コラム
セクハラ、パワハラの慰謝料の相場について
セクハラやパワハラが発生すると、被害者は加害者へどの程度の慰謝料を請求できるのでしょうか。慰謝料トラブルをスムーズに解決するため、慰謝料の相場を把握しておきましょう。
この記事では、セクハラやパワハラの慰謝料の相場について、京都の弁護士が解説します。
セクハラ、パワハラの被害に遭ってお困りの方は参考にしてみてください。
1 セクハラとは
セクハラとは、「セクシュアルハラスメント」の略で、簡単にいうと性的な嫌がらせです。
職場で他の人を不快にさせるような性的な言動をとると、セクハラに該当する可能性があります。
より正確にいうと「職場において行われ、労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。
たとえば、労働者が性的な要求を拒んだために降格や解雇などの不利益を受ける場合や、職場仲間の性的な言動によって職場環境が悪化した場合などにセクハラが成立し得ます。
セクハラの加害者になるのは上司だけではありません。
同僚や後輩などからもセクハラ被害を受ける可能性があります。
2 セクハラで慰謝料請求できる相手
セクハラの被害に遭った場合には、加害者へ慰謝料を請求できるケースが多数です。
まずは、直接の加害者へ慰謝料請求できます。
また、加害者を雇用している会社へも慰謝料請求できるケースがあります。
理由は2つあり、1つには会社には加害者の使用者責任が発生するためです。
2つ目は、会社には労働者が働きやすい環境を用意すべき義務があり、それにもかかわらず漫然とセクハラを放置すると、職場環境配慮義務違反として責任が発生するためです。
3 セクハラの慰謝料相場
セクハラの慰謝料相場は、50~200万円程度です。
ただし、事案によって大きく異なり、ときには300万円を超える案件もあります。
以下で、どういった状況になるとセクハラの慰謝料が高額になるのか、みてみましょう。
セクハラの慰謝料が高額になりやすいケース
- 被害者がセクハラによって退職に追い込まれた
- 被害者がセクハラによってうつ病などの病気にかかった
- セクハラの態様が悪質(強姦した、強制わいせつ行為をしたなど)
- セクハラが長期間、何度も繰り返された
特に被害者に対して強姦や強制わいせつ行為が行われて刑事事件になる場合などには、数百万円という高額な慰謝料が発生するケースもあります。
4 パワハラとは
パワハラは、パワーハラスメントを省略した言葉です。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものです。パワハラといえるには、①から③までのすべての要件を満たさねばなりません。
たとえば、相手に暴力を振るった場合、精神的に攻撃した場合、仲間はずれにした場合、過量な業務を強要した場合や反対に仕事を与えない場合、プライベートに無用に踏み込む場合などにパワハラが成立する可能性があります。
上司による部下へのパワハラが典型ですが、職場の優越的な関係を背景としてさえいれば、部下から上司へのパワハラや同僚同士のパワハラも成立します。
5 パワハラで慰謝料請求できる相手
パワハラで慰謝料請求できる相手には、直接の加害者だけではなく会社も含まれるケースが多くあります。
従業員の行為について使用者責任が発生する可能性がありますし、会社には職場環境配慮義務も課されるからです。
被害に遭っているのに会社がパワハラを漫然と放置した場合、会社への責任追及も検討しましょう。
6 パワハラの慰謝料相場
パワハラの慰謝料相場は、ケースによって大きく変わります。
また、どのようなパワハラが行われたかによっても慰謝料額は変わってきます。
一般的には30万円~200万円程度になる事案が多いでしょう。
たとえば、相手から殴られた場合や暴言をはかれた場合、名誉毀損された場合などです。
一方、被害者が自殺した場合には、2000万円以上もの高額な慰謝料が認められるケースも少なくありません。
パワハラの慰謝料が高額になりやすいケース
- 被害者が暴力を受けて後遺症が残った
- 執拗にパワハラが行わるなど、悪質であった
- パワハラが行われた期間が長い
- 被害者がうつ病などの精神疾患になって働けなくなった
- 被害者が自殺した
被害者がうつ病などの精神疾患にかかると、比較的慰謝料が高額になりやすい傾向があります。
7 セクハラやパワハラの慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
セクハラやパワハラの慰謝料請求を行う場合、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
- 相手(加害者や会社)が真摯に対応する可能性が高い
- 有利に交渉して高額な慰謝料を獲得しやすい
- 交渉の手間や時間を節約できる
- 相手と直接交渉しなくて良いのでストレスが軽減される
- 状況に応じて適切なアドバイスをもらえるので、間違った行動により後で不利になるリスクが低下する
セクハラやパワハラのトラブルでお困りの場合、弁護士がアドバイスやサポートを行います。まずはお気軽にご相談ください。
社員が逮捕されたとき、会社がとるべき対応とは
社員(従業員)が逮捕されると、会社としてはどのように対応すれば良いのでしょうか。
逮捕されたからといって、社員をすぐに解雇できるわけではありません。
また、逮捕後はしばらく出勤できなくなるので、休職に際しての取扱い方法なども押さえておきましょう。
この記事では、社員が逮捕された場合に会社がとるべき対応について、京都の弁護士が解説します。
いざというときに慌てないために、ぜひ頭に入れておいてください。
1 社員が逮捕されたときに会社がとるべき対応
ある日突然社員が逮捕されてしまったら、会社としては以下のような対応をしましょう。
(1)事件の内容を確認する
まずは、社員がどのような事件を起こして逮捕されたのか、事実関係を把握すべきです。
業務中に起こした事件かどうかも問題になります。
もし、業務中に事件を起こした場合、会社にも使用者責任が成立し、被害者から損害賠償請求される可能性があります。
(2)身柄拘束場所を確認
次に、社員が身柄拘束されている場所を確認しましょう。
一般的には、逮捕された場合には、どこかの警察の留置施設で身柄拘束されていることが多いです。
