コラム
弁護士費用特約とは
交通事故に遭ったとき「弁護士費用特約」を利用すると、無料で弁護士に相談や依頼できる可能性があります。
自動車保険や生命保険、火災保険などに弁護士費用特約をつけている方が多いので、事故に遭ったら必ず保険契約内容を確認しましょう。
本コラムでは、弁護士費用特約の概要や利用する方法をお伝えします。
1 弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約です。
自動車保険や生命保険、個人賠償責任保険や火災保険などについているケースがよくあります。
交通事故に弁護士費用特約を利用すると、弁護士への相談料や依頼にかかる費用を保険会社が負担してくれます。
ご本人は、弁護士費用を心配することなく、示談交渉や訴訟なども依頼できるので、大きなメリットを得られます。
2 弁護士費用特約で補償される範囲
自動車保険に付随する一般的な弁護士費用特約では、以下のような補償を受けられます。
(1)相談料については10万円まで、100%補償
1件の交通事故につき、相談料は10万円まで補償されます。
(2)事件対応費用については300万円まで、100%補償
示談交渉や調停、訴訟などにかかる費用については、1件300万円まで補償されます。
300万円までは自己負担が発生しません。
ほとんどの場合は300万円までの枠内におさまりますし、仮に超えた場合でも、超えた部分のみが自己負担となりますので、ご本人の出費は大幅に軽くなります。
また、以下のような費用がすべて補填されます。
- 着手金
- 報酬金
- 実費
- 日当
- 手数料
3 弁護士費用特約が適用されるケース
弁護士費用特約を適用できるのは、以下のような交通事故です。
- 自動車同士の交通事故
- 自転車に乗車中の交通事故
- 歩行中の交通事故
- 家族が契約者となっている保険の弁護士費用特約(同居の場合や別居している未婚の子どもの場合)
- 契約自動車に乗車中に遭った交通事故
自分が契約者や被保険者となっている場合だけではなく、家族が契約している場合や友人の車に乗っていた場合にも適用できる可能性があるので、必ず保険会社へ確認してみてください。
たとえば、未婚の方の場合「別居の親」の弁護士費用特約を使えることがあります。
4 弁護士費用特約についてよくある誤解
弁護士費用特約を利用すると「保険等級が下がる」と思われているケースがよくあります。
しかし、弁護士費用特約を使っても、一般的には保険等級は下がりません。
翌年度からの保険料は上がらないので、安心して特約の適用を申請してください。
5 弁護士費用特約を使うメリット
(1)実質無料で弁護士に相談や依頼ができることがある
弁護士費用特約を利用する最大のメリットは、弁護士費用を気にせずに弁護士に相談や依頼ができることです。
交通事故に遭ったとき、1人で対応すると不利になってしまうケースも多々あります。
弁護士に相談すれば適切に行動できて安心ですし、示談交渉を任せれば有利な条件で解決できる可能性が高まります。
ストレスも軽減できて、治療に専念できる効果も期待できるでしょう。
(2)賠償金がアップする可能性が高い
弁護士が示談交渉に対応すると、高額な弁護士基準によって賠償金を算定します。
弁護士基準は保険会社の基準より高くなるので、自分で対応するより高額な賠償金を獲得できる可能性が高まります。
特に後遺障害が残る事案では、弁護士に依頼すると慰謝料が2~3倍以上にアップするケースもあります。
(3)弁護士費用で足が出る可能性がほぼなくなる
小さな事故や物損事故を弁護士に依頼すると、得られる利益より弁護士費用の方が高くなって損をしてしまう可能性があります。
相手が無保険の場合にも、支払いを受けられるとは限らないので損をするリスクが生じるでしょう。
弁護士費用特約を利用すれば、相談料や弁護士費用は全額保険会社が出してくれるので、足が出る心配はほぼありません。
どのような事故でも躊躇なく弁護士のサポートを受けられるのは大きなメリットです。
(4)過失割合が0%でも代理してもらえる
被害者の過失割合が0%の場合、保険会社は示談交渉を代行してくれません。
被害者自身が1人で対応しなければならないので、多大な負担となります。不利になるリスクも高まるでしょうし、ストレスも尋常ではありません。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士が交渉してくれるので、安心です。
6 弁護士費用特約の利用方法
弁護士費用特約を適用する手順は以下のとおりです。
(1)保険会社へ連絡
まずは加入している保険会社へ連絡して、弁護士費用特約を使いたい希望を伝えましょう。
担当者の連絡先をメモしてください。
(2)弁護士へ相談
交通事故に詳しい弁護士を探して相談や依頼をします。
このとき「弁護士費用特約を利用したい」と伝えて了承を得ましょう。
弁護士へ保険会社名や担当者名、連絡先を伝えます。
(3)業務開始
相談だけで終了する場合には、費用を払わずに帰宅すれば終了です。
示談交渉などを依頼する場合には、委任契約書を作成して弁護士に業務を開始してもらいます。
費用のやり取りは、弁護士と保険会社が行うので、依頼者が関与する必要はありません。
あとは通常どおりに示談交渉などの事件処理が進められます。
弁護士費用特約を使ってもデメリットはありません。
利用しなければ、非常にもったいないといえるでしょう。
当事務所では弁護士費用特約を使った受任にも対応しております。
京都で交通事故に遭われた方は、お気軽にご相談ください。
交通事故を弁護士に依頼してメリットの大きいケースと損になる可能性のあるケースの判断基準
交通事故に遭ったとき、「今回の案件で、弁護士に相談して良いのだろうか?」と迷う方が少なくありません。
確かに、弁護士に依頼すると弁護士費用が発生するので、場合によっては案件を依頼すると足が出てしまう可能性もあります。
今回は、弁護士に依頼してメリットの大きいケースとそうでないケースについて、お伝えします。
1 弁護士に依頼するとメリットの大きいケース
以下のようなケースでは、弁護士に依頼するメリットが大きくなります。
(1)後遺症が残った
