
  • 労働条件の不利益変更のトラブル
  • セクハラやパワハラの加害者(同僚や上司など)に対する請求

労働審判の場合、セクハラやパワハラのトラブルのうち「被害者が加害者(同僚や上司など)のみへ損害賠償請求する」といった「労働者同士のトラブル」については利用できません。

一方、労働訴訟ではそういった制限はないので、同僚や個人などの雇用者以外の個人相手の損害賠償請求も可能です。

(2)書面によって審理が進められる

労働訴訟は、調停や労働審判と違い、基本的には書面によって審理が進められます。

原告と被告は、自分の主張を書面にまとめて証拠を提出しなければなりません。

証拠に基づかない事実や主張は認められないことが多く、十分な証拠を揃えて手続きを進める必要があります。

(3)和解するケースもある

労働訴訟では、判決によって結論が出されるのが原則的な終結方法です。

しかし、すべてのケースで判決となるわけではありません。

当事者間で和解をして事件が終了するという事案もよくあります。

和解の場合、話し合いによって柔軟に解決できますし、早期にトラブルを終わらせられるというメリットもあります。

2 労働訴訟の流れ

次に、労働訴訟の流れをみてみましょう。

(1)訴訟提起

まずは、原告(多くのケースでは労働者側)から訴訟が提起されます。

原告は、訴状と証拠を揃えて裁判所へ提出しなければなりません。

申立て内容に不備がなければ、裁判所で受け付けられて担当部署が決まります。

(2)被告への呼出状と答弁書催告状の送付

訴状が受け付けられると、被告(原告が労働者側の場合は使用者側)へと第1回期日の呼出状と答弁書催告状が送付されます。

このとき、原告が提出した訴状や証拠書類も一緒に送られてきます。

被告側は、定められた期限までに答弁書を提出しなければなりません。

(3)答弁書の提出

被告側から答弁書が提出されます。

答弁書には、被告側の意見や原告への反論などが記載されます。

裁判所や原告は、第1回期日までに答弁書の内容を検討することとなります。

(4)第1回期日

第1回期日では、訴状や答弁書に書かれた内容を確認し、今後の進行についての話があります。

多くの場合には、次回の第2回期日以降、争点と証拠の整理を行うための弁論準備手続きに付されます。

(5)第2回期日以降

第2回目以降の期日では、弁論準備手続の中で争点と証拠の整理が行われます。

当事者は、それぞれ準備書面を出し合って、自分の意見を法的にまとめて主張しなければなりません。また、適切な時期に証拠を提出する必要があります。

(6)尋問

争点や証拠の整理が終わったら、当事者や証人の尋問が行われます。

尋問では双方の代理人である弁護士や裁判官から順番に尋問が行われます。

(7)判決

尋問が終わって和解も難しければ、裁判所が判決を下します。

(8)控訴

判決の内容に不服がある当事者は控訴(異議申立て)ができます。

原告・被告のどちらからも控訴されなかった場合には判決が確定します。

3 労働訴訟を提起されたときの対処方法

企業側が労働者側から労働訴訟を提起された場合には、迅速に答弁書を準備しなければなりません。

無視すると、労働者側に有利な判決が出てしまうリスクが高まります。

また、答弁書は法律的に意味のある主張をまとめたものでなければなりません。

労働訴訟は話し合いの手続きではないので、基本的にすべての主張を書面にまとめなければなりません。

適切な主張ができないと、敗訴してしまって高額な支払いを命じる判決が出てしまう可能性もあります。

労働訴訟に対応するには、法律や手続きに精通した弁護士によるサポートが必要です。

4 労働訴訟はお任せください

京都の益川総合法律事務所では、企業側の労働トラブルサポートに力を入れて取り組んでいます。

これまで多くの労働審判や労働訴訟を取り扱い、京都の企業様を支えて参りました。

弁護士に労働訴訟を任せれば、企業内で対応する場合と比較して、普段の業務に対する支障も最低限に抑えられます。

労働者側から突然労働訴訟を提起されてお困りの場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

民事調停手続きについて

2023-01-20

裁判所で紛争を解決する方法は、訴訟だけではありません。

民事調停によって解決できるケースも多数あります。

民事調停を利用すると、調停委員が間に入って手続きを進めてくれるので、争っている当事者同士が直接やり取りしなくて済むメリットがあります。

この記事では、民事調停手続きの概要や流れ、メリット・デメリットなどについて京都の弁護士が解説します。

