離婚の際、「相手に慰謝料を払ってもらいたい」と考える方も多数いらっしゃいます。
しかし、必ずしも慰謝料を請求できるとは限りません。
今回は、慰謝料を請求できるケースとできないケースについて、弁護士が具体的な状況を交えて解説します。
離婚を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1 離婚の慰謝料とは
離婚の慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛による損害賠償金のことです。
具体的には以下のような場合、慰謝料が認められる可能性があります。
(1)不貞された
相手が「不貞」した場合は、慰謝料が認められる典型例です。
不貞とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係をもつことを意味します。
親しく交際していても、性的関係がなかったら不貞にはなりません。
ただし、性的関係がなくても、社会常識を逸脱するほど親密な交際を続け、夫婦生活の平穏を害して精神的苦痛を与えた場合には、慰謝料が認められる可能性もあります。
(2)生活費を払ってもらえなかった
夫婦にはお互いに扶助義務があるため、収入の高い方は低い方へ生活費を払わねばなりません。
たとえば、こちらが専業主婦や兼業主婦などで所得が低いのに、相手が生活費を払ってくれなかった場合、慰謝料を請求できます。
(3)家出された
夫婦には同居義務があります。正当な理由なく家出されたり同居を拒否されたりしたら、慰謝料を請求できます。
(4)暴力を振るわれた
暴力を振るわれた場合もまた、慰謝料が認められる典型例です。
暴力を振るわれた場合には、診断書や暴力を振るわれた直後の部位の写真等が有効な証拠となります。
(5)モラハラ被害を受けた
モラハラは、言葉や態度による精神的な暴力です。
モラハラ配偶者には、大声でどなる、人前で相手を侮辱する、無視して口をきかない、異常に束縛する、実家の親族や友人との交流を制限する、暴れて物に当たるなどの特徴がみられます。
モラハラの場合には、立証が難しいため、慰謝料を認めてもらうことは容易ではありませんが、慰謝料が認められた裁判例もあります。
モラハラ被害を受けた場合には、客観的な資料を残しておくことをおすすめします。
(6)セックスレス
場合によっては、セックスレスの事案でも慰謝料を請求できる可能性があります。
典型的には、健康で若い夫婦であるにもかかわらず、一方が特段の理由なく性交渉を拒否し続けていた場合が挙げられます。
ただし、性交渉がないからといって、必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。
ケースバイケースの判断が必要です。
(7)浪費
相手が浪費していた場合にも、事案によっては慰謝料が認められる可能性があります。
たとえば、相手が生活費に手を付けたために家族の生活が困窮した場合、こちらが稼いだお金をギャンブルなどにつぎ込まれて生活が破綻した場合などです。
ただし、相手が浪費したからといって必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。
相手が自分で稼いだお金を余裕のある範囲内で使っていた場合、個人的な借金はしていたけれども夫婦の生活にはさほどの影響が及ばなかった場合などには慰謝料は発生しないと考えられます。
(8)刑事事件で有罪になった
相手が刑事事件によって有罪判決を受けた場合、慰謝料請求できる可能性があります。
たとえば、相手が強制性交等罪を犯したら「不貞」であり、慰謝料請求をできる可能性があります。
ただし、すべての刑事事件が慰謝料発生原因になるとは限りません。
万引きや暴行、脅迫などの犯罪行為を行った場合でも、必ずしも夫婦関係を破綻させる行為とはいえません。
相手が実刑になっても慰謝料請求できないケースは考えられます。
相手が刑事事件で逮捕されたり有罪になったりしたとき、慰謝料請求できるかどうか迷ったら弁護士へご相談ください。
2 慰謝料請求が難しい場合
以下のような場合には慰謝料請求が難しいと考えられます。
(1)性格の不一致、価値観の相違
離婚理由として最も多いと思われるのが「性格の不一致、価値観の相違」です。
性格の不一致、価値観の相違の場合、有責性が認められるのが難しく、慰謝料は発生しません。
ただし、相手の態度が突然冷たくなった、家庭を顧みなくなったなどの事情がある場合、相手が不貞しているケースがよくあります。
「性格の不一致、価値観の相違」と決めつける前に、本当の離婚原因を探る必要があるでしょう。
(2)思想や宗教の違い
思想や支持政党、考え方や宗教などが異なるため、離婚に至るケースもあります。
家柄や生活習慣が違いすぎて夫婦関係を継続できなくなることもあるでしょう。
こういったケースではどちらが悪いというわけでもないので、慰謝料は発生しません。
(3)相手の実家との不和
相手の実家と反りが合わないので離婚するということも、多くあると思われます。
相手の実家の親族と相手本人は異なるので、相手の実家から嫌がらせをされたからといって相手に慰謝料請求できるわけではありません。
もっとも、義母が度を超えた嫌がらせを行って夫婦関係を破綻させた事案において、義母に慰謝料の支払いを命じた裁判例はあります。
3 解決金の支払いを受けられる可能性も
離婚の際に慰謝料請求権が認められるかどうか明らかでなくても、話し合って協議離婚するなら「解決金」を払ってもらえる場合がよくあります。
「解決金」であれば、相手方としても「慰謝料」といわれるより心理的抵抗が小さく、払いやすくなるものです。
益川総合法律事務所では、離婚事件について、多数の対応経験があります。
離婚の慰謝料請求についても、お気軽にご相談ください。