治療を行ってもケガが完治せず後遺症が残ったら、弁護士へ依頼するようおすすめします。
後遺症が残って後遺障害認定を受けると、高額な補償を受けられるからです。
後遺障害認定されると、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益が支払われます。
弁護士に依頼すると、後遺障害慰謝料だけでも2~3倍程度に増額されるケースもあり得るため、多大な経済的メリットを得られます。
後遺障害認定を受けやすくなる点もメリットとなるでしょう。
後遺症が残りそうという場合には、弁護士までご相談ください。
(2)死亡事故
死亡事故も必ず弁護士へ依頼するようおすすめします。
死亡事故では、ご遺族が相手方へ賠償金を請求することになります。
弁護士が示談交渉に対応すると、ご遺族が対応するより大幅に慰謝料が増額されるケースが多々あります。
任意保険会社の基準と弁護士基準で1000万円以上の開きが出る事例も珍しくありません。
ご自身たちで対応する手間やストレスも軽減されるでしょう。
事故で命をなくされたご本人の無念に報いるためにも、お早めにご相談ください。
(3)治療期間が6か月以上
治療期間が6か月以上になると、入通院慰謝料もそれなりに高額になってきます。
弁護士に依頼すると、入通院慰謝料が増額されることが多く、自分で交渉するより得になる可能性が高くなります。
後遺症が残らなくても、メリットを得られる可能性が高いので、弁護士へ示談交渉を依頼するのが得策です。
(4)弁護士費用特約をつけている
「弁護士費用特約」をつけている場合には、弁護士へ示談交渉を依頼しましょう。
弁護士費用特約があれば、多くの場合、最大300万円までは保険会社が費用を負担してくれるため、ご依頼者に自己負担が発生しない可能性があります。
損害賠償額が多額とならない事件でも足が出る可能性が低く、大きな事故なら弁護士へ依頼することで賠償金を大幅に増額できる可能性が高まります。
弁護士費用を払わずにメリットだけを得ることができる可能性が高いため、せっかく弁護士費用特約をつけているなら活用しましょう。
(5)ご自身の過失割合が0%
ご自身の過失割合が0%の場合にも、弁護士へ依頼するようおすすめします。
被害者の過失割合が0%の事案では、被害者側の保険会社は示談交渉を代行してくれません。
ご本人がご自身で対応しなければならないのです。
保険会社を相手にご本人がご自身で対応するとなると、大きな力の差が発生してしまいます。ご本人に多大なストレスもかかるでしょう。
弁護士に依頼すれば、対等やそれ以上の交渉を期待できますし、ご本人がご自身で対応しなくて良いので、労力もストレスもかからなくなります。
困ったときには弁護士へ相談してみてください。
2 弁護士に依頼すると損をする可能性のあるケース
以下のような場合、弁護士へ示談交渉を依頼すると損をする可能性があります。
(1)物損事故
損害内容が自動車の修理費用のみなどの物損事故の場合、弁護士へ依頼すると損をする可能性があります。
弁護士が対応したとしても、さほど賠償金が上がりにくいためです。
物損事故で過失割合に納得できないといった不満を抱える方も多いですが、弁護士へ依頼するかは慎重に判断すべきでしょう。
ただし、弁護士費用特約を適用できるなら、依頼を躊躇する必要はありません。
(2)過失割合が大きい
被害者の過失割合が高い場合にも、弁護士へ依頼すると損をする可能性があります。
大きく過失相殺されると相手へ請求できる賠償金額が大きく減額されるためです。
ただし、そもそも前提となる過失割合が誤っているケースもよくあります。
保険会社が主張する過失割合が必ずしも正しいとは限りません。
過失割合を修正すると高額な賠償金を請求できる可能性がありますので、迷ったときには一度弁護士へ相談してみましょう。
(3)相手が無保険で資力がない
相手が無保険の場合、弁護士へ依頼しても最終的に取り立てができない可能性があります。
保険会社と違い、資力のない相手からは取り立てが困難だからです。
ただし支払い能力のある相手であれば、弁護士へ依頼するメリットがあります。
(4)軽傷の事故
打ち身や打撲といった軽傷の人身事故の場合にも、弁護士へ依頼しても賠償金は大きく増額されないのが通常です。
ただ、ご自身では軽傷と思っていても意外と重傷だったり後遺症が残ったりするケースもあります。
事故後の治療経過について不明な点がある方も、よければご相談ください。
まずは一度ご相談ください
京都の益川総合法律事務所は交通事故被害者様へのご支援に力を入れています。
まずは一度、お気軽にご相談ください。
事業承継を弁護士に依頼するメリット
事業承継を弁護士に依頼すると、様々なメリットがあります。
たとえば、先代の退任後や先代がお亡くなりになった後の親族トラブルを避けながら安全に事業を承継できますし、トラブルが発生した場合には弁護士が対応するので、後継者の方にとってもご安心いただけるでしょう。
今回は、事業承継を弁護士へ依頼するメリットをお伝えしますので、これから承継を控えている社長や後継者候補の方々はぜひ参考にしてみてください。
1 的確な事業承継計画を立てられる
弁護士に事業承継を依頼すると、会社や親族の状況に応じた事業承継計画を立てられるのが1つ目のメリットです。
事業承継には親族内承継、従業員承継、M&Aの3種類の方法があり、会社の状況に応じていずれかの方法を選択することになります。
それぞれにおいてやらなければならない手続きや事項が多数あり、取引先や社内の関係者、金融機関などへの対応も必須となります。
自分たちだけで計画を立てようとしても、何から手を付けてよいのかわからないケースが少なくありません。
弁護士へ相談すると、どの事業承継方法が適しているかアドバイスを受けられます。
スキームが決まれば、それに応じた事業承継計画の立案もサポートしてもらえます。
的確な事業承継計画が出来上がれば、あとは実行していくだけなので、事業承継が成功する可能性が大きく高まります。
2 疑問や不安点を相談しながら進められる
事業承継を進める際には、さまざまな疑問や不安が出てくるものです。
- いつどのタイミングで社内や取引先へ周知すれば良いのか?