警察から連絡が来たときには警察に確認すると良いですし、そうでない場合には親族が知っているケースが多いので、聞いてみると良いでしょう。
(3)本人の認識を確認
逮捕されたからといって、被疑事実が真実とは限りません。
実際には犯罪行為をしていないケースもあります。従業員が逮捕されたら、本人から事情を聞きましょう。
また、逮捕勾留期間には出勤できなくなります。その間に有給休暇を消化する意向があるのかなども確認しなければなりません。
本人が身柄拘束されている留置場へ行き、面会して話を聞きましょう。
ただし、被疑者が逮捕されると、その後「勾留」に切り替わるまでの間は、たとえ家族でも接見(面会)できません。
逮捕後、72時間以内に勾留請求がされるか決定され、勾留に切り替わった時点で、ようやく接見できるようになります。
弁護人以外の場合、面会できるとしても、捜査官の立会つきで時間は10~20分程度です。あまり込み入った話はできないので注意しましょう。
2 社員が逮捕されている間の出勤や給料について
社員が逮捕されると、その社員はしばらく出勤できなくなってしまいます。
具体的には、逮捕から起訴されるまでの最大23日間、出社できません。
その間の給料に関する取り扱いが問題になります。
基本的に休職している間は、給料は出ません。
ただし、本人が有給の消化を希望するのであれば、会社としては受け入れると良いでしょう。
3 社員が逮捕されてもすぐには解雇できない
「社員が逮捕されたら、解雇できるのだろう」と考える方が多いのですが、法律上はそう簡単なものではありません。
以下で、社員が逮捕されても解雇できない理由や正しい対処方法をお伝えします。
(1)すぐに懲戒解雇できるわけではない
多くの企業では、懲戒解雇の理由として「犯罪行為を行ったとき」を挙げています。
そこで従業員が犯罪事実によって起訴され、有罪認定を受けると懲戒解雇できる可能性があります。
しかし、逮捕されただけの段階であれば、まだ犯罪行為をしたと確定的に判断することができません。
逮捕されただけで懲戒解雇すると、後に不起訴となった場合などに不都合が生じる可能性があります。
従業員が逮捕されても、すぐに懲戒解雇としないように注意しましょう。
(2)有罪判決を受けた場合は解雇できることもある
それでは、従業員に有罪判決が確定したら、解雇できるのでしょうか?
実際には、有罪判決が出ても必ず解雇できるとは限りません。
解雇するには、社員の行為が「著しく企業秩序を乱した」ことが必要とされます。
たとえば、犯罪事実が業務内容とまったく関係のない私的なものであれば、犯罪行為によって著しく企業秩序を乱したとまではいえず、解雇できない可能性があります。
一方、社員が会社のお金を横領したなど会社に被害を与えた場合には、懲戒解雇が相当となるでしょう。
4 社員の逮捕後に企業がとるべき対応
社員が逮捕された後は、以下のような対応をしましょう。
(1)社員に対する対処
まずは、本人への対応方法を検討しましょう。
たとえば、有罪判決を受けても解雇しない場合や、有罪判決が出なくても起訴猶予になって犯罪事実が明るみにでた場合などには、何らかの懲戒処分をすべきケースが多々あります。
会社が損害を被った場合には、従業員へ損害賠償請求をするかについて検討をする必要があるでしょう。
(2)再発予防策をとる
今後、従業員による不祥事が再発しないよう、予防措置をとるべきです。
特に、業務と関連して犯罪が行われた場合などには予防措置をとる必要性が高いといえるでしょう。
今回の犯罪の原因を分析し、同様の事件が起こらないように仕組み化しましょう。
たとえば、横領事案があった場合には、複数人で会社のお金を管理するようにしたりして、チェック機能を強化することなどが考えられます。
京都の益川総合法律事務所では中小企業法務に力を入れています。従業員による不祥事にお悩みの際にはお気軽にご相談ください。
離婚成立後に財産分与の請求をする方法について
離婚成立時に財産分与について合意しなかった場合、離婚成立後であっても財産分与を請求できます。ただし、離婚成立後の財産分与請求には期限もあるので、早めに対応しなければなりません。
この記事では、離婚成立後に財産分与請求をする方法について、京都の弁護士が解説します。
協議離婚などで離婚成立時に財産分与の取り決めをしなかった場合、ぜひ参考にしてみてください。
1 財産分与は離婚成立後でも請求できる
夫婦が離婚する際には、財産分与の取り決めができます。
財産分与とは、夫婦が婚姻中に取得した財産について、離婚する際又は離婚後に分けることをいいます。
協議離婚の場合、離婚成立時に夫婦が話し合って財産分与の方法を決定するケースが多いでしょう。
もっとも、離婚を急いでいたなどの事情があり、離婚成立時に財産分与の話し合いができない場合もあります。
たとえば、DV事案で相手から逃れて早く離婚したかった場合、財産分与を請求できないこともあるでしょう。
離婚成立時に財産分与を受けられなくても、離婚成立後に財産分与請求できる可能性があります。
離婚成立後、一定期間であれば、基本的に財産分与請求が可能です。
2 離婚成立後に財産分与請求できないケース
ただし、以下のような場合には、離婚成立後に財産分与請求ができません。
(1)相手と「財産分与しない」和解をしている
1つは、相手方との間で「財産分与請求をしない」と約束してしまっているケースです。
財産分与をしない内容で合意してしまっているので、後に財産分与請求ができません。
ただし、相手から騙されたり脅迫されたりして「財産分与請求しない」と合意させられた場合などには、財産分与を請求できる可能性があります。
(2)財産分与の期限を過ぎてしまった
2つ目として、財産分与の期限を過ぎてしまった場合です。。
財産分与には「離婚成立後2年間」という期限があります。
この期間内に財産分与請求しないと、財産分与請求権が失われてしまいます。
離婚成立後に財産分与請求したいのであれば、早めに対応する必要があるといえるでしょう。
3 離婚成立後に財産分与請求する手順
離婚成立後に財産分与請求する手順をご説明します。
(1)相手に協議を持ちかける
離婚成立後であっても、財産分与請求をする場合には基本的に話し合いによって決定します。
まずは、相手方に対し、財産分与についての協議を持ちかけると良いでしょう。
話し合いで財産分与の方法を決定します。
合意ができたら決定内容を「財産分与に関する合意書」にまとめましょう。
