コラム
企業法務サイトにコラムを掲載しました4(顧問弁護士がいる会社は、なぜ紛争が拡大しづらいのか?)
企業法務サイトに、下記の内容のコラムを掲載しました。
■コラムの内容
顧問弁護士がいる会社は、なぜ紛争が拡大しづらいのか?
顧問弁護士の業務の中には、契約書の作成やリーガルチェック、就業規則や入社時誓約書などの社内規程の整備といった、予防法務が含まれます。
また、紛争の火種が発生した際に、顧問弁護士がいる企業では、速やかに、顧問弁護士に相談して適切に初動対応を取ることができます。
顧問弁護士がいない企業では、弁護士に相談しようとしても、ハードルが高く、紛争が拡大した後になってはじめて弁護士に相談されているケースも多いです。
本コラムでは、この他にも、顧問弁護士がいる会社で、紛争が拡大しづらい理由について、具体的に解説しています。
顧問弁護士を検討されている企業様は、是非参考にされて下さい。
企業法務サイトにコラムを掲載しました3(なぜ中小企業にこそ顧問弁護士が必要なのか?)
企業法務サイトに、下記の内容のコラムを掲載しました。
■コラムの内容
なぜ中小企業にこそ顧問弁護士が必要なのか?
中小企業の多くは、大企業と異なり、法務部を有していません。
その結果、中小企業では、経営者の方が、契約書を確認したり、トラブルが発生した際に対応策を考えていることも多いです。
しかし、経営者の方は、経営のプロであって、法律のプロではなく、法的な判断を誤ってしまうことも多いです。
特に、自社のこととなった場合に、経営者の方も当事者になりますから、客観的な視点で冷静に判断するのが難しいといえます。
本コラムでは、中小企業に顧問弁護士が必要な理由のみでなく、顧問弁護士と契約することで得られる具体的なメリットや、顧問弁護士を選ぶときのポイントについても、解説しています。
顧問弁護士を導入するか迷っておられる企業様は、是非参考にされて下さい。
京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、東証プライム企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、これまで数多くの問題を解決してきました。
顧問弁護士を検討されている企業様は、お気軽にご相談ください。
https://houmu.kyoto-masukawalaw.com/%e3%81%aa%e3%81%9c%e4%b8%ad%e5%b0%8f%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ab%e3%81%93%e3%81%9d%e9%a1%a7%e5%95%8f%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e3%81%8c%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%81%8b%ef%bc%9f/
企業法務サイトにコラムを掲載しました2(会社が弁護士に依頼すべきタイミング)
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■コラムの内容
会社が弁護士に依頼すべきタイミング
顧問弁護士がいない会社では、弁護士に依頼するタイミングが遅くなりがちですが、その結果、自社に不利益が生じている企業様も多く存在します。
そのため、本コラムでは、一体、企業は弁護士にいつ依頼すれば良いのかという問題について、現実的な観点も踏まえて、解説しています。
弁護士にいつ依頼すればよいのかと、迷われている企業様は、是非参考にされて下さい。
京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、東証プライム企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、これまで数多くの紛争案件を解決してきました。
紛争案件でお困りの企業様は、お気軽にご相談頂ければと思います。
企業法務サイトにコラムを掲載しました1(自社従業員による業務上横領が起きたときの会社の対応)
企業法務サイトに、下記の内容のコラムを掲載しました。
■コラムの内容
従業員による業務上横領が起きたときの対応について、会社側の弁護士が解説