- 後継者を育てるにはどうすれば良いのか?
- 遺言書の内容として何を書けば良いのか?
- 親族間トラブルを避けるにはどうしたら良いのか?
弁護士に相談すれば、上記のような問題についての答えや解決方法を得られます。
自己判断で行動する場合より安全に承継手続きを進められるのも大きなメリットとなるでしょう。
3 スムーズに進められる
事業承継に自分たちだけで対応すると、計画を綿密に練らずに五月雨的に対応したりしてスムーズに進まないケースが多々あります。
「後継者になってくれる」と期待していた候補に拒否される可能性もありますし、親族間でトラブルが起こってしまうケース、株式の生前贈与や相続などの受け継ぎがうまくいかないケースなども少なくありません。
当初から弁護士に相談して問題を予防しながら進めれば、問題を避けて事業承継がスムーズに進みやすくなります。
4 遺言書作成や遺言執行者への就任を依頼できる
事業承継の際には遺言書の作成がほぼ必須です。
特に相続人が複数いる場合、後継者候補へ事業用資産や会社株式を集中させるため、遺言書で遺産分割の方法を指定しておかねばならないでしょう。
自己判断で遺言書を作成すると、要式を満たさず「無効」になってしまうケースがよくあります。
遺言書が発見されない可能性もありますし、自宅で見つけた親族が勝手に処分してしまうリスクも心配です。
弁護士に相談すれば、遺言内容についてもアドバイスを受けられますし、通常は公正証書遺言にするので要式違反で無効になる可能性はほぼありません。
弁護士が遺言執行者に就任しておけば、死後に弁護士が遺言内容を実現していくので遺言内容が無視される心配もなくなるでしょう。
遺言書の作成や遺言執行者への就任を依頼できることも、弁護士に事業承継を任せる大きなメリットの1つです。
5 トラブルを避けやすくなる
事業承継の失敗要因として大きな要素として「親族間トラブル」があげられます。
後継者と他の相続人がもめてしまうと、後継者が必要な資産を承継できなくなって会社経営が困難になってしまう可能性があります。
弁護士が当初から関与していれば、信託や遺言、生前贈与などの手続きを併用しながらトラブルにならないよう配慮して事業承継ができます。
紛争を未然に防げるのは、大きなメリットとなるでしょう。
6 トラブルになった場合にも対応できる
事業承継の際には、遺産分割や遺留分、少数株主などの関連でトラブルが発生するケースも少なくありません。
弁護士に相談していれば、トラブルが発生してしまっても、安心することができるでしょう。
弁護士は本人の代理人となって交渉や調停、訴訟や審判などに対応できるからです。
先代の存命中は先代の代理人となり、死亡後は後継者候補の代理人となって会社を守ることができるでしょう。
万が一の場合に備えて、初めから弁護士へ事業承継の相談や依頼をするのがよいのではないでしょうか。
7 事業承継を依頼する弁護士の選び方
事業承継を依頼するなら、中小企業法務や相続関係に長けた弁護士を選任すべきです。
多数の案件を解決した経験があれば、ノウハウも蓄積されていて頼りになるものです。
当事務所は1983年創業、これまで約40年間京都の地でリーガルサポートを提供し続けてきた老舗の法律事務所です。
多くの企業の方から信頼を得て、今の益川総合法律事務所があります。
事業承継にも積極的に取り組んでいますので、ぜひとも一度ご相談ください。
企業が労働トラブルを弁護士に相談するメリット
- 未払い残業代請求
- 不当解雇
- パワハラ、セクハラのトラブル
- 労働災害
- 労働審判や訴訟
企業が労働トラブルに巻き込まれた際には、お早めに弁護士へご相談ください。
益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。お困りの企業様は、お気軽にご相談ください。
1.会社が弁護士へ相談するメリット
企業の労働トラブル対策は、弁護士に依頼するようおすすめします。
1-1.損失を最小限に抑える
労働トラブルが大きくなると、企業には多大な損失が発生する可能性があります。
- 未払い残業代や退職金の支給
- 遅延損害金や付加金の加算
- 慰謝料の支払い
- 社会における信用の低下
- 他の従業員のモチベーション低下、離職
弁護士に対応を依頼すれば、支払う金額を最小限に抑えられますし、スムーズに解決することで信用低下などのリスクも大きく軽減できます。
企業側の正当性を理解してもらえれば、従業員のモチベーション低下や離職も抑えられるでしょう。
1-2.コンプライアンスを遵守できる
企業が労働問題に対応する際には、コンプライアンスを意識しなければなりません。
たとえば、労働者側の主張が正しいにもかかわらず不当な取り扱いをすると、企業に対する信用が低下するだけではなく企業側の責任が重くなってしまう可能性もあります。
弁護士に相談しながら対応を進めれば、コンプライアンスを遵守できるので安心です。
法改正があった場合にも、改正内容に対応するため御社の就業規則や社内規定を適切に改定するお手伝いができます。
1-3.トラブルを未然に防ぐ
労働トラブルに発展する前に弁護士に相談すれば、未然に防止できるケースが多々あります。
たとえば日頃からきちんと賃金計算をして残業代を支給しておけば、残業代トラブルは発生しにくくなります。万一請求されても、抗弁を出して企業側の正当性を主張できます。
法律手続きに則って解雇手続きを踏んでいれば、不当解雇にはなりません。
いったんトラブルが発生すると、労力と時間、費用がかかってしまうものです。
無駄な損失を避けるため、対応に迷ったときにはすぐに弁護士へ相談しましょう。
1-4.経営に専念できる
労働トラブルが発生すると、経営者や担当者は対応に時間と労力をとられます。
本来なら経営や普段の業務を行うべきであるところ、それが疎かになってしまうでしょう。
弁護士に任せれば、経営者や担当者が自分の仕事を後回しにしてトラブルに対応する必要がありません。
普段通りに経営や業務を行えるので、滞留を防いで企業運営を円滑に進められるメリットがあります。
2.最後に