争いごとに巻き込まれて悩んでいる方、訴訟は避けたいという方などは、是非参考にしてみてください。

1 民事調停とは

民事調停とは、裁判所が当事者の間に入って話し合いを進め、合意によってトラブルを解決するための手続きです。

もめごとが発生したとき、自分たちだけで話し合っても解決できないケースが少なくありません。

そんなとき、民事調停を利用すれば裁判官と調停委員が間に入って話し合いを仲介してくれるので、合意が成立しやすくなります。

民事調停において当事者の間に入る組織を「調停委員会」といいます。

調停委員会は、調停委員と裁判官から成り立っています。

民間でもめごとが発生したときには、民事調停を申し立てると解決につながるケースがよくあるので、状況に応じて利用するとよいでしょう。

2 民事調停で取り扱われる主なトラブル

民事調停は、民事に関する紛争を取り扱います。

民事調停で取り扱われることの多いのは、以下のようなトラブルです。

  • 貸金や立替金などの金銭トラブル
  • 給料や報酬などが不払いになっている場合のトラブル
  • 家賃や地代の不払い問題、賃料改定のトラブル
  • 敷金や保証金の返還などのトラブル
  • 土地や建物の登記に関するトラブル
  • クレジットやローンのトラブル
  • 売買代金が不払いなっているなどのトラブル
  • 請負代金や修理代金が不払いになっているなどのトラブル
  • 建物や部屋の明渡しに関するトラブル
  • 交通事故の損害賠償に関するトラブル
  • 近隣トラブル

上記以外でも、私人同士の法律トラブルであれば、多くは民事調停で取り扱ってもらえます。

ただし、離婚や養育費、婚姻費用、相続などの家事に関するトラブルは家庭裁判所の家事調停で取り扱われます。

3 民事調停の申立方法

民事調停を申し立てる際には、「相手の所在地を管轄する簡易裁判所」へ申立をします。

相手が遠方の場合、裁判所も遠くなってしまう可能性があるので注意しましょう。

調停を申し立てる際には、申立書を用意して提出しなければなりません。

申立書の書式はこちらの裁判所のサイトにまとまっているので、参照して作成するとよいでしょう。

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_minzityoutei/index.html

弁護士に申立書の作成や調停の代理を任せることも可能です。

民事調停にかかる費用

民事調停には費用がかかります。

申立の際に収入印紙を納めなければなりませんし、郵便切手も必要です。

ただし、民事調停の印紙代は訴訟より低額です。

郵便切手代も訴訟より低いケースが多いでしょう。

民事調停は訴訟よりコストが低くなるメリットがあるといえます。

4 民事調停の流れ

民事調停の流れを示します。

(1)申立て

まずは、申立人が調停を申し立てるところから始まります。

相手方の住所地を管轄する簡易裁判所へ、調停申立書と印紙、郵券を提出しましょう。

(2)第1回期日

申立を行うと、調停期日が決められ、調停の申立人と相手方が裁判所に呼び出されます。

調停期日においては、調停委員会が双方の言い分を聴いて話し合いが進められ、当事者双方の合意によってトラブルを解決することを目指します。

また、調停の手続きは、法廷ではなく、裁判所内の調停室において行われ、公開されることはありません。

(3)第2回目以降の期日

1回では解決できない場合、2回目以降の期日を入れて話し合いを続行します。

調停の期日は1か月に1回程度の頻度で開かれます。

調停は平日の日中に行われるので、仕事をしている方の場合には休んで出席しなければなりません。

(4)調停成立

合意ができれば、調停が成立します。

合意した内容をまとめた調停調書ができあがり、当事者双方へと交付されます。

調停調書は判決と同じ効力を持つため、相手が約束を守らないときには強制執行を申し立てることができます。

5 民事調停のメリット

  • 話し合いにより柔軟な解決ができる
  • 調停案を出してもらえるケースもある
  • 調停調書に判決と同じ効力がある
  • 相手との力の差、立場の違いがあっても妥当な解決を目指しやすい
  • 訴訟より手数料が安い
  • 調停は非公開であるので、プライバシーが守られる

6 民事調停のデメリット

  • 合意ができないと不成立になってしまう
  • 本人が対応する場合、平日の日中に裁判所へ通わねばならない
  • 解決までに時間がかかる場合がある
  • 調停委員がどちらか一方に肩入れしてくれるわけではない(中立的な立場)