自社従業員による業務上横領が疑われる場合、企業が適切に対応しないと、自社に大きな損害が発生する可能性があります。
コラムの中では、会社が取るべき対応について、実際の流れを踏まえて、解説していますので、是非参考にされて下さい。
当事務所では、この種の案件について、多数の対応経験を有しておりますので、お困りの企業様は、お気軽にご相談頂ければと思います。
(コラムの内容は、業務上横領の事案だけでなく、自社従業員から会社に対する窃盗や詐欺事案にも通じる内容にもなっています。)
無断欠勤を理由に解雇できる?注意点や対処法を弁護士が解説
従業員の無断欠勤が続いた場合、その従業員を解雇しようとお考えになる経営者の方も少なくありません。
しかし、無断欠勤を理由に、従業員を解雇したとしても、不当解雇であるとして、企業側が敗訴する事例もあります。
そこで、今回は、無断欠勤を理由に従業員を解雇できる相場や、無断欠勤への対処法などについて、弁護士が解説いたします。
1.いきなりの解雇は危険
無断欠勤を理由に、いきなり従業員の解雇を行うのは、会社にとって、極めて危険な行為です。
なぜなら、労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされているからです。
裁判例上も、無断欠勤を理由に従業員を解雇したものの、「不当解雇」として、企業側が敗訴している事例は多数あります。
「不当解雇」として、企業側が敗訴した場合には、企業がその従業員に対して、解雇日まで遡って賃金を支払う必要があります。仮に、企業と労働者が徹底的に争い、労働訴訟において企業側の敗訴判決が出されるまでに、解雇をしてから2~3年経過している場合には、企業は、2~3年分の賃金を遡って支払わなければなりません。
そのため、無断欠勤を理由に、いきなり解雇をするのは、お勧めできるものではありません。
2.無断欠勤を理由に解雇が認められる相場
裁判例上、無断欠勤を理由に解雇が認められる相場は、従業員が2週間以上、正当な理由なく無断欠勤をして、出社命令にも応じない場合になります。
但し、これはあくまでも目安にすぎず、2週間より期間が短くても解雇が有効になることもありますし、2週間を超えていても解雇が無効にされることもあります。
なぜなら、実際上は、無断欠勤の期間のみならず、無断欠勤の理由や、その従業員のこれまでの勤務態度、無断欠勤により会社に生じた影響等を総合的に考慮して、解雇が有効であるかを判断していくためです。
そのため、「2週間」というのは、あくまで参考程度にされてください。
3.無断欠勤への対処法
3―1 欠勤理由の確認
まずは、無断欠勤をした従業員に対して、欠勤理由を確認してください。
仮に、体調不良など、正当な理由がある場合には、解雇は視野に入らない形になります。
但し、体調不良の裏付けなどを求める場合には、診断書等の提出を求めることになります。
3―2 出社命令の発動
従業員が正当な理由がなく無断欠勤を続ける場合には、出社命令を発動することになります。
この出社命令を行っていないと、後に解雇をしたとしても、不当解雇であると判断される可能性が極めて高くなるので、注意が必要です。
電話で出社命令を行っても、証拠として機能しないので、メールやLINE、住所宛の書面の送付(特定記録を付けて)など、証拠として残る形で出社命令を行うことが重要です。
将来的な解雇を視野に入れるのであれば、この出社命令は、一度ではなく、複数回行っておくことが重要です。
3―3 従業員との連絡が取れない場合
無断欠勤が続く場合、そもそも従業員との連絡が取れないことも多いです。
仮に将来的に解雇を視野に入れるのであれば、そのような場合にも、欠勤理由の確認や出社命令を発動しておく必要があります。
従業員との連絡が取れない場合にも、電話の不在着信としてのみ残すのではなく、メールやLINE、住所宛の書面の送付(特定記録を付けて)など、証拠として残る形で欠勤理由の確認や出社命令を行うことが重要です。
また、上記の通り、将来的な解雇を視野に入れるのであれば、出社命令は、一度ではなく、複数回行っておくことが重要になります。
4.解雇の前にまずは自主退職を促す
無断欠勤が続いた場合でも、いきなり解雇をするのではなく、まずは自主退職を促した方がよいです。
なぜなら、解雇に比べて自主退職の方が、後の紛争リスクを格段に下げられるためです。