今回は、会社が労働トラブルを弁護士に相談するメリットについて解説しました。
会社の不祥事が時々、世間を騒がせることがあり、そのたびに、一体何故不祥事を防げなかったというのが話題になります。
しかし、会社代表者や会社の担当者の方がいくら優秀であっても、自分が当事者になってしまった場合には、客観的に正しい判断を下すのが難しくなり、その判断が狂ってしまうことも多いです。
会社の労働トラブルについても同じことが言え、普段優秀な会社代表者や会社の担当者の方が、客観的に見ると誤った判断を下してしまい、トラブルをむやみに拡大させてしまうことも多いです。
京都の益川総合法律事務所は、企業側の労働問題に力を入れて取り組んでいます。
労働問題でお困りの企業様は、お気軽にご相談ください。
問題社員を解雇する方法
- 欠勤や遅刻が多い
- 上司に反抗的な態度をとる
- セクハラやパワハラなどのトラブルを引き起こす
- 経歴を詐称されていた
会社は、問題社員を抱えていると、解雇したいと考えるものです。
もっとも、問題社員を解雇するには、法的に適正な手順を踏まねばなりません。
いい加減に対応すると、「不当解雇」と主張され、解雇の効果が認められない可能性もあるので、慎重に対応しましょう。
今回は、問題社員を解雇する適切な手順を弁護士が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1 解雇の要件を把握する
問題社員を解雇したいなら、まずは法律上の解雇の要件を把握すべきです。
労働者は法律によって強く保護されるので、会社側が解雇するのは簡単ではありません。
- 客観的合理的な理由
- 社会的相当性
これら2つの要件を満たさなければ、普通解雇は認められません。
たとえば、以下のような場合であれば解雇できる可能性があります。
- 長期の無断欠勤
- 刑事事件を起こして有罪となり、会社の信用を失墜させた
- 上司に反抗的な態度を取り続け職務怠慢が続き、再三に渡って注意しても改善しない
- 極めて重大な経歴詐称
ただし、上記に該当する場合であってもいきなり解雇すると社員側が納得せず、トラブルにつながる可能性があります。
以下のような手順で解雇を進めるのが良いでしょう。
STEP1 教育指導を行う
遅刻や欠勤が多い、成績が悪い、勤務態度が悪いなどの問題があるなら、まずは教育指導を行って改善を目指しましょう。問題が解消されれば解雇する必要はありません。
どういった教育指導を行ったのかについては資料を残しておきましょう。
後に、「不当解雇」と主張された場合に反論するための証拠となります。
STEP2 人事異動などの工夫をする
セクハラやパワハラ行為、勤務態度などの問題は人事異動によって克服できるケースもあります。
部下のいない部署へ移す、仲の悪い同僚や上司のいない部署へ移す、異なる業務を与えるなどの工夫をして改善を目指しましょう。
STEP3 退職勧奨する
工夫をこらしても問題が解消されない場合には、いよいよ会社を辞めさせることを検討します。
ただし、いきなり解雇するのではなく、退職勧奨するようおすすめします。
退職勧奨とは、従業員へ自主的な退職を促すことです。
従業員が自ら辞めるのであれば、基本的に不当解雇になりません。
ただし、退職勧奨時には「退職強要」にならないよう注意が必要です。
たとえば、上司が数人で本人を取り囲み、退職届に署名押印するまで帰さない、などと告げて脅迫すると強要となってしまうでしょう。
退職はあくまで本人の自主的な意思に委ねるべきです。
2 解雇せざるを得ない場合の対応
退職勧奨をしても本人が応じない場合には、いよいよ解雇の手続きを検討せざるを得ません。
解雇するときには、以下の手順で進めましょう。
STEP1 解雇理由をまとめる
まずは、解雇の理由をまとめておくべきです。
1つには、後に社員側から解雇理由証明書を求められる可能性があるからです。
すぐに正当な理由を付した解雇理由証明書を発行できるよう、用意しておく必要があります。
また、解雇理由が不十分な場合、解雇が無効となってしまうリスクが高まります。
実際に解雇通知を送る前に、客観的合理的な解雇理由を明らかにして、関係者で共有しましょう。
STEP2 解雇予告または解雇予告手当の支給をする
労働基準法により、社員を解雇する際には「30日前に解雇予告」をしなければなりません。いきなり社員を解雇すると、社員にとって影響が大きくなるためです。
ただし、30日前の解雇予告が困難な場合には、不足日数分の解雇予告手当を支給すれば解雇できます。
STEP3 解雇通知をする
解雇通知を送り、解雇を実行します。
解雇したら労働契約が終了するので、その後は賃金を支払う必要がありません。
STEP4 解雇後の対応
解雇した後、未払いの給料があれば支給する必要があります。
退職金が発生する場合には、きちんと計算して支給しましょう。
社員に名刺やタブレット機器などを支給している場合には、返還させ、私物については持ち帰らせましょう。
社員が退職すると、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ「離職証明書」を提出しなければなりません。ハローワークから離職票が送られてきたら、本人へ交付しましょう。
解雇理由証明書について
解雇後、社員からは「解雇理由証明書」の発行を求められる可能性があります。
解雇理由証明書には、会社が「解雇すべきと考える理由」を書かなければなりません。
証明書に記載した理由が不十分な場合、「不当解雇」と主張される可能性が高くなります。
事前に慎重に検討しておいた解雇理由を書き込み、交付しましょう。
3 問題社員を解雇するには弁護士へ相談を
問題社員を適正に解雇するには、弁護士へ相談するようおすすめします。
弁護士であれば、解雇の要件を満たすかどうか、法的に判断できます。
解雇前に退職勧奨を行う場合にも「退職強要」といわれないよう気を付けるべきポイントについて、アドバイスさせていただきます。
仮に、社員が不当解雇として争ってきた場合にも対応ができます。
京都で労使トラブルに詳しい弁護士をお探しの事業者様がおられましたら、お気軽に益川総合法律事務所までご相談ください。