7 弁護士に依頼すると解決できるケースも

民事調停には、デメリットや限界もあります。

当事者同士が合意できなければ成立しませんし、時間もかかってしまうこともあります。

平日の日中に裁判所へ行かねばならないのも負担になるでしょう。

弁護士に依頼すれば、当事者が自分たちで話し合う必要はありません。

弁護士が話を進めるので、平日の昼間に仕事を休むことが難しい場合にも、対応を任せることができます。

また、弁護士に依頼すれば、最適と考えられる解決方法について、ともに考えることができます。

お悩みごとは、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

成年年齢の引き下げについて

2023-01-13

2022年4月、民法が改正されて成年年齢が引き下げられました。

これによって、それまでは1人で契約できなかった18歳や19歳の方が1人で契約できるようになるなど、さまざまな変化がもたらされます。

もっとも、飲酒や喫煙、公営ギャンブルの利用などこれまでと同様に、20歳にならないとできないこともあります。

この記事では、成年年齢が引き下げられたことによって変わることと変わらないことを京都の弁護士がお伝えします。

1 成年年齢引き下げとは

成年年齢の引き下げとは、民法が改正され、20歳とされてきた成年になる年齢が18歳へと引き下げられたことです。

改正民法は、2022年4月1日に施行されており、すでに成年年齢引き下げの規定が有効になっています。

民法第4条

年齢18歳をもって、成年とする

成年年齢が18歳に引き下げられたことにより、これまで未成年とされていた18歳や19歳の人の取り扱いが変わります。

以下では18歳、19歳の人の法律上の取り扱いについて、変わることと変わらないことに分けてそれぞれ見ていきましょう。

2 18歳、19歳が1人でできるようになること

改正民法施行後、18歳や19歳の人が1人でできるようになるのは、以下のような事項です。

(1)親の同意がなくても1人で契約できる

親の同意がなくても、1人で有効な契約ができるようになります。

(2)性別の取扱いの変更審判

性同一性障害をもつ方が性別の取り扱いを変更してもらえるように申し立てる「性別の取り扱いの変更審判」も18歳、19歳の人が単独で申し立てられるようになりました。           

(3)国籍の選択

これまで、重国籍の方が自分の国籍を選べる時期は、重国籍になった時点で20歳未満の方は22歳になるまで、20歳以上の方は2年以内に国籍を選択することとされていました。

国籍選択の年齢も2歳引き下げられています。

(4)期限が10年間パスポートの取得

パスポートは5年と10年の有効期間を選択することができますが、未成年者は5年間有効なパスポートしか取得できません。

18歳、19歳の方は、10年間有効なパスポートを取得できるようになりました。

(5)国家資格を取る

司法書士や公認会計士、薬剤師などの国家資格も取得できるようになりました。

3 20歳にならないとできないこと

以下のようなことは、改正法施行後も20歳にならないとできません。

(1)飲酒、喫煙

飲酒や喫煙については、これまでと同様に20歳にならないと許されません。

(2)公営ギャンブル

競馬や競輪、競艇やオートレースなどの公営ギャンブルも、20歳にならないと利用できません。

(3)養親になる

養子縁組をして養親になれる年齢も20歳のまま維持されています。

4 結婚について

民法改正のタイミングに合わせて、結婚できる年齢が変更されました。

これまで、女性は16歳で結婚できることになっていましたが、改正法の施行後は男女ともに18歳にならないと結婚できないことになっています。

5 少年法との関係

成年年齢引き下げとともに問題になったのは、少年法との関係です。

少年法は20歳未満の人に成年と同じ刑事手続を適用せず、少年(従来の未成年)を保護してきました。

成年年齢が引き下げられると、18歳や19歳の人については20歳以上の大人と同じ刑事手続で処断されてしまうのかが議論されてきたのです。

結論的に、18歳や19歳の人でも少年法の適用を受け、これまでとおり家庭裁判所での審判によって処分を決められることになりました。

つまり、原則として、18歳や19歳であっても少年法の適用を受けるということです。

しかし、18歳、19歳の人については「特定少年」とされて逆送事件になる対象犯罪が広められています。

また、特定少年が正式に起訴されると、実名報道が認められるようになりました(17歳以下の少年の場合には逆送されて起訴されても実名報道されません)。

このように、少年法との関係でいうと、18歳、19歳の人については保護が弱まったといえるでしょう。

6 養育費との関係

次に問題になったのが、養育費との関係です。

従来、養育費は「子どもが未成年の期間」に払われるのが原則とされてきました。つまり子どもが20歳になるまでは原則として養育費を請求できたのです。

ところが、成年年齢が引き下げられると、養育費を請求できるのが18歳になる月までになってしまう可能性があります。

この点については従来とおり、改正法が施行されても子どもが20歳になるまでは養育費が払われるべき、との考え方が大勢です。

当事者同士で決める場合はもちろん、裁判所で養育費を決める場合にも基本的に子どもが20歳になるまでは養育費を請求できるものと考えて良いでしょう。

7 相続税との関係

これまで20歳になるまで適用できた未成年者控除は、18歳になるまでしか適用できなくなります。

一方で、相続時精算課税制度については18歳から利用できるように変更されました。

成年年齢引き下げによって18歳、19歳の人が1人でできることが増えましたが、その分責任も重くなり、注意深く行動することが必要となるでしょう。

成年年齢引き下げに関連して、ご不明点があったり、お困りになったりした場合には、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

養育費が増減額される場合を弁護士が解説

2023-01-06

一度養育費の金額を取り決めたとしても、さまざまな事情によって金額が変わる可能性があります。

たとえば、支払義務者の収入が上がると養育費は上がりますし、支払義務者の収入が下がると養育費の金額は下がります。

この記事では、養育費が増額されるケースと減額されるケースについて、京都の弁護士が解説します。養育費の金額を変更したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

1 養育費の金額は決め直しができる

離婚時などに養育費の金額を定めても、ずっとその金額にしなければならないというわけではありません。

さまざまな状況の変化により、適切な養育費の金額が変動する可能性があるからです。

養育費は、子どもが20歳になるまで払われるのが一般的ですが、その間であれば親同士が話し合っていつでも決め直すことができます。

「養育費の金額は固定ではない」という点を、まずは押さえておきましょう。

2 養育費が増額される場合

では、どういったケースで養育費の金額が増額・減額されるのでしょうか?