これは、従業員との連絡が取れない場合も同じで、書面などで自主退職を促せば、従業員側から退職届を送付してくれることもあります。
5.解雇の前に弁護士に相談を
無断欠勤を理由に解雇する前に、弁護士に相談することが大切です。
なぜなら、無断欠勤の原因や就業規則の規定のされ方などによっては、企業側がそもそも、その従業員を解雇できないケースもあり、弁護士にその確認を取る方がよいためです。
また、解雇をするためには、適切な手続きを踏む必要があり、この手続きを踏んでいないと、後に不当解雇と判断されてしまう可能性が高くなります。
後に不当解雇と判断された場合には、上記の通り、解雇日までの賃金を遡って支払う必要が生じ、企業にとって、とても大きな負担になります。
このような事態を生じさせないためにも、解雇前に、弁護士に相談するのが重要になってくるのです。
6.最後に
今回は、無断欠勤と解雇について、企業側で労働問題や紛争案件に注力する弁護士が解説しました。
京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
従業員が無断欠勤をして、お困りの企業経営者の方やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。
解雇の撤回や取消しとは?企業側の弁護士が解説
会社が従業員を解雇した後、従業員から「不当解雇」であると主張された場合、会社が「解雇の撤回」をすることがあります。
これは、解雇の撤回を行う方が、会社にとってメリットが大きいと判断するためです。
そこで、今回は、解雇の撤回や取消しについて、企業側で紛争案件に注力する弁護士が解説いたします。
1.解雇の撤回(取消し)とは
解雇の撤回(取消し)とは、企業が一度行った解雇を撤回して、その従業員に復職を求めることを言います。
この解雇の撤回は、主として、従業員から不当解雇である旨の主張を受けた際に行うものです。
2.なぜ解雇の撤回を行うのか
解雇の有効性が争われている事案で、弁護士が企業の代理人に就任した場合、解雇の撤回を行うこともあります。
これは、その企業にとって、解雇を撤回した方が、メリットが大きいためです。
以下では、なぜ解雇の撤回を行うのかについて、解説します。
2―1 バックペイを回避するため
解雇の撤回を行う一番大きな理由は、いわゆるバックペイを回避するためです。
バックペイとは、解雇が無効と判断された場合に、会社が解雇日まで遡って支払う必要のある賃金をいいます。
会社が解雇について従業員と徹底的に争う場合、「示談交渉→労働審判→労働訴訟」と移行するケースが多いです。そして、労働訴訟において判決が出されるまでに、すでに解雇をしてから2~3年経過しているケースもあります。
仮に、このようなケースで企業が労働訴訟で敗訴した場合、企業は、2~3年分の賃金を遡って支払わなければなりません。
また、解雇事案においては、類型的に企業側に不利な判断をされやすい傾向にあります。
このようなことを踏まえて、バックペイを回避するために、会社が解雇撤回を行うことになります。
2―2 従業員側が復職を拒否することもあるため
2つ目の理由は、従業員側が復職を拒否することもあるためです。
従業員側が不当解雇(解雇無効)を主張する場合、法的にはその従業員は復職を求めていることになります。
しかし、実際上、復職は望まないけれども、バックペイを取得するために、形式上、従業員側が不当解雇を主張していることもあります。
このような場合に、解雇撤回を行うと、従業員側が復職を拒否して、自主的に退職することもあります。
2―3 慰謝料請求を否定する一事情になるため
3つ目の理由が、従業員からの慰謝料請求を否定する一事情になるためです。
従業員側が不当解雇を主張している場合、その従業員は会社に対して、不当解雇を理由とする慰謝料請求も行うことが多いです。
このような場合、解雇撤回を行うことは、慰謝料請求を否定する方向の一事情になりますし、場合によっては、従業員側からの慰謝料請求自体も取りやめになることもあります。
3.解雇撤回の方法
3―1 解雇を撤回する旨の書面の送付
会社から当該従業員に対して、解雇を撤回する旨の書面を送付します。
その内容としては、①解雇を撤回する旨、②復職を求める日時の指定、③復職後の業務内容や賃金などの労働条件などを記載します。
裁判例の傾向からして、②の復職を求める日については、相手方が当該書面を受領してから1週間程度は空けておいた方が無難です。