懲戒解雇に納得できないときの対処方法
- パワハラを疑われて懲戒解雇されてしまったが、事実無根なので取り消してほしい
- 「同僚より成績が悪い」と言われて懲戒解雇された
- 懲戒解雇に納得できない
- 弁明の機会も与えられずにいきなり懲戒解雇された
懲戒解雇が無効になるケースは少なからず存在します。
納得できない場合には弁護士までご相談ください。
1 懲戒解雇とは
懲戒解雇とは、懲戒処分の一種として行われ、使用者が労働契約を一方的に解消するもので、懲戒処分の中では最も重い処分です。
懲戒処分とは、企業秩序違反行為に対する制裁罰であって、労働者の行為によって企業秩序が害されたことが実質的な根拠となります。
懲戒処分には以下のような種類があります。
- けん責・戒告・始末書提出処分…最も軽い懲戒処分で口頭又は文書によって将来を戒めるものです。
- 減給…給料を減らす処分です。
- 出勤停止…一定期間、会社への出勤を停止する処分です。通常、出勤停止期間中は賃金が支給されません。
- 降職・降格…人事制度における役職上の地位や格付けを下げることです。
- 諭旨解雇…退職金の一部又は全部の不支給を伴う懲戒解雇より緩やかな処分です。労働者に退職願や辞表の提出を勧告して、それに応じない場合に懲戒解雇するという形式をとることもあります。
- 懲戒解雇…最も重い懲戒処分で、退職金の不支給などの不利益を伴うことが多いです。
2 懲戒解雇が有効となる条件
懲戒解雇は、常に有効とは限りません。以下の要件を満たす必要があります。
(1)就業規則に定める
まずは、会社の就業規則に懲戒に関する規定を定め、従業員へ周知しなければなりません。
就業規則に懲戒規定がない場合には懲戒解雇はもちろん、懲戒処分そのものを適用できません。
(2)懲戒理由が存在する
次に、懲戒処分をしなければならない理由が必要です。
たとえば、業務上横領を行った、会社の信用を害するような重大な刑事事件で有罪判決を受けた、悪質なパワハラ行為を繰り返して何度注意しても改善しない、などの事情です。
「客観的な事実」が必要なので、会社が疑っているだけで、事実無根であれば懲戒解雇は認められません。
(3)懲戒理由と懲戒解雇のバランスが取れている
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも最も重大な処分であり、労働者に与える影響も大きくなります。
懲戒事由に該当するからといって、常に解雇まで認められるとは限りません。
認められるには、「解雇と問題行動のバランス」が必要です。
たとえば、勤務態度が悪いとしても、戒告で済ませるべきケースもあるでしょう。
そういった軽い懲戒理由しかない事案で懲戒解雇を行うと、無効になります。
(4)適正な手続き
就業規則に懲戒規定を設ける場合、懲戒手続の進め方についても定められるケースがよくあります。
その場合、定められた手続きにそって懲戒処分が行われなければなりません。
たとえば、「労働者に弁明の機会を与える」と記載されているのに、実際には弁明の機会を与えられなかったら、不当解雇になります。
3 懲戒解雇でよくある理由
懲戒解雇が行われるとき、多いのは以下のような理由です。
- 業務上横領
- パワハラ、セクハラ
- 重大な経歴詐称
- 刑事事件で有罪になった
- 長期にわたる無断欠勤
上記のような事情が悪質であれば、懲戒解雇が認められる可能性が高くなります。
一方、軽度なら懲戒解雇が無効になるケースもあるので、必ずしも解雇を受け入れなければならないとは限りません。
4 懲戒解雇が無効になるケース
以下のような場合には、懲戒解雇は無効になります。
(1)就業規則に規定がない
就業規則に懲戒に関する規定がなければ懲戒解雇は無効です。
(2)就業規則の定める手続きを踏んでいない
就業規則の定める手続きを踏んでいなければ、懲戒解雇が無効になる可能性が高くなります。
(3)懲戒事由がない
パワハラを疑われたけれども、実際にはパワハラを行っていないなど、懲戒事由がない場合には懲戒解雇は無効です。
(4)懲戒解雇が重すぎる
問題行動に対して懲戒処分が重すぎる場合、懲戒解雇は無効となります。
5 懲戒解雇に納得できない場合の対処方法
懲戒解雇に納得できない場合、以下のような対処を検討しましょう。
(1)地位回復を求める
懲戒解雇が無効であれば、労働契約関係は存続しています。
会社へ「従業員としての地位確認」を求めましょう。
(2)未払いとなった賃金を求める
労働者としての地位を失わないので、未払い賃金をまとめて請求できます。
(3)慰謝料を請求する
会社の対応が悪質な場合には、慰謝料を請求できる可能性もあります。
(4)解決金を求める
会社に戻りたくない場合には、自主退職を前提に解決金や退職金を求める方法もあります。
(5)弁護士に相談する
懲戒解雇が無効であることを主張するには、会社に対して内容証明郵便を送って交渉すべきですし、場合によっては労働審判や訴訟を起こさねばなりません。
個人で対応するのは困難でしょう。
会社との力の差があるため、不利になりやすいというデメリットもあります。
弁護士に相談すれば、懲戒解雇が無効になる見込みがあるのか、どのように争えばよいのかアドバイスを受けられます。
会社との交渉も任せられるので、自分で対応する労力やストレスがかかりません。有利な条件で解決できる可能性が高まります。
懲戒解雇された場合、退職金も解雇予告手当も受け取れないというケースもあります。
懲戒解雇に納得できないという方は、まずは弁護士までご相談ください。
不当解雇とは 納得できないときの対処方法
「ある日突然、会社から解雇されてしまった」
解雇通知が届いても、それが「不当解雇」であれば会社に戻ることができます。
出社できなかった期間に不払いとなっていた賃金はもちろん、ときには慰謝料も請求できる可能性もあります。
不当解雇になるのはどういったケースなのか、納得できない場合の対処方法もふまえて弁護士がお伝えします。
1 不当解雇とは
不当解雇とは、法令の定める要件や手続きを満たさない違法な解雇です。