財産分与に関する合意書は、できれば公正証書にしておくようおすすめします。
公正証書に強制執行認諾文言を記載しておけば、相手が支払いを怠った場合には、スムーズに相手の財産を強制執行することが可能です。
公正証書がない場合には、相手が支払いをしないときにあらためて調停などの手続きをしなければなりません。
(2)財産分与調停を申し立てる
相手に財産分与の協議を持ちかけても応じてもらえない場合には、家庭裁判所で財産分与調停を申し立てましょう。
調停では、調停委員が間に入って話し合いを仲介してくれます。
自分たちだけでは解決できないケースでも話がまとまりやすくなるというメリットがあります。
また、財産分与の2年の期限が過ぎてしまいそうな場合でも、2年が経過する前に調停を申し立てれば調停の係属中に2年が過ぎても権利が守られます。
そこで、離婚成立後2年の除斥期間が過ぎてしまいそうな場合には、相手と話し合うステップを飛ばして財産分与調停を申し立てるケースも少なくありません。
(3)財産分与審判で財産分与の方法が決まる
財産分与調停で話し合っても両者が合意できない場合には、財産分与審判を利用します。
なお、財産分与調停が不成立になると自動的に審判に移行するので、別途審判を申し立てる必要はありません。
審判では、審判官(裁判官)が財産分与の具体的な方法を決定して、審判を下します。
調停と異なり、相手が納得しなくても、裁判所の判断を得ることができます。
4 基準時は離婚時または別居時とする
離婚成立後に財産分与請求するとき、いつの時点の財産を基準にするかという問題があります。
これについては、基本的に離婚時または別居時となります。
離婚前に別居していたら別居時、別居していなかったら離婚時です。
「話し合いをした時点」ではないので、基準時を間違わないように注意しましょう。
5 除斥期間が経過していても財産分与請求できる場合
離婚成立後の財産分与には、「離婚後2年間」の除斥期間が適用されます。
ただし、2年が経過していても、例外的に財産分与請求できる可能性があります。
それは、以下のような場合です。
- 相手から脅迫されて財産分与請求ができなかった
- 相手からだまされて請求すべき財産がないと思わされていた
- 相手が財産を隠していた
上記のような場合、不法行為に基づく損害賠償請求として、財産分与相当額を請求できる可能性があります。
相手からだまされて2年以内に財産分与を請求できなかった場合などには、2年が経過していてもあきらめずに弁護士へ相談しましょう。
京都の益川総合法律事務所では離婚や財産分与のサポートに力を入れて取り組んでいます。お困りの方がおられましたらお気軽にご相談ください。
内容証明郵便とは?書き方や出し方を弁護士が解説
「内容証明郵便はどのように作成すれば良いのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
内容証明郵便は、慰謝料請求を行うときや各種の通知書、警告書を送る場合などによく利用されています。
もっとも、日常的に使う郵便ではないので、どうやって作成すれば良いのか、どのような文面にすればよいのかなど迷ってしまう方が少なくありません。
この記事では、内容証明郵便とはどういった郵便で、どのように作成するのか(書き方)、発送方法(出し方)などについて京都の弁護士がお伝えします。
内容証明郵便で請求書や通知書を送りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
1 内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰に差し出されたかについてを謄本によって証明してくれる郵便です。
内容証明郵便を利用すると、差出人の手元と郵便局に相手に送ったものと全く同じ内容の謄本(控え)が残ります。
したがって、相手から「そのような郵便は受け取っていない」などと主張されることを予防することができ、また、万が一裁判になった場合などにも内容証明郵便の控えを証拠として提出できます。
トラブルになっている場合やトラブルに発展しそうな場合、必ず「送ったこと」を明らかにしなければならない場合などには、内容証明郵便を利用しましょう。
2 内容証明郵便を利用すべき状況
以下のような状況であれば、内容証明郵便を利用するようおすすめします。
- 不倫などの慰謝料請求をする
- 交通事故などの損害賠償請求をする(相手が保険に入っていない場合など)
- 遺留分侵害額請求をする
- 時効援用通知を送る
- 相手に警告文を送る(ストーカー被害を受けている場合、迷惑行為をされている場合など)
3 内容証明郵便の特徴
内容証明郵便には、以下のような特徴があります。
- 書留で手渡し式になる
- 郵便局によって「内容証明」という判が押される
- 文書自体にも郵便局によって証明印が押される
- 形式や文字数が決まっている
4 内容証明郵便の書き方
次に内容証明郵便の書き方をご説明します。
(1)用紙や筆記具、パソコン使用について
用紙や筆記具、パソコン使用については特にルールはなく、どのようなものを使って作成しても問題ありません。ただし文書が2枚以上になる場合、綴じ目に契印をする必要があります。
(2)文字数について
郵便局から差し出す場合の内容証明郵便の場合、文字数には以下のようなルールがあります。
縦書きの場合
1行20字以内・1枚26行以内
横書きの場合
1行20字以内、1枚26行以内
1行13字以内・1枚40行以内
1行26字以内・1枚20行以内
(3)使用できる文字について
内容証明郵便で使える文字は、ひらがな、カタカナ、漢字と数字です。英字は固有名詞の場合にのみ使えます。
かっこや句読点などの記号も使用可能です。
かっこは、「」、()などの1セットを1文字としてカウントします。
(4)訂正に関するルール
内容証明郵便を訂正する場合には、間違えた部分を二重線で消して吹き出しを入れて加筆し、欄外に「○字削除、○字加入」などと記載する必要があります。その上で訂正部分に差出人の印鑑を押します。
5 文書に記載する事項
内容証明郵便には以下のような事項を記載しましょう。
(1)差出人と受取人の氏名、名称、住所、所在地
まずは、差出人と受取人の氏名や名称、住所や所在地を書かなければなりません。
文書の冒頭か末尾の部分に書き入れましょう。
(2)捺印や契印、訂正印