また、③の復職後の労働条件については、基本的には、解雇前と同様の条件になるでしょう。
この書面については、後に送付の有無や内容が争いにならないように、内容証明郵便で送付するようにして下さい。
■解雇の撤回には、相手方の同意が必要
解雇の撤回を行うためには、当該従業員の同意が必要になります。
これは、民法540条2項が、解除の意思表示は、撤回することができないと規定しているためです。
但し、従業員側から不当解雇(解雇無効)が主張されている事案では、従業員側も解雇の撤回を求めているため、黙示的に解雇の撤回に同意していると判断できるケースがほとんどです。
そのため、実際上は、この点が、問題になることはあまり多くありません。
3―2 社会保険の処理
企業が従業員を解雇した場合、その時点で、社会保険について資格喪失の手続きを行っているはずです。
そのため、解雇を撤回する場合には、資格喪失の訂正(取消)を行う必要があります。
3―3 賃金について
解雇の撤回をした場合、解雇日から撤回日までの賃金を処理する必要があります。
解雇を撤回する以上、基本的には、解雇日から撤回日までの賃金について、企業が負担するとの処理をせざるを得ないでしょう。
4.従業員が復職を拒否した場合
もし、解雇を撤回して、従業員に復職を求めたにもかかわらず、その従業員が復職を拒否した場合には、どのような方法を取ればよいでしょうか。
4ー1 業務命令の発令
まずは、当該従業員に対して、会社に出社するように業務命令を発令することになります。この業務命令についても、書面で行い、内容証明郵便の形で送付するようにしてください。
4ー2 再度の解雇の検討
上記業務命令を発令しても、従業員が出社しなかった場合、再度の解雇を検討することになります。
一般的には、2週間以上、無断欠勤が続いた場合には、解雇を検討することになりますが、再度の解雇の場合には、従前の経緯もあるため、1か月程度は様子を見た方が無難だと考えています。
4―3 解雇撤回後の賃金
解雇を撤回したものの、当該従業員が出社を拒否している場合には、原則として、解雇撤回後の従業員の賃金は発生しないことになります。
厳密には、この辺りも含めて、従業員との間で合意ができないかを模索することになります。
5.最後に
今回は、解雇の撤回や取消しについて、企業側で労働問題や紛争案件に注力する弁護士が解説しました。
京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
従業員から不当解雇と主張されて、お困りの企業経営者の方やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。
弁護士から書面(内容証明郵便)が届いた企業・経営者の方へ
会社経営をしていると、突然、相手方弁護士から書面が届くこともあります。
多くの経営者の方は、突然このような書面が届くと、驚かれるでしょう。
そこで、今回は、弁護士から書面(内容証明郵便)が届いた場合の対処法などについて、企業側で紛争案件に注力する弁護士が解説いたします。
1.内容証明郵便の場合には注意が必要
弁護士からの書面の表題(タイトル)には、「通知書」・「ご連絡」・「請求書」・「催告書」などの記載がされています。
そして、相手方弁護士からの書面の送付に際して、内容証明郵便が利用されている場合には、慎重に対応することをお勧めします。
なぜなら、弁護士が内容証明郵便を利用する時は、示談交渉が決裂した際の、訴訟提起までを視野に入れていることがほとんどだからです。
内容証明とは、いつ、どんな内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、日本郵便が証明するサービスです。多くの弁護士は、内容証明郵便を利用した書面については、訴訟提起の際に証拠として提出します。
ちなみに、書面の末尾に、下記の記載があれば、内容証明郵便になります。
■内容証明郵便の記載
「この郵便物は令和○年○月○日第○号書留内容証明郵便物として差し出されたことを証明します。日本郵便株式会社」
2.相手方弁護士からの書面への対処法
まずは、相手方弁護士からの書面の内容を確認する必要があります。
そして、その書面の中に、事実に反する記載がないかを確認していきます。