解雇の要件を満たさない場合や必要とされる解雇手続きをふまなかった場合に不当解雇となります。
不当解雇は基本的に無効なので、不当解雇された場合には労働者は会社に対し「従業員としての地位」を主張できます。
会社の対応が特に悪質な場合、慰謝料を請求できる可能性もあります。
2 不当解雇になる場合
(1)解雇できない場合に解雇した
法律上「解雇できない」と規定されている場合に解雇すると、不当解雇となります。
たとえば、以下のような場合が該当します。
- 正当な労働組合活動を行ったことを理由とする解雇
- 労基署へ不正の申告をしたことを理由とする解雇
- 女性労働者が婚姻したことを理由とする解雇
- 女性労働者が妊娠したこと、出産したことを理由とする解雇
- 業務上の傷病による休業期間や休業明け30日間の解雇
- 産前産後休業中や休業明け30日間の解雇
- 産前産後休業の請求・取得を理由とする解雇
(2)解雇の要件を満たしていない
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。
すなわち、解雇するには以下の2つの要件を満たさねばなりません。
- 客観的合理的性
- 社会的相当性
これら2つの要件は極めて厳しく判断されます。
解雇要件を満たさない不当解雇の例
たとえば、以下のような場合、解雇要件を満たさないので不当解雇となる可能性が高いと考えられます。
- 他の従業員と比べて成績が悪い
- 多少の遅刻や欠勤、早退がある
- 周囲との協調性に欠ける
- 業務に直接影響のない小さな経歴詐称
パワハラ行為や頻繁な遅刻欠勤、上司へ反抗的な態度をとるなどの問題がある場合でも、一度も注意せずいきなり解雇をしてしまうと、解雇の要件を満たさず無効となる可能性が高いといえるでしょう。
会社側が社会的相当性の要件を満たすには、十分に教育指導を行い配置転換や降格などの他の対応方法を検討しなければなりません。
それでもなお、解雇しか解決手段がない場合、ようやく解雇が認められる可能性があります。
(3)手続き的な不備がある
解雇をするときには、30日以上前に解雇予告を行うか、予告が間に合わなかった場合には不足日数分の解雇予告手当を払わねばなりません。
解雇予告もせず、解雇予告手当も払わずにいきなり解雇をすると、不当解雇となります。
(4)就業規則違反の解雇
就業規則において解雇できる場合や解雇条件、解雇手続きが規定されている場合には、就業規則にも従わないと不当解雇となります。
懲戒解雇する場合にも、就業規則に懲戒に関する規定が必要です。
3 不当解雇されたときに主張できる内容
不当解雇された場合には、会社に対して以下のような主張ができます。
(1)従業員の地位確認
不当解雇は無効となるので、従業員としての地位を主張できます。
従来のように会社に戻り、賃金を受け取れます。
(2)不払い賃金の請求
解雇通知後不払いとなっていた賃金を請求できます。
(3)慰謝料
解雇が特に悪質な場合には、慰謝料を請求できるケースもあります。
ただし、慰謝料は常に請求できるとは限りません。
- 社長が従業員にセクハラを行い、これに対して反抗されたことを理由として解雇した場合
- 虚偽の解雇理由を社外に示して従業員の名誉を毀損した場合
こういった悪質なケースであれば、慰謝料を請求できる可能性が高くなるでしょう。
(4)会社に戻りたくない場合
会社に戻りたくない場合には、話し合いにより不払い賃金や次に就職できるまでの補償金を解決金として受け取り、解決する方法もあります。
不当解雇を主張したからといって、会社に戻らなければならないとは限りません。
4 不当解雇されたときの対処方法
不当解雇されたら、以下のように対応しましょう。
(1)解雇理由証明書を請求する
まずは、「解雇理由証明書」を請求してください。解雇理由証明書とは、会社の考える解雇理由が書かれている書面です。
労働者が会社へ解雇理由証明書を請求したら、会社は速やかに発行しなければなりません。
解雇理由証明書に書かれている理由が不当なものであれば、後に裁判になったときに不当解雇を認めてもらいやすくなります。
(2)会社へ通知書を送る
会社に対し、解雇が無効になることや従業員としての復帰、不払い賃金の支払いを求める通知書を送りましょう。
内容証明郵便を使って送付するようおすすめします。
(3)弁護士へ相談する
不当解雇を主張する際には、会社と交渉しなければなりません。
法的な知識を持たずに労働者が1人で対応すると、どうしても不利になってしまいやすいでしょう。
自分でも気が付かないうちに、行うべきでないことをしてしまう可能性もあります。
できるだけ早い段階((1)解雇理由証明書の請求を行う前)で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士が代理人として交渉すれば、労働者の権利を十分に実現しやすくなるメリットがあります。
会社側も真剣に対応することが予想されます。また、弁護士に労働審判や訴訟も任せられて安心です。
当事務所では、労働関係のトラブルに力を入れて取り組んでいます。
困ったときにはお早めにご相談ください。
離婚に伴う財産分与請求を行い、1億円以上の財産分与を取得した事案【解決事例】
・キーワード
離婚に伴う財産分与、高額所得者との離婚、示談交渉
・ご相談内容
ご依頼者は、離婚及び離婚に伴う財産分与の請求を行う側です。
ご依頼者は、配偶者が高額所得者であるため、財産分与の対象資産も多く、適切に財産分与を受けることができるかについて心配されていました。
そのため、適切に財産分与を受けることができるよう、当事務所にご依頼されました。
・当事務所の対応及び結果
受任後、相手方に対して速やかに内容証明郵便を送付し、離婚及び離婚に伴う財産分与の請求等についての当方の意向を通知しました。
相手方も弁護士に依頼し、弁護士同士の交渉となりました。
当初、相手方の提示金額は約7000万円でした。
これに対して、当方では、相手方が財産分与の対象資産として挙げていなかった資産を指摘する、対象資産の評価についても争う等して、粘り強く交渉を続けました。
