問題のあるアルバイト、パート社員を解雇することはできるのか

アルバイトやパート社員であっても、真面目に働かない場合や問題行動をとる場合などには解雇できる可能性があります。

ただし、雇用者側が一方的に解雇するには、法律の定める厳しい条件を満たさねばなりません。

アルバイトやパート社員をむやみに解雇すると「不当解雇」となり、未払い賃金や慰謝料を請求されるリスクが発生します。

今回は、問題があるアルバイトやパート社員を解雇できるケースや注意点を弁護士が解説しますので、問題社員を辞めさせたい方はぜひ参考にしてみてください。

1 アルバイトやパート社員を解雇できる条件

アルバイトやパート社員も解雇できますが、労働関係法令の求める要件を満たさねばなりません。

労働者にとって、従業員としての地位は生活の基盤となる極めて重要なものであるため、法律上、解雇は厳しく制限されています。

具体的には、「解雇の客観的合理的理由」と「社会的相当性」が必要です。

  • 解雇の客観的合理的理由…対象の従業員を解雇せざるを得ない客観的かつ合理的な理由です。たとえば、アルバイト従業員が無断欠勤を続けた場合、SNSへの不適切な投稿によって企業への信用を貶めた場合などには解雇が認められやすいでしょう。
  • 社会的相当性…解雇方法が社会的に相当でなければなりません。企業としてはなるべく解雇を避けるための努力を行い、適切な解雇手続きを履践すべきです。

2 アルバイト、パートの懲戒解雇や整理解雇も可能

(1)懲戒解雇について

アルバイトやパート社員が就業規則に違反して懲戒事由に該当する場合には、懲戒解雇できる可能性があります。

ただし、対象者の問題行動と懲戒解雇にバランスがとれていなければなりません。

軽微な問題行動があるだけで懲戒解雇すると、懲戒権の濫用として解雇が無効になる可能性があります。

(2)整理解雇について

経営不振に陥っていてどうしても企業が存続するためにアルバイトやパート社員を解雇しなければならない場合には「整理解雇」が認められる可能性もあります。

ただし、整理解雇する場合には、解雇の必要性、解雇回避努力、人員選定の相当性、労働者側との十分な協議といった要件を満たさねばなりません。

3 アルバイト、パート社員を解雇するときには解雇予告が必要

雇用者が従業員を解雇するには、原則的に30日前に解雇予告しなければなりません。

対象者がアルバイトやパート社員でも解雇予告は必要です。

ただし、30日前に間に合わない場合には、不足日数分の解雇予告手当を支払えば解雇できます。

解雇予告または解雇予告手当の支給を行った上で解雇通知を送りましょう。

30日分の解雇予告手当を払えば即日解雇も可能です。

ただし、解雇の客観的合理的理由と社会的相当性の要件を満たさねばなりません。

4 有期雇用契約のアルバイトやパート社員の場合

アルバイトやパート従業員の場合、期間を定めて雇用しているケースもよくあります。

有期雇用契約における注意点をみてみましょう。

(1)契約期間中の解雇は厳しく判断される

期間の定めのある従業員の場合、契約期間中の解雇は基本的に困難です。

従業員側とすれば、契約期間中は雇用し続けてもらえると期待しており、その期待は保護されるべきだからです。

契約期間が満了するまで解雇を待つ方が、確実に辞めてもらいやすいでしょう。

ただし、期間中でも従業員側に重大な非違行為があれば、懲戒解雇できる可能性はあります。

状況次第では、普通解雇や整理解雇が認められる可能性もあるので、迷われたら弁護士へご相談ください。

(2)契約満了時に更新しない「雇止め」について

アルバイトやパート社員との雇用契約に期間の定めがある場合、期間満了時に契約を更新しなければ自然に辞めさせることができます。

このように、労働契約を更新しないことを「雇止め」といいます。

ただし、以下のような場合、雇止めであっても30日前に予告をしなければなりません。

  • 労働契約が3回以上更新されている
  • 契約期間が1年以下の有期労働契約が更新されて、通算1年を超えている
  • 有期労働契約の期間が1年を超えている

(3)雇止めが認められないケース

雇止めであっても、企業側が自由に雇止めをすることを認められるわけではありません。

たとえば、以下のような事情があると、雇止めが無効になる可能性が高くなります。

  • これまで繰り返し契約を更新していた
  • 雇入れ時に契約更新を前提としていた
  • 従業員との間で、契約更新を前提としたやり取りがあった

上記のような場合、従業員側からすると「次回も契約更新してもらえるだろう」と期待するものです。

その期待を保護する必要があるため、企業側による雇止めが制限される可能性があります。

これを、「雇止め法理」といいます。

雇止め法理によって雇止めが無効になると、以前と同じ条件で労働契約が継続することとなります(労働契約法19条)。

5 アルバイト、パートの解雇を弁護士に相談するメリット

アルバイトやパートの従業員であっても、解雇や雇止めには法による厳しい制約があります。

軽く考えて解雇通知を送ると、不当解雇と主張されてトラブルになる可能性が高いと考えましょう。

安全かつスムーズに辞めさせるには、法律の専門家によるアドバイスやサポートを受けるのが得策です。

京都の益川総合法律事務所では、企業側の労働相談に積極的に対応しております。

解雇や残業代、労働審判などの労働問題でお悩みごとや疑問点がありましたら、お気軽にご相談ください。

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