差出人名の横への捺印は、法律上の義務ではありません。
ただし間違いなく本人が作成したと証明するため、捺印するのが一般的です。
契印や訂正をする場合には捺印したのと同じ印鑑を使いましょう。
(3)日付
内容証明郵便を作成した日付も入れましょう。
(4)タイトル
タイトルの記載は法律上の義務ではありませんが、タイトルがある方が文書の趣旨が伝わりやすくなります。
「請求書」や「通知書」などのタイトルをつけましょう。
6 内容証明郵便の出し方
内容証明郵便は、取り扱いのある郵便局から発送しなければなりません。
どこの郵便局でも扱っているわけではないので、注意しましょう。
郵便局へ内容証明郵便を持参する際には、以下のようなものを持っていきましょう。
- 内容証明郵便の文書(同じものを3通)
- 封筒
- 差出人の印鑑
- 郵便料金
(1)配達証明をつける
内容証明郵便を送る場合、配達証明をつけるようおすすめします。
配達証明とは、相手に送達された日を郵便局が証明してくれるサービスです。
配達証明をつけておけば、相手が「受け取っていない」とはいえなくなります。
単に内容証明郵便を出しただけでは「発送したこと」までしか証明できません。
相手に確実に配達されたという事実を証明するためには、配達証明が必要です。
(2)電子内容証明郵便の場合
電子内容証明郵便というサービスもあります。
これは、内容証明郵便のインターネット版です。
24時間いつでもどこからでも送れるというメリットがあります。
郵便局に行く暇がない方などは、電子内容証明郵便を利用すると良いでしょう。
内容証明郵便の文案などは、弁護士に確認しておくと安心です。
京都の益川総合法律事務所では内容証明郵便のレビューや作成、発送業務、相手方との交渉まで幅広く取り扱っています。
内容証明郵便について悩まれたときには、お気軽にご相談ください。
労働訴訟の対応について弁護士が解説
残業代請求や解雇トラブルなど、労働問題が起こった場合には「労働訴訟」を利用すると解決につながりやすくなります。
労働訴訟とは、労働者と使用者間の労働トラブルを解決するための裁判です。
訴訟なので時間や労力はかかりますが、最終的にトラブルを解決できるメリットがあります。
この記事では、労働トラブルを解決するための労働訴訟について、京都の弁護士が解説します。
労働トラブルの渦中にある企業や個人の方は、ぜひ参考にしてみてください。
1 労働訴訟の概要
労働訴訟は、労働者と使用者間の労働トラブルを解決するための訴訟です。
(1)労働訴訟で取り扱えるトラブルの内容
労働訴訟で対象となるトラブルの例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 残業代請求
- 未払い退職金や賞与の請求
- 解雇トラブル
- 雇止めのトラブル
- 退職強要や退職勧奨のトラブル
- 労災に関するトラブル
- 安全配慮義務違反に関するトラブル
- セクハラやパワハラで企業が適切な措置をとらなかった場合のトラブル(職場環境配慮義務違反)
- 労働条件の不利益変更のトラブル
- セクハラやパワハラの加害者(同僚や上司など)に対する請求
労働審判の場合、セクハラやパワハラのトラブルのうち「被害者が加害者(同僚や上司など)のみへ損害賠償請求する」といった「労働者同士のトラブル」については利用できません。
一方、労働訴訟ではそういった制限はないので、同僚や個人などの雇用者以外の個人相手の損害賠償請求も可能です。
(2)書面によって審理が進められる
労働訴訟は、調停や労働審判と違い、基本的には書面によって審理が進められます。
原告と被告は、自分の主張を書面にまとめて証拠を提出しなければなりません。
証拠に基づかない事実や主張は認められないことが多く、十分な証拠を揃えて手続きを進める必要があります。
(3)和解するケースもある
労働訴訟では、判決によって結論が出されるのが原則的な終結方法です。
しかし、すべてのケースで判決となるわけではありません。
当事者間で和解をして事件が終了するという事案もよくあります。
和解の場合、話し合いによって柔軟に解決できますし、早期にトラブルを終わらせられるというメリットもあります。
2 労働訴訟の流れ
次に、労働訴訟の流れをみてみましょう。
(1)訴訟提起
まずは、原告(多くのケースでは労働者側)から訴訟が提起されます。
原告は、訴状と証拠を揃えて裁判所へ提出しなければなりません。
申立て内容に不備がなければ、裁判所で受け付けられて担当部署が決まります。
(2)被告への呼出状と答弁書催告状の送付
訴状が受け付けられると、被告(原告が労働者側の場合は使用者側)へと第1回期日の呼出状と答弁書催告状が送付されます。
このとき、原告が提出した訴状や証拠書類も一緒に送られてきます。
被告側は、定められた期限までに答弁書を提出しなければなりません。
(3)答弁書の提出
被告側から答弁書が提出されます。
答弁書には、被告側の意見や原告への反論などが記載されます。
裁判所や原告は、第1回期日までに答弁書の内容を検討することとなります。
(4)第1回期日
第1回期日では、訴状や答弁書に書かれた内容を確認し、今後の進行についての話があります。
多くの場合には、次回の第2回期日以降、争点と証拠の整理を行うための弁論準備手続きに付されます。
(5)第2回期日以降
第2回目以降の期日では、弁論準備手続の中で争点と証拠の整理が行われます。
当事者は、それぞれ準備書面を出し合って、自分の意見を法的にまとめて主張しなければなりません。また、適切な時期に証拠を提出する必要があります。
(6)尋問
争点や証拠の整理が終わったら、当事者や証人の尋問が行われます。
尋問では双方の代理人である弁護士や裁判官から順番に尋問が行われます。
(7)判決
尋問が終わって和解も難しければ、裁判所が判決を下します。
(8)控訴
判決の内容に不服がある当事者は控訴(異議申立て)ができます。
原告・被告のどちらからも控訴されなかった場合には判決が確定します。
3 労働訴訟を提起されたときの対処方法
企業側が労働者側から労働訴訟を提起された場合には、迅速に答弁書を準備しなければなりません。
無視すると、労働者側に有利な判決が出てしまうリスクが高まります。
また、答弁書は法律的に意味のある主張をまとめたものでなければなりません。
労働訴訟は話し合いの手続きではないので、基本的にすべての主張を書面にまとめなければなりません。