その結果、ご依頼者が1億円以上の財産分与を取得する形で合意することができました。
・コメント
高額所得者との離婚ということで、財産分与の対象資産がすべて挙げられているか、適切な財産の評価がなされているかということが重要なポイントとなりました。
相手方も弁護士が代理人となっていたので、裁判になった場合の見通し等をふまえて交渉を行い、結果として相手方の当初の提示額から約4000万円の増額に成功しました。
大幅な増額に成功したこともあり、ご依頼者に大変満足して頂けました。
また、ご依頼当初、ご依頼者は、離婚にまつわる不安や心配をお持ちになっていましたが、時間が経つにつれて、ご依頼者自身が、離婚後の生活について、前向きに明るく考えるようになられていく姿が印象的でした。
※事件の内容については、特定できない程度に抽象化しています。
高額所得者との離婚については、こちらのページで詳しく解説しています。
不倫慰謝料の相場と不倫の証拠について
不倫慰謝料を請求するときには、「相場の金額」を把握しておくべきです。
相場がわからなければ、そもそもどのくらいの金額を請求すべきか判断できません。
相手から減額を主張されたときにも、応じてよいものかどうかについての判断がつきかねます。
また、不倫の「証拠」も重要です。
証拠がないのに請求しても、不倫の事実について否定され、「払わない」と言われてしまうでしょう。
今回は、不倫慰謝料の相場や不倫の証拠について、京都で男女問題に積極的に取り組んでいる弁護士がご説明します。
1 不倫慰謝料とは
不倫慰謝料とは、配偶者が「不貞」をしたときに請求できる慰謝料です。
「不貞」とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係をもつことをいう法律用語です。
一般用語の「不倫」や「浮気」と近い意味を持ちます。
配偶者に不貞をされると、不貞された側は、配偶者と不貞相手の両方へ慰謝料を請求できます。
この不倫慰謝料の損害賠償債務は、不真正連帯債務となるので、どちらにも全額の請求ができます。
請求のタイミングは、同時でも別のタイミングでもかまいません。
2 不倫慰謝料の金額
不倫慰謝料の金額を話し合いで決める場合、「いくらにしなければならない」という決まりはありません。
高額でも相手が納得すれば支払いを受けられますし、低額でも請求する側が納得すれば有効な取り決めになります。
もっとも、裁判所が慰謝料の額を判断する際には相場があります。
把握して参考にしましょう。
(1)離婚する場合
離婚すると、被害者の受ける精神的苦痛が大きくなると考えられるので、離婚しない場合より不倫慰謝料の金額が上がります。
慰謝料の算定については、婚姻期間、不貞の回数・期間・程度、配偶者と不貞相手のどちらが積極的であったか等も考慮されます。
一般的には、100万円から300万円の範囲となることが多いようです。
正式に離婚しなくても、別居状態となって夫婦関係が破綻してしまったら、離婚事案に近い慰謝料額が認められやすい傾向があります。
(2)離婚しない場合
離婚しない場合、離婚する場合と比べて慰謝料の金額は低額になり、100万円以下が相場となります。
(3)肉体関係を証明できない場合の慰謝料
法律上の「不貞」というには肉体関係を証明しなければなりません。
ただし、肉体関係が認められなくても、社会常識を超えてあまりに親しい交際関係があると、夫婦生活の平穏が害されるので、夫婦生活の平穏を害して精神的苦痛を与えたとして慰謝料が認められるケースがあります。
3 不倫の証拠について
不倫慰謝料を請求するなら、事前に証拠を集めましょう。
証拠がなければ相手から支払いを拒否されるでしょうし、裁判を起こしても、不貞の証明ができず、こちらの請求が認められません。
以下で、不倫の証拠を集める際のポイント等についてご説明します。
(1)不倫の証拠集めのポイント
不倫慰謝料の証拠を集めるとき、まずは「肉体関係を証明できるかどうか」に注目しましょう。
肉体関係を直接証明できる証拠があれば、それ1つでも十分です。
一方、肉体関係があるか判然としないものは、証拠としての価値が低く、数多く集めても不貞が認められない可能性があります。
以下、集めるべき有効な不倫の証拠と、間接的な証拠の例を挙げます。
(2)有効な不倫の証拠
- 性交渉をしているときの画像、動画
不倫を立証するための強力な証拠になります。
- 性関係をもっていることがわかるLINE、SNSなどのメッセージ、メール
不倫があったことを強く推認させるものであり、有効な証拠となります。
- 不貞(肉体関係)を認める自認書や録音データ
配偶者や不倫相手が「不貞しました(肉体関係を持ちました)」と認めて作成する書面や話したときの録音データです。
自認書を作成させる際には、直筆で署名押印させましょう。
- 相手の日記やスケジュール帳
肉体関係を持ったことがわかるものであれば、有効な証拠になります。
- 探偵の調査報告書について
探偵事務所の調査報告書も、ホテルに入っていくところ、不倫相手の家に宿泊したところなどの写真などがある場合には不貞についての強力な証拠となります。
ただし、探偵の調査が必ずしも成功するとは限りません。
調査回数、調査時間が増えると費用が高額となるので、依頼の際には費用対効果を慎重に検討しましょう。
(3)間接的な証拠
- 肉体関係までは直接わからない親しげなLINEやSNSのメッセージ、メールなど
- デートしているときの写真や動画(キスやハグなど)
- クレジットカードの明細書
- デート代やプレゼント代の領収証
- 相手から贈られてきたメッセージカードやプレゼントの現物
- 交通ICカードやETCカードの記録
- 通話履歴
- 相手の日記やスケジュール帳(肉体関係まではわからないもの)
配偶者や不倫相手へ慰謝料請求する前に、請求する金額や証拠について十分な準備を整えましょう。
当事務所には男性弁護士と女性弁護士の両方が在籍しており、請求金額や証拠について、双方の視点からアドバイスやサポートが可能です。