もし、事実に反する記載がある場合には、そのことを裏付ける資料(証拠)がないかを確認していきます。
その後、相手方弁護士への回答書面を作成していきます。
多くの場合、相手方弁護士からの書面には締切が記載されているため、ご自身で対応する場合には、その締切を守っておいた方が無難でしょう。もちろん、その締切は、相手方弁護士が一方的に設定したものにすぎませんが、その締切を大きく過ぎた場合には、相手方弁護士が訴訟提起などの措置を取ってくる可能性が高いです。
また、相手方弁護士と電話などで話す場合には、録音を取られている可能性があるので、注意が必要です。違うことはしっかり違うと言っておかないと、訴訟の際に、録音を提出され、電話で認めていたなどの主張を受けてしまう可能性があります。
3.弁護士への相談も
相手方弁護士から書面が届いた場合、弁護士に依頼するかどうかは別にして、速やかに弁護士に相談された方がよいです。
というのも、弁護士でなければ、そもそも相手方の主張が正しいのか、回答に際してどのような点に注意した方がよいのか、どのような証拠を集めればよいのかなども分からないためです。
また、回答書作成に際しては、相手方の請求に法的根拠があるのか、相手方の主張する金額は妥当なのか、相手方の提案内容が合理的なのか等を判定する必要がありますが、そのためには、法律や裁判例への深い理解が必要になります。
当事務所にご相談頂ければ、これらの点も含めて、しっかりアドバイスさせて頂きますので、お気軽にご相談ください。
4.最後に
京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、企業の紛争案件をはじめとした企業法務に注力してきました。
これまで、企業の存続に関わるような紛争案件にも多数関わっております。
弁護士から書面が届いて、お困りの企業経営者の方やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。
労働問題を未然に防止するためには
過去に、労働トラブルで裁判になったことがある経営者の方の中には、もう従業員との労働問題は発生させたくないと仰る方も多いです。
これは、想像以上に、従業員との裁判が、企業にとって負担だったからでしょう。
今回は、労働問題を未然に防ぐための方法などについて、企業側で労働問題に注力する弁護士が解説いたします。
1.なぜ労働問題を未然に防ぐ必要があるのか
企業の目的は、企業活動を通じて、社会に貢献し、利益を生み出すことにあります。
しかし、従業員との間で労働問題が発生しても、この目的には合致しません。
それどころか、従業員との労働問題が発生して、労働審判や裁判になると、これらの準備にかかる会社の負担も大きいです。また、この労働問題が他の従業員に波及したり、士気低下を防ぐためにも、会社としても費用対効果のみを考えて安易に妥協することができないこともあります。
そのため、紛争が発生してから、裁判が終わるまでに2年~3年ほどかかる事案もあるのです。
このように、労働問題が発生すると、会社にとっても大きな負担になってきます。
2.労働問題を未然に防ぐために
2-1.就業規則等の整備や見直し
まずは、就業規則等の整備や見直しを行うことが重要です。
企業の中には、そもそも就業規則がなかったり、昔もらったひな形をそのまま使っているという会社もあります。
しかし、就業規則がなければ、従業員に対する懲戒処分さえ行えないという事態にもなりかねません。
また、労働関係法令は、時代の変化に伴い改正が繰り返されている上、新しい判例も出てきており、これらに合うように就業規則の規定を見直していく必要があります。
2-2.従業員に誓約書の提出を求める
もし、退職後の従業員による、自社の顧客や従業員の引き抜き、秘密の漏洩を懸念されるのであれば、従業員に誓約書を提出してもらうことを検討すべきです。これは、退職後の従業員に対して、競業行為の一部制限を設けたい場合にも同じです。
これらの場合には、従業員の入社時及び退職時に、誓約書を作成してもらいましょう。
この誓約書については、裁判例で無効とされるケースも多いので、無効にされないように弁護士と協議しながら慎重に作成することをお勧めいたします。
3.弁護士と社労士の違い
「労働問題を弁護士と社労士のどちらに相談すれば良いですか?」と聞かれることがありますので、簡単に説明いたします。