適切な主張ができないと、敗訴してしまって高額な支払いを命じる判決が出てしまう可能性もあります。
労働訴訟に対応するには、法律や手続きに精通した弁護士によるサポートが必要です。
4 労働訴訟はお任せください
京都の益川総合法律事務所では、企業側の労働トラブルサポートに力を入れて取り組んでいます。
これまで多くの労働審判や労働訴訟を取り扱い、京都の企業様を支えて参りました。
弁護士に労働訴訟を任せれば、企業内で対応する場合と比較して、普段の業務に対する支障も最低限に抑えられます。
労働者側から突然労働訴訟を提起されてお困りの場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
民事調停手続きについて
裁判所で紛争を解決する方法は、訴訟だけではありません。
民事調停によって解決できるケースも多数あります。
民事調停を利用すると、調停委員が間に入って手続きを進めてくれるので、争っている当事者同士が直接やり取りしなくて済むメリットがあります。
この記事では、民事調停手続きの概要や流れ、メリット・デメリットなどについて京都の弁護士が解説します。
争いごとに巻き込まれて悩んでいる方、訴訟は避けたいという方などは、是非参考にしてみてください。
1 民事調停とは
民事調停とは、裁判所が当事者の間に入って話し合いを進め、合意によってトラブルを解決するための手続きです。
もめごとが発生したとき、自分たちだけで話し合っても解決できないケースが少なくありません。
そんなとき、民事調停を利用すれば裁判官と調停委員が間に入って話し合いを仲介してくれるので、合意が成立しやすくなります。
民事調停において当事者の間に入る組織を「調停委員会」といいます。
調停委員会は、調停委員と裁判官から成り立っています。
民間でもめごとが発生したときには、民事調停を申し立てると解決につながるケースがよくあるので、状況に応じて利用するとよいでしょう。
2 民事調停で取り扱われる主なトラブル
民事調停は、民事に関する紛争を取り扱います。
民事調停で取り扱われることの多いのは、以下のようなトラブルです。
- 貸金や立替金などの金銭トラブル
- 給料や報酬などが不払いになっている場合のトラブル
- 家賃や地代の不払い問題、賃料改定のトラブル
- 敷金や保証金の返還などのトラブル
- 土地や建物の登記に関するトラブル
- クレジットやローンのトラブル
- 売買代金が不払いなっているなどのトラブル
- 請負代金や修理代金が不払いになっているなどのトラブル
- 建物や部屋の明渡しに関するトラブル
- 交通事故の損害賠償に関するトラブル
- 近隣トラブル
上記以外でも、私人同士の法律トラブルであれば、多くは民事調停で取り扱ってもらえます。
ただし、離婚や養育費、婚姻費用、相続などの家事に関するトラブルは家庭裁判所の家事調停で取り扱われます。
3 民事調停の申立方法
民事調停を申し立てる際には、「相手の所在地を管轄する簡易裁判所」へ申立をします。
相手が遠方の場合、裁判所も遠くなってしまう可能性があるので注意しましょう。
調停を申し立てる際には、申立書を用意して提出しなければなりません。
申立書の書式はこちらの裁判所のサイトにまとまっているので、参照して作成するとよいでしょう。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_minzityoutei/index.html
弁護士に申立書の作成や調停の代理を任せることも可能です。
民事調停にかかる費用
民事調停には費用がかかります。
申立の際に収入印紙を納めなければなりませんし、郵便切手も必要です。
ただし、民事調停の印紙代は訴訟より低額です。
郵便切手代も訴訟より低いケースが多いでしょう。
民事調停は訴訟よりコストが低くなるメリットがあるといえます。
4 民事調停の流れ
民事調停の流れを示します。
(1)申立て
まずは、申立人が調停を申し立てるところから始まります。
相手方の住所地を管轄する簡易裁判所へ、調停申立書と印紙、郵券を提出しましょう。
(2)第1回期日
申立を行うと、調停期日が決められ、調停の申立人と相手方が裁判所に呼び出されます。
調停期日においては、調停委員会が双方の言い分を聴いて話し合いが進められ、当事者双方の合意によってトラブルを解決することを目指します。
また、調停の手続きは、法廷ではなく、裁判所内の調停室において行われ、公開されることはありません。
(3)第2回目以降の期日
1回では解決できない場合、2回目以降の期日を入れて話し合いを続行します。
調停の期日は1か月に1回程度の頻度で開かれます。
調停は平日の日中に行われるので、仕事をしている方の場合には休んで出席しなければなりません。
(4)調停成立
合意ができれば、調停が成立します。
合意した内容をまとめた調停調書ができあがり、当事者双方へと交付されます。
調停調書は判決と同じ効力を持つため、相手が約束を守らないときには強制執行を申し立てることができます。
5 民事調停のメリット
- 話し合いにより柔軟な解決ができる
- 調停案を出してもらえるケースもある
- 調停調書に判決と同じ効力がある
- 相手との力の差、立場の違いがあっても妥当な解決を目指しやすい
- 訴訟より手数料が安い
- 調停は非公開であるので、プライバシーが守られる
6 民事調停のデメリット
- 合意ができないと不成立になってしまう
- 本人が対応する場合、平日の日中に裁判所へ通わねばならない
- 解決までに時間がかかる場合がある
- 調停委員がどちらか一方に肩入れしてくれるわけではない(中立的な立場)
7 弁護士に依頼すると解決できるケースも
民事調停には、デメリットや限界もあります。
当事者同士が合意できなければ成立しませんし、時間もかかってしまうこともあります。
平日の日中に裁判所へ行かねばならないのも負担になるでしょう。
弁護士に依頼すれば、当事者が自分たちで話し合う必要はありません。
弁護士が話を進めるので、平日の昼間に仕事を休むことが難しい場合にも、対応を任せることができます。
また、弁護士に依頼すれば、最適と考えられる解決方法について、ともに考えることができます。
お悩みごとは、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。