京都、滋賀、大阪で不倫トラブルに悩まれている方がおられましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。
離婚で慰謝料を請求できるケース、できないケース
離婚の際、「相手に慰謝料を払ってもらいたい」と考える方も多数いらっしゃいます。
しかし、必ずしも慰謝料を請求できるとは限りません。
今回は、慰謝料を請求できるケースとできないケースについて、弁護士が具体的な状況を交えて解説します。
離婚を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
1 離婚の慰謝料とは
離婚の慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛による損害賠償金のことです。
具体的には以下のような場合、慰謝料が認められる可能性があります。
(1)不貞された
相手が「不貞」した場合は、慰謝料が認められる典型例です。
不貞とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係をもつことを意味します。
親しく交際していても、性的関係がなかったら不貞にはなりません。
ただし、性的関係がなくても、社会常識を逸脱するほど親密な交際を続け、夫婦生活の平穏を害して精神的苦痛を与えた場合には、慰謝料が認められる可能性もあります。
(2)生活費を払ってもらえなかった
夫婦にはお互いに扶助義務があるため、収入の高い方は低い方へ生活費を払わねばなりません。
たとえば、こちらが専業主婦や兼業主婦などで所得が低いのに、相手が生活費を払ってくれなかった場合、慰謝料を請求できます。
(3)家出された
夫婦には同居義務があります。正当な理由なく家出されたり同居を拒否されたりしたら、慰謝料を請求できます。
(4)暴力を振るわれた
暴力を振るわれた場合もまた、慰謝料が認められる典型例です。
暴力を振るわれた場合には、診断書や暴力を振るわれた直後の部位の写真等が有効な証拠となります。
(5)モラハラ被害を受けた
モラハラは、言葉や態度による精神的な暴力です。
モラハラ配偶者には、大声でどなる、人前で相手を侮辱する、無視して口をきかない、異常に束縛する、実家の親族や友人との交流を制限する、暴れて物に当たるなどの特徴がみられます。
モラハラの場合には、立証が難しいため、慰謝料を認めてもらうことは容易ではありませんが、慰謝料が認められた裁判例もあります。
モラハラ被害を受けた場合には、客観的な資料を残しておくことをおすすめします。
(6)セックスレス
場合によっては、セックスレスの事案でも慰謝料を請求できる可能性があります。
典型的には、健康で若い夫婦であるにもかかわらず、一方が特段の理由なく性交渉を拒否し続けていた場合が挙げられます。
ただし、性交渉がないからといって、必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。
ケースバイケースの判断が必要です。
(7)浪費
相手が浪費していた場合にも、事案によっては慰謝料が認められる可能性があります。
たとえば、相手が生活費に手を付けたために家族の生活が困窮した場合、こちらが稼いだお金をギャンブルなどにつぎ込まれて生活が破綻した場合などです。
ただし、相手が浪費したからといって必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。
相手が自分で稼いだお金を余裕のある範囲内で使っていた場合、個人的な借金はしていたけれども夫婦の生活にはさほどの影響が及ばなかった場合などには慰謝料は発生しないと考えられます。
(8)刑事事件で有罪になった
相手が刑事事件によって有罪判決を受けた場合、慰謝料請求できる可能性があります。
たとえば、相手が強制性交等罪を犯したら「不貞」であり、慰謝料請求をできる可能性があります。
ただし、すべての刑事事件が慰謝料発生原因になるとは限りません。
万引きや暴行、脅迫などの犯罪行為を行った場合でも、必ずしも夫婦関係を破綻させる行為とはいえません。
相手が実刑になっても慰謝料請求できないケースは考えられます。
相手が刑事事件で逮捕されたり有罪になったりしたとき、慰謝料請求できるかどうか迷ったら弁護士へご相談ください。
2 慰謝料請求が難しい場合
以下のような場合には慰謝料請求が難しいと考えられます。
(1)性格の不一致、価値観の相違
離婚理由として最も多いと思われるのが「性格の不一致、価値観の相違」です。
性格の不一致、価値観の相違の場合、有責性が認められるのが難しく、慰謝料は発生しません。
ただし、相手の態度が突然冷たくなった、家庭を顧みなくなったなどの事情がある場合、相手が不貞しているケースがよくあります。
「性格の不一致、価値観の相違」と決めつける前に、本当の離婚原因を探る必要があるでしょう。
(2)思想や宗教の違い
思想や支持政党、考え方や宗教などが異なるため、離婚に至るケースもあります。
家柄や生活習慣が違いすぎて夫婦関係を継続できなくなることもあるでしょう。
こういったケースではどちらが悪いというわけでもないので、慰謝料は発生しません。
(3)相手の実家との不和
相手の実家と反りが合わないので離婚するということも、多くあると思われます。
相手の実家の親族と相手本人は異なるので、相手の実家から嫌がらせをされたからといって相手に慰謝料請求できるわけではありません。
もっとも、義母が度を超えた嫌がらせを行って夫婦関係を破綻させた事案において、義母に慰謝料の支払いを命じた裁判例はあります。
3 解決金の支払いを受けられる可能性も
離婚の際に慰謝料請求権が認められるかどうか明らかでなくても、話し合って協議離婚するなら「解決金」を払ってもらえる場合がよくあります。
「解決金」であれば、相手方としても「慰謝料」といわれるより心理的抵抗が小さく、払いやすくなるものです。
益川総合法律事務所では、離婚事件について、多数の対応経験があります。
離婚の慰謝料請求についても、お気軽にご相談ください。
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