社労士は、社会保険の手続きや給与計算、年金相談、労務管理についての専門家です。
社労士も労働関係についての専門化ですが、弁護士との大きな違いは、社労士では労働審判や裁判という紛争には対応できない点にあります。逆に言えば、弁護士は、労働審判や裁判に対応しているからこそ、これらになった時に不利にならないようにアドバイスを行うことが可能です。
そのため、少なくとも、将来の紛争予防も踏まえてアドバイスが欲しい時は、弁護士に相談して頂くのが良いです。
実際に、顧問弁護士と顧問社労士の双方を抱えている企業も多く、弁護士の立場からしても、社労士の先生方と共に、企業発展に貢献しています。
4.最後に
京都の益川総合法律事務所では、企業側の労働法務への支援体制を整えております。
労働問題を未然に防ぎたいとお考えの企業経営者の方やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。
従業員の引き抜きに対する防止策
本ページでは、従業員の引き抜きに対する防止策について、紹介します。
特に、自社の元役員や元従業員、在職中の役員や従業員が転職先に、自社の従業員を引き抜いてくることへの防止策になります。
これまでの記事でも、従業員の引き抜きについて、解説してきましたので、是非参考になさってください。
■これまでの記事
②「従業員の引き抜きを違法と評価した裁判例について、企業側の弁護士が解説」
③「派遣スタッフの引き抜きを違法と評価した裁判例について、会社側の弁護士が解説」
1.誓約書の提出を求める
まずは、従業員の入社時及び退職時に、自社の従業員の引き抜きを行わないとの誓約書の提出を求めることが考えられます。
但し、誓約書もその内容次第では、裁判所から無効とされてしまいますので、誓約書の作成の際には、弁護士に相談の上、作成されてください。
2.就業規則に記載する
次に、就業規則にて、従業員の引き抜きを制限することが考えられます。
退職後も従業員に制限を課す就業規則の効力については、退職後の従業員の自由を不当に制限しない範囲で認められています。
そのため、就業規則の規定の仕方については、気を使う必要がありますが、就業規則にて引き抜きを規制する方法も考えられます。
なお、誓約書と就業規則については、どちらか一方のみではなく、双方で規律しておくことをお勧めしております。
なぜなら、誓約書だけの場合、提出を拒否されてしまったら、引き抜き防止策が打てなくなりますし、就業規則だけの場合には、そもそも従業員が就業規則の内容を理解しているかが分からないためです。就業規則については、作成手続きに不備があるとして、裁判所から効力を否定されている例も見受けられます。
3.引き抜きの計画が判明した場合
自社の元役員や元従業員による引き抜きの計画が判明した場合には、その者(企業)に対して、通知書を送付することが考えられます。この通知書は、弁護士に依頼の上、内容証明郵便の形で送付することが効果的です。
また、実際に、引き抜き行為がされてしまった場合には、相手方に対して、損害賠償請求をしていくことが考えられます。この辺りは、弁護士に相談の上、損害賠償請求が認められるかの見通しも含めて、対応するのが良いです。
4.顧問弁護士の活用も
従業員の引き抜きに対する防止策を打ちたい企業様は、顧問弁護士の活用もご検討ください。顧問弁護士が入れば、当該企業様に合わせて、適切に従業員の引き抜きに対する防止策を講じることができます。
また、当事務所の経験上、顧問弁護士がいた場合には、従業員を引き抜かれることが少なくなります。
これは、上記のような防止策に加えて、引き抜く側も、実際に引き抜き行為をした場合には、その顧問弁護士が活動してくることが分かるためです。
5.最後に
今回は、従業員の引き抜きに対する防止策について、企業側で労働問題に注力する弁護士が解説しました。
以前の記事でも解説しましたが、引き抜きに対する損害賠償請求が認められたとしても、その金額は、多くの経営者の方にとっては、割に合わないものになっています。
そのため、可能な限り、従業員の引き抜きを事前に防止する措置を講じた方がよいです。
当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
従業員の引き抜きについて、お困りの事業者の方がおられましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