以下では、まず、養育費が増額されるケースをみてみましょう。

(1)支払義務者の収入が上がった

養育費の支払義務者の収入が上がった場合です。

養育費の金額は、支払義務者と受け取る側の収入のバランスによって決まります。

支払義務者の収入が高ければ高いほど養育費の金額は上がり、低くなると養育費の金額も下がります。

そのため、いったんは養育費の金額を取り決めても、その後に支払義務者の収入が上がると養育費の金額も上がる可能性があります。

たとえば、算定表によると、10歳の子どもが1人いる場合、義務者の父親の年収が300万円(給与所得)、権利者の母親の年収が100万円(給与所得)なら養育費の金額は月額2万円から4万円程度が妥当とされます。

このケースで、父親の年収が500万円に上がると、養育費の金額は月額4万円から6万円程度に増額されます。

(2)子どもが15歳以上になった

子どもが15歳以上になった場合にも、養育費の金額が増額される可能性があります。

子どもの年齢が上がると、学費や食費など、さまざまなお金がかかるようになるからです。

たとえば、義務者の父親の年収が500万円(給与所得)で権利者の母親の年収が100万円(給与所得)の場合、子どもが1人で年齢が14歳以下なら、養育費の金額は月額4万円から6万円程度です。

この場合、子どもが15歳以上になると、養育費の金額は月額6万円から8万円程度に上がります。

(3)受け取る側の収入が下がった

養育費の金額は、受け取る側の収入によっても変わってきます。

受け取る側の収入が低いほど、養育費の金額は上がる仕組みになっているからです。

離婚後、受け取る側の収入が低下すると、養育費が増額される可能性があります。

たとえば、10歳の子どもが1人いて、義務者の父親の収入が400万円(給与所得)、権利者の母親の収入が200万円(給与所得)だったとしましょう。この場合、算定表によると、養育費の金額は月額2万円から4万円です。

ところが、母親の年収が100万円に下がると養育費の金額は月額4万円から6万円に上がります。

3 養育費が減額される場合

養育費の金額は減額されるケースもあります。どういった場合に減額されるかについて、理解しておきましょう。

(1)支払義務者の収入が減った

支払義務者の収入が大幅に減った場合です。

支払義務者の収入が下がると、支払える養育費の金額が下がるので、適切とされる金額も減ります。

たとえば、5歳の子どもが1人いて、義務者の父親の年収が600万円(給与所得)、権利者の母親の年収が100万円(給与所得)の場合、養育費の金額は月額6万円から8万円程度が適切とされます。

このケースで、父親の年収が300万円に下がった場合、適切な養育費の金額は2万円から4万円程度に減額される可能性があります。

(2)受け取る側の収入が大幅に増えた

養育費を受け取る側の収入が大幅に増えた場合です。

この場合、父母の収入のバランスが変わるので養育費の金額に影響が及びます。

たとえば、3歳の子どもが1人いて、義務者の父親の年収が500万円(給与所得)、権利者の母親の年収が100万円(給与所得)だった場合、養育費の金額は月額4万円から6万円程度です。

母親の年収が400万円に上がると養育費の金額が月額2万円から4万円程度に減額される可能性があります。

(3)支払義務者が再婚して扶養義務者が増えた

養育費の支払義務者が再婚して扶養義務者が増えると、養育費の金額が下がる可能性があります。

再婚して子どもが誕生するなどして、扶養義務者が増えた場合などが想定されます。

(4)受け取る側が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組した

養育費を受け取る側が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組した場合には、再婚相手が子どもの第一次的な扶養義務者となって、支払義務者の扶養義務が二次的なものとなるために、養育費の減額の可能性があります。

