メタバースは、新しい技術です。
そのため、法整備が追いついていないケースもあり、また、現在整備されている法律との関係でも多くの課題を有しています。
この記事では、メタバースの抱える法的課題について、主なものをご説明します。
メタバースへの参入を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1 著作権法
メタバースにおいてビジネスを展開するのであれば、著作権法についての正しい理解が必要です。
著作権法は、著作物を生み出した著作者等の権利を保護するための法律です。
著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいいます。
具体的には以下のようなものが著作物となります。
- 絵画、漫画、版画
- 論文、小説
- 写真
- ダンス、バレエ
- 音楽
プロが作ったものだけではなく、素人が製作したものにも著作権が認められるので注意が必要です。
メタバースにおいて著作権侵害となる具体例
メタバースにおいて、以下のようなことをすると、他人の著作権を侵害する可能性があります。
- アニメやゲームのキャラクターを自分のアバターにする
- 他人の撮影した写真を勝手に公開する
- 他人が作曲した曲を歌う
著作権を侵害する行為をすると、著作権者から差し止めや損害賠償請求をされる可能性があります。
また、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれらの併科という刑事罰も存在し、刑事上の責任を問われることもあります。
法人には3億円以下の罰金刑という重い罰則が設けられています。
何が著作権法違反になるかわからない場合には、弁護士へ相談して、適法な行動を心がけましょう。
2 特定商取引法
特定商取引法とは、トラブルが生じやすい一定の商取引の類型において、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止して、消費者を保護するための法律です。
ネット上で商品やサービスを販売すると「通信販売」に該当しますが、特定商取引法では通信販売を規制対象にしています。
メタバース上でビジネス展開する際にも、特定商取引法の内容を知って遵守せねばなりません。
メタバースの取引が通信販売に該当する例
- メタバース上で商品をお店に陳列し、顧客のアバターが購入するケース
この場合には、通信販売として特定商取引法が適用されるでしょう。
確かに、アバターが店を訪れているので「直接販売」のように思えますが、ネット上の空間で実際の人ではないアバターを介して取引している以上、通信販売に該当するのです。
特定商取引法における「通信販売」に該当する場合には、特商法に基づいて、広告表示などの法定事項の表示が必要となります。
メタバース上のお店で物を売る場合、どのような方法で表示を行うかについて、しっかり検討して決定しましょう。
3 メタバース上では法整備が整っていない
メタバースは非常に先進的な技術です。そのため、まだまだ法律の整備が追いついていません。
現実で行う際には問題のないビジネスモデルであっても、メタバース上で行うと法的問題を生じる場合があります。
今後、メタバースが普及してくるにつれて新たな問題が発生してくる可能性も高いと考えられます。悪質業者が参入してくる可能性もあり、そのような事態となった場合には、排除するための法律も新たに制定されるでしょう。メタバースでビジネスを行う際には、法律の制定や改正などの動向に特に注意すべきです。
また、メタバース上の法的問題については、判例が蓄積されていない点も課題となります。
たとえば、あるビジネスモデルが違法かどうかわからないとき、過去の判例を参照しようとしても見つからないケースが大半でしょう。
かといって、現実世界と仮想世界は異なるので、現実世界の判例をそのまま適用できるわけではありません。判断に際しては、メタバースなどのIT問題に詳しい弁護士に相談することが必須といえるでしょう。
4 メタバースについてのご相談はお気軽に
メタバース上で安全に取引をするには法律の専門的な知識が必須です。
もっとも、専門家でない場合には、何が正しいのか判断するのが難しいでしょう。
京都の益川総合法律事務所では、企業法務に積極的に取り組んでいますので、お気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。