裁判所が認める従業員が引き抜かれた際の損害額について
企業運営をしていると、自社の従業員が引き抜かれることもあります。
これまでの記事では、従業員の引き抜きが違法と評価される場合などについて、解説してきました。
■これまでの記事
②「従業員の引き抜きを違法と評価した裁判例について、企業側の弁護士が解説」
③「派遣スタッフの引き抜きを違法と評価した裁判例について、会社側の弁護士が解説」
今回は、従業員の引き抜きが違法と評価された場合に、裁判所が、どのくらいの損害額を認めているのかについて、企業側で労働問題に注力している弁護士が解説します。経営者の方や、担当者の方は、是非参考になさってください。
1.売上減少分全額が認められるわけではない
従業員を違法に引き抜かれた場合、売上減少分全額を、損害として認めて欲しいと考えるのが通常でしょう。
しかし、裁判例上、売上減少分全額を、損害として認めてくれるわけではありません。
この理由について、裁判例は、下記の理由を挙げています。
①従業員には、退職・転職の自由が認められており、従業員の自由意思による退職・転職によって、企業に発生する損害については、企業が甘受し、その従業員に賠償を請求することができないのが原則であること
②企業としては、適宜の方法で従業員を補充し、その損失を最小限にすべく努めるのが通例であるが、元の状態に業績が回復するまでの期間が長く、またそれまでの経費が多かろうと、企業としてはこれを甘受しなければならないこと
2.裁判例上認められている損害額
裁判例上、従業員の引き抜きが違法と評価された場合には、下記の①から②を差し引いた金額を、損害として認めることが多いです。
■計算式
①引き抜かれた従業員が上げていた粗利益の1か月から3か月分
※粗利益とは、売上高から売上原価(製造原価)を差し引くものです。
②引き抜かれた従業員の給与+各種保険料(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金等)のうち原告が負担している部分
・具体例
引き抜かれた従業員が、月150万円の粗利益を上げており、当該従業員の給与と、各種保険料の会社負担分の合計額が月40万円だったとします。
この場合に、裁判所が、3か月分の粗利益を基準に損害額を認定した場合には、330万円の損害賠償請求が認められることになります。
①粗利益の3か月分→月150万円×3か月=450万円
②引き抜かれた従業員の経費→月40万円×3か月=120万円
①450万円-②120万円=330万円
3.7200万円の損害賠償請求を認めた裁判例も
裁判例上、従業員の引き抜きも問題になった事例で、7200万円もの損害賠償請求を認容したケースもあります。
この事例は、クリニックの院長であり、医療法人の理事であった者が、クリニックに極めて近い場所に診療施設を開設して、従業員の引き抜きを行うとともに、患者に対しても転院を働きかけた事例です。
裁判所は、クリニックの経営を左右するほど重大な損害を発生させたとして、当該院長に対して、7200万円もの損害賠償請求を認めました。
この事例では、クリニックが行っていたのが、人工透析であり、人工透析を受ける者という患者の性質上、ある診療施設に通院可能な地域の患者数はおのずから限られているのであるから、クリニックに極めて近い場所に診療施設を開設し、クリニックの患者に転院を働きかければ、クリニックの患者が減少し、その経営に影響を与えることは明らかであったという点が重視されています。
4.最後に
今回は、従業員の引き抜きが違法と評価された場合に、裁判所が、どのくらいの損害額を認めているのかについて、企業側の弁護士が解説しました。
7200万円のケースはさておき、多くの経営者の方にとっては、裁判所が認める損害額は割に合わないものだと思います。
そのため、可能な限り、従業員の引き抜きを事前に防止する措置を講じた方がよいです。
この辺りについては、次回の記事で解説いたします。
当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
従業員の引き抜きについて、お困りの事業者の方がおられましたら、お気軽に当事務所までご相談頂ければと思います。
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