4 養育費を増減額する方法

養育費を増額・減額するには、まずは当事者間で話し合いましょう。

増減額を希望する側が相手に連絡を入れて、養育費の金額を決め直すことを提案します。

合意ができた場合には、新しい条件をまとめた合意書を作成すべきです。

話し合いでの解決が難しい場合には、家庭裁判所で調停を利用しましょう。

増額を求めるなら養育費増額調停、減額を求めるなら養育費減額調停を申し立てます。

調停でも合意できない場合、審判によって裁判官が妥当な養育費の金額を定めてくれます。

養育費の増減額を巡っては、当事者の意見が合わずトラブルになるケースが少なくありません。変更後の妥当な養育費の金額がわからない方も多いでしょう。

養育費の関係でわからないことがあれば、お気軽に弁護士までご相談ください。

養育費の算定基準について

2022-12-16

「養育費の約束をする場合、どのような基準で金額を決めればよいのでしょうか?」

といったご相談を受けるケースがよくあります。

養育費の金額は基本的に当事者同士が自由に定められますが、一定の算定基準も用意されています。

養育費の取り決めをする場合、裁判所の作成した算定基準を利用すると公平なので、両者が納得しやすいでしょう。

この記事では、養育費の算定基準を京都の弁護士が解説します。

これから養育費の約束をする方、すでに決めた養育費の金額を変更したい方はぜひ参考にしてみてください。

1 養育費に含まれる費用

(1)そもそも養育費とは

養育費とは、子どもと離れて暮らす親が子どもの養育のために支払う費用です。

離れて暮らしていても、親は子どもに対して責任があるので、養育費を負担しなければなりません。

また、養育費の支払義務は「生活保持義務」といって高いレベルの義務です。

支払義務者は、子どもに自分と同等の生活をさせなければならないので、「余裕のあるときに支払えば良い」というものではありません。

その意味で、親に借金があったり家賃・住宅ローンの負担があったりしても養育費を減額する根拠にはなりません。

(2)養育費に含まれる費用は?

養育費には、以下のような費用が含まれます。

  • 食費
  • 被服費
  • 居住にかかる費用
  • 日用品費
  • 学費、教育費
  • 医療費
  • 交通費
  • 遊興費

ただし、実際に養育費を支払う場合、上記のような費用を個別に計算してやり取りするのは煩雑です。

そこで、養育費を払う場合には、「月額固定」とするケースが多数となっています。たとえば、「毎月6万円」「毎月10万円」などの固定した金額にするのです。

ボーナス時に増額するボーナス払いを取り入れるケースもあります。

養育費を払ってもらうために、上記のような費用について、いちいちレシートを集めて支払い義務者に示す必要はありません。

2 養育費の金額は当事者が自由に決められる

それでは、養育費の金額はどのようにして定めるのでしょうか?

養育費の金額は、基本的に当事者(親同士)が自由に設定できます。父母が納得すればいくらにしてもかまいません。

3 養育費の算定基準とは

ただし、いくらにしてもかまわないとすると、話し合いをしても合意しにくくなるでしょう。

通常、養育費を受け取る側はなるべく高額な支払いを望みますし、支払う側はなるべく低く抑えたいと考えるからです。

そこで、養育費の金額については、一定の算定基準がもうけられています。

その算定基準では、養育費を支払う人の年収が高いほど養育費の金額が上がり、支払いを受ける側の年収が高いほど養育費の金額が下がります。

子どもの人数が増えると費用がかさむので、養育費の金額が上がり、子どもが15歳以上になると学費や食費などもかかるのでやはり金額が上がります。

具体的な金額(算定基準)についてはこちらの「養育費算定表」にまとまっているので、利用しましょう。

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

4 養育費算定表の見方

養育費算定表を見る方法をお伝えします。

(1)お互いの年収を確認する

まず、父母のお互いの年収を確認しましょう。

会社員や公務員などの給与所得者の場合には源泉徴収票、自営業者なら確定申告書を用意して確認します。

(2)適用する表を確認する

次に、養育費算定表の中で具体的にあてはめる表を確認します。

たとえば、子どもが2人で上の子が16歳、下の子が13歳の場合「表4 養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)」を選びます。

間違った表を参照すると養育費を正確に算定できないので、注意して正しいものを選びましょう。

(3)年収を表にあてはめる

次に、表に父母それぞれの年収を当てはめます。

縦のラインは養育費を支払う側、横のラインは養育費の支払いを受ける側の年収をあらわします。

(4)縦と横がぶつかる金額帯が適正な養育費になる

両者の年収を当てはめたら、支払い義務者の年収の場所から右横へ線を引き、支払いを受ける側の年収の場所から上方向へ線を引きましょう。

ぶつかる場所が適正な養育費の金額帯となります。

その金額帯の中で、お互いが納得できる金額を定めましょう。

(5)養育費算定の具体例

子どもが1人(3歳)、支払い義務者である父親の年収が600万円、支払いを受ける権利者である母親の年収が200万円で、ともに給与所得者のケース。

この場合「表1 養育費子1人表(子0~14歳)を使います。

この表に父母それぞれの収入を当てはめると、適切な養育費の金額は8万円から10万円程度になります。

したがって、このケースでは養育費の金額を毎月8万円から10万円とすると話がまとまりやすいでしょう。

5 養育費を取り決める手順

養育費を取り決める際には、まずは相手と話し合うのが一般的です。

合意ができたら養育費支払いについての合意書を作成しましょう。

将来の不払いを防ぐため、合意書は公正証書にしておくようおすすめします。

自分たちではどうしても決められない場合には、家庭裁判所で養育費請求調停を利用しましょう。

京都の益川総合法律事務所では、離婚案件にも力を入れて取り組んでいます。

養育費の金額交渉や離婚調停の代理人も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

弁護士の交渉により、相手方の経済的全損の主張に対して、修理金額をベースとした賠償額を引き出すことに成功した事案【解決事例】

2022-12-09

・キーワード

交通事故物損経済的全損示談交渉

・ご相談内容

ご依頼者は、駐車場にて相手方の自動車から接触され、ご依頼者の自動車に損傷を受けました。相手方保険会社と交渉をしてきたものの、対応等に不信感を持ったため、当事務所にご依頼されました。