成年年齢の引き下げについて
2022年4月、民法が改正されて成年年齢が引き下げられました。
これによって、それまでは1人で契約できなかった18歳や19歳の方が1人で契約できるようになるなど、さまざまな変化がもたらされます。
もっとも、飲酒や喫煙、公営ギャンブルの利用などこれまでと同様に、20歳にならないとできないこともあります。
この記事では、成年年齢が引き下げられたことによって変わることと変わらないことを京都の弁護士がお伝えします。
1 成年年齢引き下げとは
成年年齢の引き下げとは、民法が改正され、20歳とされてきた成年になる年齢が18歳へと引き下げられたことです。
改正民法は、2022年4月1日に施行されており、すでに成年年齢引き下げの規定が有効になっています。
民法第4条
年齢18歳をもって、成年とする
成年年齢が18歳に引き下げられたことにより、これまで未成年とされていた18歳や19歳の人の取り扱いが変わります。
以下では18歳、19歳の人の法律上の取り扱いについて、変わることと変わらないことに分けてそれぞれ見ていきましょう。
2 18歳、19歳が1人でできるようになること
改正民法施行後、18歳や19歳の人が1人でできるようになるのは、以下のような事項です。
(1)親の同意がなくても1人で契約できる
親の同意がなくても、1人で有効な契約ができるようになります。
(2)性別の取扱いの変更審判
性同一性障害をもつ方が性別の取り扱いを変更してもらえるように申し立てる「性別の取り扱いの変更審判」も18歳、19歳の人が単独で申し立てられるようになりました。
(3)国籍の選択
これまで、重国籍の方が自分の国籍を選べる時期は、重国籍になった時点で20歳未満の方は22歳になるまで、20歳以上の方は2年以内に国籍を選択することとされていました。
国籍選択の年齢も2歳引き下げられています。
(4)期限が10年間パスポートの取得
パスポートは5年と10年の有効期間を選択することができますが、未成年者は5年間有効なパスポートしか取得できません。
18歳、19歳の方は、10年間有効なパスポートを取得できるようになりました。
(5)国家資格を取る
司法書士や公認会計士、薬剤師などの国家資格も取得できるようになりました。
3 20歳にならないとできないこと
以下のようなことは、改正法施行後も20歳にならないとできません。
(1)飲酒、喫煙
飲酒や喫煙については、これまでと同様に20歳にならないと許されません。
(2)公営ギャンブル
競馬や競輪、競艇やオートレースなどの公営ギャンブルも、20歳にならないと利用できません。
(3)養親になる
養子縁組をして養親になれる年齢も20歳のまま維持されています。
4 結婚について
民法改正のタイミングに合わせて、結婚できる年齢が変更されました。
これまで、女性は16歳で結婚できることになっていましたが、改正法の施行後は男女ともに18歳にならないと結婚できないことになっています。
5 少年法との関係
成年年齢引き下げとともに問題になったのは、少年法との関係です。
少年法は20歳未満の人に成年と同じ刑事手続を適用せず、少年(従来の未成年)を保護してきました。
成年年齢が引き下げられると、18歳や19歳の人については20歳以上の大人と同じ刑事手続で処断されてしまうのかが議論されてきたのです。
結論的に、18歳や19歳の人でも少年法の適用を受け、これまでとおり家庭裁判所での審判によって処分を決められることになりました。
つまり、原則として、18歳や19歳であっても少年法の適用を受けるということです。
しかし、18歳、19歳の人については「特定少年」とされて逆送事件になる対象犯罪が広められています。
また、特定少年が正式に起訴されると、実名報道が認められるようになりました(17歳以下の少年の場合には逆送されて起訴されても実名報道されません)。
このように、少年法との関係でいうと、18歳、19歳の人については保護が弱まったといえるでしょう。
6 養育費との関係
次に問題になったのが、養育費との関係です。
従来、養育費は「子どもが未成年の期間」に払われるのが原則とされてきました。つまり子どもが20歳になるまでは原則として養育費を請求できたのです。
ところが、成年年齢が引き下げられると、養育費を請求できるのが18歳になる月までになってしまう可能性があります。
この点については従来とおり、改正法が施行されても子どもが20歳になるまでは養育費が払われるべき、との考え方が大勢です。
当事者同士で決める場合はもちろん、裁判所で養育費を決める場合にも基本的に子どもが20歳になるまでは養育費を請求できるものと考えて良いでしょう。
7 相続税との関係
これまで20歳になるまで適用できた未成年者控除は、18歳になるまでしか適用できなくなります。
一方で、相続時精算課税制度については18歳から利用できるように変更されました。
成年年齢引き下げによって18歳、19歳の人が1人でできることが増えましたが、その分責任も重くなり、注意深く行動することが必要となるでしょう。
成年年齢引き下げに関連して、ご不明点があったり、お困りになったりした場合には、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。
養育費が増減額される場合を弁護士が解説
一度養育費の金額を取り決めたとしても、さまざまな事情によって金額が変わる可能性があります。
たとえば、支払義務者の収入が上がると養育費は上がりますし、支払義務者の収入が下がると養育費の金額は下がります。
この記事では、養育費が増額されるケースと減額されるケースについて、京都の弁護士が解説します。養育費の金額を変更したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
1 養育費の金額は決め直しができる
離婚時などに養育費の金額を定めても、ずっとその金額にしなければならないというわけではありません。
さまざまな状況の変化により、適切な養育費の金額が変動する可能性があるからです。
養育費は、子どもが20歳になるまで払われるのが一般的ですが、その間であれば親同士が話し合っていつでも決め直すことができます。
「養育費の金額は固定ではない」という点を、まずは押さえておきましょう。
2 養育費が増額される場合
では、どういったケースで養育費の金額が増額・減額されるのでしょうか?
