昨今、職場におけるセクハラ・パワハラを理由として、会社が訴えられることが増えています。
そこで、今回は、セクハラ・パワハラで訴えられそうな場合や訴えられた場合の対処方法などについてご説明いたします。
このページの目次
1 セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは
セクハラとは、職場において行われる、①労働者の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、②「性的な言動」により就業環境が害されることをいいます。
セクハラには、「対価型」と「環境型」の2種類があります。
■対価型セクハラ
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることをいいます。
■環境型セクハラ
労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。
セクハラの種類 | 典型的な例 |
対価型セクハラ |
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環境型セクハラ |
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2 パワハラ(パワーハラスメント)とは
パワハラとは、同じ職場で働く人に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為をいいます。
厚生労働省は、以下の内容をパワハラの例として挙げています。
内容 | 具体例 |
身体的な攻撃 |
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精神的な攻撃 |
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人間関係からの切り離し |
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過大な要求 |
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過小な要求 |
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個の侵害 |
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3 従業員や元従業員から内容証明が届いた場合(訴えられそうな場合)
(1)事実関係の調査
内容証明が届いた場合、その中でセクハラ・パワハラの内容や、それを誰から行われたか(加害者)が記載されていることが通常です。
そこで、まずは、加害者とされている人に対して事情聴取を行い、そのような行為があったのかを確認する必要があります。
仮に、相手方の主張する行為があった場合には、その行為をした経緯なども確認しておくとよいでしょう。
また、相手方の主張する内容と加害者とされている人の主張に食い違いがある場合には、周りの従業員などの関係者からも事情聴取を行うことが重要になってきます。
(2)交渉する
内容証明が届いた場合、その中で金銭の請求がされていることが多いです。
そこで、①その金銭を支払うのか、②減額の交渉をするのか、③金銭の支払いを一切拒否するのかを決断する必要があります。
いずれの決断をするかは、加害者とされている人や関係者からの事情聴取の内容、会社がこれまで適切にセクハラ・パワハラ防止策を講じてきたかなどから判断することとなります。
そして、いずれかの決断を基に、相手方と交渉する必要があります。
もし、交渉が決裂すれば、労働審判や裁判などで訴えられる可能性が高いです。
そのため、内容証明が届いた時点で訴えられそうな状況であるといえます。
(3)弁護士への相談
内容証明が届いた場合、その時点で弁護士へ相談することが重要です。
というのも、弁護士は法律のプロですし、企業法務を取り扱っている弁護士であれば、その時点で会社がとるべき行動を知っているためです。
自社で対応しようとしても、冷静な観点から客観的に判断することは難しいですし、場合によっては、不利な証拠を相手方に渡してしまうことさえあります。
そのため、早い段階から弁護士に相談することが重要になってきます。
4 訴えられた場合の対処方法
(1)事実関係の調査
訴えられた場合には、裁判所を通じて、相手方からの書面が送られてくることになります。
この書面の中には、相手方の主張するセクハラ・パワハラの内容や、それを裏付ける証拠が含まれています。
そこで、まずは、相手方の主張が正しいのかについて、事情聴取を行う必要があります。
事情聴取の対象は、加害者とされている人や周りの従業員などの関係者です。
(2)書面の作成
訴えられた場合、裁判所より、会社側の反論の書面の提出が要求されるため、会社側の反論の書面を作成する必要があります。
この書面においては、相手方の主張が誤っている点や、会社側が認識している事実関係及びそれを裏付ける証拠などを引用することになります。
特に、労働審判の場合、この反論の書面提出の締切日まで、時間があまりないため、速やかに準備をすることが必要になってきます。
(3)弁護士への依頼
訴えられた場合には、速やかに弁護士に相談することが重要になります。
裁判においては、提出する書面の内容と証拠が極めて重要になってきますが、適切に書面を作成し、証拠を収集するには、弁護士の力が必要不可欠だからです。
セクハラ・パワハラで訴えられた場合、書面提出の締切日まで、時間があまりない可能性もあるため、速やかに弁護士に相談に行くことが重要です。
当事務所は、1983年の創業以来、東証一部上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、多数の労働問題を解決してきました。
当然セクハラ・パワハラ案件の対応経験も有しており、セクハラ・パワハラ問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。
もし、セクハラ・パワハラで訴えられそうな場合や訴えられた場合には、お気軽に当事務所までご相談下さい。
参考情報:厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室) パンフレット