・当事務所の対応及び結果

受任後、相手方保険会社より、本件は経済的全損の事案であるという主張がなされました。そこで、交渉経緯やご依頼者が不信感を抱いていること等について強く反論をしました。その結果、当方主張の修理金額をベースとして計算をした賠償額を引き出すことに成功しました。

・コメント

弁護士の交渉により、経済的全損の主張を覆すことに成功した事案です。

また、ご依頼者は、相手方への不信感を持たれていたため、そのようなお気持ちに寄り添った対応をすることを心がけました。結果的に、ご依頼者からは大変喜んで頂くことができました。

経済的全損とは、修理費よりも同等の中古車に買い替えたほうが安価となることをいいます。この場合、特段の事情がない限り、賠償額は、車両の時価と買い替えに要する費用を足した金額が上限となり、上限を超える修理費用の賠償はされません。

相手方から経済的全損であるという主張をされた場合にも、本件のように交渉により賠償額を増額できることがありますので、お気軽にご相談頂ければと思います。

※事件の内容については、特定できない程度に抽象化しています

メタバースと法律(4)~メタバースをビジネスで活用する場合の注意点~

2022-12-02

近年、技術発展にともなって注目を浴びているメタバース

メタバースをビジネスに活用する企業も増加しています。

ただし、メタバースをビジネスで利用する場合にはいくつか注意点もあります。

今回は、メタバースをビジネス活用する際のメリット・デメリットや注意点を、京都の弁護士がお知らせしますので、ぜひ参考にしてみてください。

1 メタバースの将来性

メタバースの市場は、急激に成長を続けています。

Bloomberg Intelligenceなどによる分析結果では、2020年のメタバース市場は5,000億ドルですが、2024年には8,000億ドルまで成長する予測が立てられています。

2022年現在においては、ゲームやイベントなどを中心にメタバースが使われていますが、今後は観光や教育などの他分野へ拡大していくだろうとも予測されているのです。

メタバース市場が大きくなるにつれて、参入する企業も増えると考えられます。

メタバース空間で営業活動を行うことには、大きなチャンスがあるといえるでしょう。

2 メタバースのビジネスへの活用方法

メタバースをビジネスに活用する際には、以下のような方法があります。

(1)バーチャルイベント

アバターを使ってメタバース上でイベントを開催する方法です。

たとえば、展示会やセミナーなどを行えます。

バーチャルのイベントであれば、全世界から簡単に参加できます。

新型コロナウイルスなどの感染症が流行していても、問題になりません。

(2)バーチャル会議

アバターを介して参加者が会議室に集まり、バーチャル会議を行う方法です。

身振り手振りで気持ちを伝えられるので、オンライン会議よりもリアルに近いコミュニケーションをとれます。

(3)接客に活用

メタバース空間上で、さまざまなコンテンツやサービスを販売する方法です。

アバター同士で対面してコミュニケーションをとれるので、インターネット通信販売などよりリアルに近いやり取りができます。

3 ビジネスでメタバースを活用するメリット

ビジネスにメタバースを活用すると、以下のようなメリットがあります。

(1)新たなビジネスチャンスをつかめる

メタバースを利用すると、新たなビジネスチャンスをつかめる大きな可能性があります。

たとえば、現在においてもメタバース上でさまざまなコンテンツやゲームのアイテムなどを販売できますし、今後は観光や医療、教育などの分野にも広がりを見せていくと予測されています。