以下では、まず、養育費が増額されるケースをみてみましょう。
(1)支払義務者の収入が上がった
養育費の支払義務者の収入が上がった場合です。
養育費の金額は、支払義務者と受け取る側の収入のバランスによって決まります。
支払義務者の収入が高ければ高いほど養育費の金額は上がり、低くなると養育費の金額も下がります。
そのため、いったんは養育費の金額を取り決めても、その後に支払義務者の収入が上がると養育費の金額も上がる可能性があります。
たとえば、算定表によると、10歳の子どもが1人いる場合、義務者の父親の年収が300万円(給与所得)、権利者の母親の年収が100万円(給与所得)なら養育費の金額は月額2万円から4万円程度が妥当とされます。
このケースで、父親の年収が500万円に上がると、養育費の金額は月額4万円から6万円程度に増額されます。
(2)子どもが15歳以上になった
子どもが15歳以上になった場合にも、養育費の金額が増額される可能性があります。
子どもの年齢が上がると、学費や食費など、さまざまなお金がかかるようになるからです。
たとえば、義務者の父親の年収が500万円(給与所得)で権利者の母親の年収が100万円(給与所得)の場合、子どもが1人で年齢が14歳以下なら、養育費の金額は月額4万円から6万円程度です。
この場合、子どもが15歳以上になると、養育費の金額は月額6万円から8万円程度に上がります。
(3)受け取る側の収入が下がった
養育費の金額は、受け取る側の収入によっても変わってきます。
受け取る側の収入が低いほど、養育費の金額は上がる仕組みになっているからです。
離婚後、受け取る側の収入が低下すると、養育費が増額される可能性があります。
たとえば、10歳の子どもが1人いて、義務者の父親の収入が400万円(給与所得)、権利者の母親の収入が200万円(給与所得)だったとしましょう。この場合、算定表によると、養育費の金額は月額2万円から4万円です。
ところが、母親の年収が100万円に下がると養育費の金額は月額4万円から6万円に上がります。
3 養育費が減額される場合
養育費の金額は減額されるケースもあります。どういった場合に減額されるかについて、理解しておきましょう。
(1)支払義務者の収入が減った
支払義務者の収入が大幅に減った場合です。
支払義務者の収入が下がると、支払える養育費の金額が下がるので、適切とされる金額も減ります。
たとえば、5歳の子どもが1人いて、義務者の父親の年収が600万円(給与所得)、権利者の母親の年収が100万円(給与所得)の場合、養育費の金額は月額6万円から8万円程度が適切とされます。
このケースで、父親の年収が300万円に下がった場合、適切な養育費の金額は2万円から4万円程度に減額される可能性があります。
(2)受け取る側の収入が大幅に増えた
養育費を受け取る側の収入が大幅に増えた場合です。
この場合、父母の収入のバランスが変わるので養育費の金額に影響が及びます。
たとえば、3歳の子どもが1人いて、義務者の父親の年収が500万円(給与所得)、権利者の母親の年収が100万円(給与所得)だった場合、養育費の金額は月額4万円から6万円程度です。
母親の年収が400万円に上がると養育費の金額が月額2万円から4万円程度に減額される可能性があります。
(3)支払義務者が再婚して扶養義務者が増えた
養育費の支払義務者が再婚して扶養義務者が増えると、養育費の金額が下がる可能性があります。
再婚して子どもが誕生するなどして、扶養義務者が増えた場合などが想定されます。
(4)受け取る側が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組した
養育費を受け取る側が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組した場合には、再婚相手が子どもの第一次的な扶養義務者となって、支払義務者の扶養義務が二次的なものとなるために、養育費の減額の可能性があります。
4 養育費を増減額する方法
養育費を増額・減額するには、まずは当事者間で話し合いましょう。
増減額を希望する側が相手に連絡を入れて、養育費の金額を決め直すことを提案します。
合意ができた場合には、新しい条件をまとめた合意書を作成すべきです。
話し合いでの解決が難しい場合には、家庭裁判所で調停を利用しましょう。
増額を求めるなら養育費増額調停、減額を求めるなら養育費減額調停を申し立てます。
調停でも合意できない場合、審判によって裁判官が妥当な養育費の金額を定めてくれます。
養育費の増減額を巡っては、当事者の意見が合わずトラブルになるケースが少なくありません。変更後の妥当な養育費の金額がわからない方も多いでしょう。
養育費の関係でわからないことがあれば、お気軽に弁護士までご相談ください。
養育費の算定基準について
「養育費の約束をする場合、どのような基準で金額を決めればよいのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
養育費の金額は基本的に当事者同士が自由に定められますが、一定の算定基準も用意されています。
養育費の取り決めをする場合、裁判所の作成した算定基準を利用すると公平なので、両者が納得しやすいでしょう。
この記事では、養育費の算定基準を京都の弁護士が解説します。
これから養育費の約束をする方、すでに決めた養育費の金額を変更したい方はぜひ参考にしてみてください。
1 養育費に含まれる費用
(1)そもそも養育費とは
養育費とは、子どもと離れて暮らす親が子どもの養育のために支払う費用です。
離れて暮らしていても、親は子どもに対して責任があるので、養育費を負担しなければなりません。
また、養育費の支払義務は「生活保持義務」といって高いレベルの義務です。
支払義務者は、子どもに自分と同等の生活をさせなければならないので、「余裕のあるときに支払えば良い」というものではありません。
その意味で、親に借金があったり家賃・住宅ローンの負担があったりしても養育費を減額する根拠にはなりません。
(2)養育費に含まれる費用は?
養育費には、以下のような費用が含まれます。
- 食費
- 被服費
- 居住にかかる費用
- 日用品費
- 学費、教育費
- 医療費
- 交通費
- 遊興費
ただし、実際に養育費を支払う場合、上記のような費用を個別に計算してやり取りするのは煩雑です。
そこで、養育費を払う場合には、「月額固定」とするケースが多数となっています。たとえば、「毎月6万円」「毎月10万円」などの固定した金額にするのです。
ボーナス時に増額するボーナス払いを取り入れるケースもあります。
養育費を払ってもらうために、上記のような費用について、いちいちレシートを集めて支払い義務者に示す必要はありません。
2 養育費の金額は当事者が自由に決められる
それでは、養育費の金額はどのようにして定めるのでしょうか?