そうなると、ますます大きなチャンスを得られる可能性が高まるでしょう。

取引額も高額で、新規参入すると大きな利益を得られる可能性があります。

(2)コストがかからず生産性が向上する

メタバースは仮想空間であり、距離やエリアによる制約を受けません。全世界のどこからでも会議やイベントなどに参加できますし、買い物などもできます。

また、社内の関係者間で資料やデータを共有したり、顧客に資料を開示したりするのも簡単です。

さらに、メタバースのアバターを介してコミュニケーションをとれば、ZOOMなどのオンライン会議よりもリアルに感情や状況を伝えやすいメリットもあります。

このように、メタバースを活用すると場所に関係なくリアルなコミュニケーションをとることができてビジネスにおける生産性が向上するメリットがあるといえます。

4 ビジネスでメタバースを利用する際の注意点

ビジネスでメタバースを活用する際には以下のようなデメリットや注意点もあります。

(1)導入コストが発生する

メタバースを導入するには一定のコストが発生します。

たとえば、メタバースに対応するデバイスが必要ですし、VRゴーグルも購入しなければなりません。

自社でメタバース上のビジネスを展開するとき、スキームによってはあらたに資格や許認可を受けなければならない可能性があります。

こうした導入コストが当初にかかるのはデメリットといえるでしょう。

(2)コミュニケーションが希薄化する

メタバースでは、アバターを介して比較的リアルにコミュニケーションできますが、やはり実際に会ってコミュニケーションをとるのとは違います。

メタバースに頼りすぎてしまうと、リアルなコミュニケーションが希薄化する可能性があると懸念されています。

便利であっても依存しすぎず、リアルなコミュニケーションも交えながら、適度な距離を保ってメタバースを活用しましょう。

(3)デバイスやプラットフォームは開発段階

メタバースのデバイスやプラットフォームは、まだまだ開発段階で、完成したものとはいえません。

たとえば、現在普及しているPCやスマートフォンなどと比較すると、メタバースのVRデバイスは「重い」「画質が荒い」と感じる方も多数います。

現在、さまざまな企業がメタバース上のプラットフォーマーとして参入していますが、まだまだ開発途上です。

(4)法整備が不十分

メタバースの世界では法整備も不十分です。

今は既存の法律で対応していますが、それだけでは不十分な部分もあるために、今後はメタバースの特性に応じた法規制が行われていくでしょう。

法律がきちんと整備されるまでは、トラブルが発生する可能性も高いですし、法律が整備された場合には、新法や改正法を追いかけていく必要があります。

京都の益川総合法律事務所では企業の法的支援に積極的に取り組んでいます。

関心のある企業の方はぜひとも一度、ご相談ください。

メタバースと法律(3)~メタバースと知的財産法~

2022-11-25

メタバースを利用する際には、知的財産関連法を無視するわけにはいきません。

他人の知的財産権を侵害してしまうと、損害賠償請求をされたり刑罰を適用されたりする可能性もあるので、十分に注意をする必要があります。

また、メタバース上での知的財産権保護はまだ十分ではない部分もあります。

今回は、メタバースと知的財産権について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1  メタバース上で重要な知的財産

メタバース内では、さまざまなコンテンツが提供され、また、デジタルプロダクト(製品、商品)の販売をはじめとした経済活動も行われます。

こういったコンテンツやプロダクトを保護するには、知的財産法の適用を検討しなければなりません。

また、他人の知的財産権を侵害すると違法となってしまうので、勝手にコピーや模倣などしないよう注意が必要です。

メタバースの利用の際には、知的財産関連法が関係する場面が多いので、意識をする必要があるでしょう。

2 メタバースと著作権

メタバース上のコンテンツやプロダクトには、「著作権」が認められる可能性があります。

著作権は、著作者の思想や感情を創作的に表現した著作物に認められる著作者のさまざまな権利です。

たとえば、あるユーザーがイラストや写真をメタバース上で販売しているとき、そういったイラストや写真には著作権が認められます。

こういったプロダクトをコピーして利用すると、著作権侵害になってしまいます。

著作権は、著作者が作品を生み出したと同時に発生します。特に登録などを行う必要はありません。

3 メタバースと意匠権

メタバース上の工業用のデザインには「意匠権」が認められる可能性があります。

意匠権とは、工業的なデザインに認められる排他的な権利です。

意匠権を取得するには、特許庁に出願して意匠権の登録をしなければなりません。登録された意匠権には独占的な利用権が認められます。

ただし、現在の意匠法では、何らかの機器の使用と無関係な「単なる画像または映像」は意匠登録の対象になっていません。

つまり、単なる画像表現によるコンテンツは、意匠登録できないのです。

そのため、メタバースでコンテンツの画像を模倣されても意匠権によって保護することができません。

ただし、この点については法改正の可能性も議論されており、関係省庁で検討を進めるべきとの提言もされています。

メタバースと意匠権については、今後の法改正の動向についても注目していきましょう。

4 メタバースと商標権

メタバース世界では、商標権が問題になる可能性もあります。

商標権とは、いわゆる「マーク」に認められる独占的な権利です。

たとえば文字や画像、ロゴなどについて商標登録が可能です。

商標権についても、認められるためには特許庁へ出願して登録されなければなりません。著作権のように自然に発生する権利ではないので、間違えないようにしましょう。

メタバースにおいて商標権が問題になる具体例

たとえば、A社が現実世界で商標登録してロゴを利用しているとしましょう。

B社が勝手にA社のロゴを使ってメタバース上でプロダクトを販売したとします。

この場合、A社はB社に対して商標権侵害にもとづいて利用の差し止めや損害賠償請求ができるのでしょうか?