養育費の金額は、基本的に当事者(親同士)が自由に設定できます。父母が納得すればいくらにしてもかまいません。
3 養育費の算定基準とは
ただし、いくらにしてもかまわないとすると、話し合いをしても合意しにくくなるでしょう。
通常、養育費を受け取る側はなるべく高額な支払いを望みますし、支払う側はなるべく低く抑えたいと考えるからです。
そこで、養育費の金額については、一定の算定基準がもうけられています。
その算定基準では、養育費を支払う人の年収が高いほど養育費の金額が上がり、支払いを受ける側の年収が高いほど養育費の金額が下がります。
子どもの人数が増えると費用がかさむので、養育費の金額が上がり、子どもが15歳以上になると学費や食費などもかかるのでやはり金額が上がります。
具体的な金額(算定基準)についてはこちらの「養育費算定表」にまとまっているので、利用しましょう。
4 養育費算定表の見方
養育費算定表を見る方法をお伝えします。
(1)お互いの年収を確認する
まず、父母のお互いの年収を確認しましょう。
会社員や公務員などの給与所得者の場合には源泉徴収票、自営業者なら確定申告書を用意して確認します。
(2)適用する表を確認する
次に、養育費算定表の中で具体的にあてはめる表を確認します。
たとえば、子どもが2人で上の子が16歳、下の子が13歳の場合「表4 養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)」を選びます。
間違った表を参照すると養育費を正確に算定できないので、注意して正しいものを選びましょう。
(3)年収を表にあてはめる
次に、表に父母それぞれの年収を当てはめます。
縦のラインは養育費を支払う側、横のラインは養育費の支払いを受ける側の年収をあらわします。
(4)縦と横がぶつかる金額帯が適正な養育費になる
両者の年収を当てはめたら、支払い義務者の年収の場所から右横へ線を引き、支払いを受ける側の年収の場所から上方向へ線を引きましょう。
ぶつかる場所が適正な養育費の金額帯となります。
その金額帯の中で、お互いが納得できる金額を定めましょう。
(5)養育費算定の具体例
子どもが1人(3歳)、支払い義務者である父親の年収が600万円、支払いを受ける権利者である母親の年収が200万円で、ともに給与所得者のケース。
この場合「表1 養育費子1人表(子0~14歳)を使います。
この表に父母それぞれの収入を当てはめると、適切な養育費の金額は8万円から10万円程度になります。
したがって、このケースでは養育費の金額を毎月8万円から10万円とすると話がまとまりやすいでしょう。
5 養育費を取り決める手順
養育費を取り決める際には、まずは相手と話し合うのが一般的です。
合意ができたら養育費支払いについての合意書を作成しましょう。
将来の不払いを防ぐため、合意書は公正証書にしておくようおすすめします。
自分たちではどうしても決められない場合には、家庭裁判所で養育費請求調停を利用しましょう。
京都の益川総合法律事務所では、離婚案件にも力を入れて取り組んでいます。
養育費の金額交渉や離婚調停の代理人も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
メタバースと法律(4)~メタバースをビジネスで活用する場合の注意点~
近年、技術発展にともなって注目を浴びているメタバース。
メタバースをビジネスに活用する企業も増加しています。
ただし、メタバースをビジネスで利用する場合にはいくつか注意点もあります。
今回は、メタバースをビジネス活用する際のメリット・デメリットや注意点を、京都の弁護士がお知らせしますので、ぜひ参考にしてみてください。
1 メタバースの将来性
メタバースの市場は、急激に成長を続けています。
Bloomberg Intelligenceなどによる分析結果では、2020年のメタバース市場は5,000億ドルですが、2024年には8,000億ドルまで成長する予測が立てられています。
2022年現在においては、ゲームやイベントなどを中心にメタバースが使われていますが、今後は観光や教育などの他分野へ拡大していくだろうとも予測されているのです。
メタバース市場が大きくなるにつれて、参入する企業も増えると考えられます。
メタバース空間で営業活動を行うことには、大きなチャンスがあるといえるでしょう。
2 メタバースのビジネスへの活用方法
メタバースをビジネスに活用する際には、以下のような方法があります。
(1)バーチャルイベント
アバターを使ってメタバース上でイベントを開催する方法です。
たとえば、展示会やセミナーなどを行えます。
バーチャルのイベントであれば、全世界から簡単に参加できます。
新型コロナウイルスなどの感染症が流行していても、問題になりません。
(2)バーチャル会議
アバターを介して参加者が会議室に集まり、バーチャル会議を行う方法です。
身振り手振りで気持ちを伝えられるので、オンライン会議よりもリアルに近いコミュニケーションをとれます。
(3)接客に活用
メタバース空間上で、さまざまなコンテンツやサービスを販売する方法です。
アバター同士で対面してコミュニケーションをとれるので、インターネット通信販売などよりリアルに近いやり取りができます。
3 ビジネスでメタバースを活用するメリット
ビジネスにメタバースを活用すると、以下のようなメリットがあります。
(1)新たなビジネスチャンスをつかめる
メタバースを利用すると、新たなビジネスチャンスをつかめる大きな可能性があります。
たとえば、現在においてもメタバース上でさまざまなコンテンツやゲームのアイテムなどを販売できますし、今後は観光や医療、教育などの分野にも広がりを見せていくと予測されています。
そうなると、ますます大きなチャンスを得られる可能性が高まるでしょう。
取引額も高額で、新規参入すると大きな利益を得られる可能性があります。
(2)コストがかからず生産性が向上する
メタバースは仮想空間であり、距離やエリアによる制約を受けません。全世界のどこからでも会議やイベントなどに参加できますし、買い物などもできます。
また、社内の関係者間で資料やデータを共有したり、顧客に資料を開示したりするのも簡単です。
さらに、メタバースのアバターを介してコミュニケーションをとれば、ZOOMなどのオンライン会議よりもリアルに感情や状況を伝えやすいメリットもあります。
このように、メタバースを活用すると場所に関係なくリアルなコミュニケーションをとることができてビジネスにおける生産性が向上するメリットがあるといえます。
4 ビジネスでメタバースを利用する際の注意点
ビジネスでメタバースを活用する際には以下のようなデメリットや注意点もあります。
(1)導入コストが発生する
メタバースを導入するには一定のコストが発生します。
たとえば、メタバースに対応するデバイスが必要ですし、VRゴーグルも購入しなければなりません。
自社でメタバース上のビジネスを展開するとき、スキームによってはあらたに資格や許認可を受けなければならない可能性があります。
こうした導入コストが当初にかかるのはデメリットといえるでしょう。
(2)コミュニケーションが希薄化する
メタバースでは、アバターを介して比較的リアルにコミュニケーションできますが、やはり実際に会ってコミュニケーションをとるのとは違います。
メタバースに頼りすぎてしまうと、リアルなコミュニケーションが希薄化する可能性があると懸念されています。
便利であっても依存しすぎず、リアルなコミュニケーションも交えながら、適度な距離を保ってメタバースを活用しましょう。
(3)デバイスやプラットフォームは開発段階
メタバースのデバイスやプラットフォームは、まだまだ開発段階で、完成したものとはいえません。
たとえば、現在普及しているPCやスマートフォンなどと比較すると、メタバースのVRデバイスは「重い」「画質が荒い」と感じる方も多数います。
現在、さまざまな企業がメタバース上のプラットフォーマーとして参入していますが、まだまだ開発途上です。
(4)法整備が不十分
メタバースの世界では法整備も不十分です。
今は既存の法律で対応していますが、それだけでは不十分な部分もあるために、今後はメタバースの特性に応じた法規制が行われていくでしょう。
法律がきちんと整備されるまでは、トラブルが発生する可能性も高いですし、法律が整備された場合には、新法や改正法を追いかけていく必要があります。
京都の益川総合法律事務所では企業の法的支援に積極的に取り組んでいます。
関心のある企業の方はぜひとも一度、ご相談ください。
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