商標権によって保護される場合、まったく同一でなく「類似している」場合でも差止請求などができます。たとえば、B社がA社のロゴに似せて見た目が類似しているロゴを使ってプロダクトを販売した場合にも商標権によって保護される可能性があるということです。

ただし、現実世界の商品とメタバース上のプロダクトでは用途が大きく異なるため、類似性が認められない可能性もあります。

メタバース世界でもロゴの商標保護を受けたい場合には、メタバース内での使用をふまえた指定商品・指定役務として商標登録しておく必要があるといえるでしょう。

5 メタバースと不正競争防止法

商標権によってロゴが保護されない場合でも、不正競争防止法によって保護される可能性があります。

不正競争防止法では、世間に周知されている商品を模倣して混同させるような表示をすることが禁止されるからです。

商標登録していないロゴやイラストなどであっても混同を惹起するような行為をされれば不正競争防止法違反になります。

ただし、不正競争防止法によって保護されるのは「周知・著名」な場合に限られます。

無名な企業のロゴなどは保護されません。そういった企業が自社のロゴを保護するには、指定商品や指定役務に配慮して商標登録をしておく必要があるといえるでしょう。

まとめ~メタバースと知的財産権については弁護士へ相談を

メタバース世界はまだまだ発展途上であり、現行の知的財産法との関連でも整備や判例の蓄積を待たねばならない点が多々あると考えられます。

なお、政府は、官民会議を立ち上げ、知的財産権保護について検討して2023年3月にも結論をまとめるとされています。

どういったケースで知的財産権の侵害行為となるのか、自社の権利を保護するためにどういった対処をすれば良いのかなどについては、非常に法律的に専門性の高い事項です。

メタバース上の知的財産権の問題が気になる場合には、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

メタバースと法律(2)~メタバースの法的課題について~

2022-11-18

メタバースは、新しい技術です。

そのため、法整備が追いついていないケースもあり、また、現在整備されている法律との関係でも多くの課題を有しています。

この記事では、メタバースの抱える法的課題について、主なものをご説明します。

メタバースへの参入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

1 著作権法

メタバースにおいてビジネスを展開するのであれば、著作権法についての正しい理解が必要です。

著作権法は、著作物を生み出した著作者等の権利を保護するための法律です。

著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいいます。

具体的には以下のようなものが著作物となります。

  • 絵画、漫画、版画
  • 論文、小説
  • 写真
  • ダンス、バレエ
  • 音楽

プロが作ったものだけではなく、素人が製作したものにも著作権が認められるので注意が必要です。

メタバースにおいて著作権侵害となる具体例

メタバースにおいて、以下のようなことをすると、他人の著作権を侵害する可能性があります。

  • アニメやゲームのキャラクターを自分のアバターにする
  • 他人の撮影した写真を勝手に公開する
  • 他人が作曲した曲を歌う

著作権を侵害する行為をすると、著作権者から差し止めや損害賠償請求をされる可能性があります。

また、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれらの併科という刑事罰も存在し、刑事上の責任を問われることもあります。

法人には3億円以下の罰金刑という重い罰則が設けられています。

何が著作権法違反になるかわからない場合には、弁護士へ相談して、適法な行動を心がけましょう。

2 特定商取引法

特定商取引法とは、トラブルが生じやすい一定の商取引の類型において、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止して、消費者を保護するための法律です。

ネット上で商品やサービスを販売すると「通信販売」に該当しますが、特定商取引法では通信販売を規制対象にしています。

メタバース上でビジネス展開する際にも、特定商取引法の内容を知って遵守せねばなりません。

メタバースの取引が通信販売に該当する例

  • メタバース上で商品をお店に陳列し、顧客のアバターが購入するケース

この場合には、通信販売として特定商取引法が適用されるでしょう。

確かに、アバターが店を訪れているので「直接販売」のように思えますが、ネット上の空間で実際の人ではないアバターを介して取引している以上、通信販売に該当するのです。

特定商取引法における「通信販売」に該当する場合には、特商法に基づいて、広告表示などの法定事項の表示が必要となります。

メタバース上のお店で物を売る場合、どのような方法で表示を行うかについて、しっかり検討して決定しましょう。

3 メタバース上では法整備が整っていない

メタバースは非常に先進的な技術です。そのため、まだまだ法律の整備が追いついていません。

現実で行う際には問題のないビジネスモデルであっても、メタバース上で行うと法的問題を生じる場合があります。

今後、メタバースが普及してくるにつれて新たな問題が発生してくる可能性も高いと考えられます。悪質業者が参入してくる可能性もあり、そのような事態となった場合には、排除するための法律も新たに制定されるでしょう。メタバースでビジネスを行う際には、法律の制定や改正などの動向に特に注意すべきです。

また、メタバース上の法的問題については、判例が蓄積されていない点も課題となります。

たとえば、あるビジネスモデルが違法かどうかわからないとき、過去の判例を参照しようとしても見つからないケースが大半でしょう。

かといって、現実世界と仮想世界は異なるので、現実世界の判例をそのまま適用できるわけではありません。判断に際しては、メタバースなどのIT問題に詳しい弁護士に相談することが必須といえるでしょう。

4 メタバースについてのご相談はお気軽に

メタバース上で安全に取引をするには法律の専門的な知識が必須です。

もっとも、専門家でない場合には、何が正しいのか判断するのが難しいでしょう。

京都の益川総合法律事務所では、企業法務に積極的に取り組んでいますので、お気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。

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