どこからがセクハラになるのか?会社側の弁護士が解説

企業運営を行っていると、従業員からセクハラ被害の申告を受けることもありますが、その内容が本当にセクハラに該当するのか、判断に迷うこともあると思います。

そこで、今回は、どこからがセクハラになるのかについて、会社側の労働問題に注力する弁護士が解説します。経営者の方や、企業の担当者の方は、是非参考にしてください。

1.セクハラとは

まず、最初に、セクハラについて、簡単に説明します。

セクハラとは、相手方の意に反する「性的な言動」を言います。

男性から女性に行われるものに限らず、女性から男性に行われるものや、同性に対するものも、セクハラに該当します。

例えば、性的な関係を要求したり、不必要に身体に触ることなどは、典型的なセクハラに該当します。

もっとも、実際に企業運営を行っていると、その事実が、「セクハラ」に当たるのかについての判断を迷うことも多いと思います。そのため、以下では、具体的事例を交えて、セクハラに当たるかについて、解説します。

セクハラに関する詳しい解説は、「セクハラ・パワハラで訴えられそうな会社・経営者の方へ」の記事でしていますので、興味がある方は参考になさって下さい。

2.セクハラに当たるのか

(1)食事やデートに誘う

基本的に、業務上、必要な食事の誘いであれば、セクハラには該当しないと考えられます。

他方、厚生労働省のガイドラインなどでは、食事やデートへの「執拗な」誘いは、セクハラに当たるとされています。

例えば、その従業員が食事やデートを拒否しているにもかかわらず、何度も、これらに誘う行為は、「セクハラ」に当たりうるでしょう。但し、実際にセクハラに当たるかは、①両者の関係性(上司と部下かそれとも同僚か)や②誘い方、③誘った回数、④誘われた側の従業員の感じ方等を考慮して、セクハラに該当するかを判断していくことになります。

(2)個人的な性的体験談を話す

厚生労働省のガイドラインにおいて、個人的な性的体験談を話すことも、セクハラに当たるとされています。実際の裁判例上も、セクハラに当たるとされました。

言葉によるセクハラについては、身体的接触を伴うセクハラに比べて、一般的に軽視されがちではありますが、このような自己の体験を話すことについてもセクハラとされているので、注意が必要です。

(3)秋葉原で働いた方がいいと話す

裁判例上、他の言動と相まって、セクハラに該当すると認定されました。

この裁判例では、「秋葉原で働いた方がいい」との発言は、メイド喫茶又はメイドカフェで働くことに向いているとの趣旨のものであり、加害男性の発言を「全体的にみると」、女性が性的な行動を揶揄し又は非難するものと受け止めたことにも理由があるとされています。

■弁護士の見解

この裁判例では、「秋葉原で働いた方がいい」との発言のみならず、加害男性が被害女性に対して、「頭がおかしいんじゃないの」、「僕はエイズ検査を受けたことがあるから、Aさんもエイズ検査を受けた方がいいんじゃないか」などとも発言をしていました。

そして、裁判例においては、「上記各発言は、全体的にみると、被害女性において加害男性の各発言を強圧的なものとして受け止め、又は性的な行動をやゆし又は非難するものと受け止めたことにも理由があるというべきであり、男性から女性に対するものとしても、上司から部下に対するものとしても、許容される限度を超えた違法な発言であったと言わざるを得ない」とされています。

要は、裁判例では、「秋葉原で働いた方がいい」という発言も違法性の根拠にはしていますが、この発言だけで、セクハラであると認定しているわけではありません。あくまで、発言を「全体的にみると」違法であると評価しているだけです。

なので、私見としては、「秋葉原で働いた方がいい」といいとの発言だけで、セクハラに当たって違法であると評価されるかというと、そうではないと考えています

(4)男のくせに根性がない、女には仕事を任せられない

この辺りの発言は、実際に被害の申告がされた場合に、セクハラに該当するかの判断がかなり悩ましい部類となります。

人事院のページでは、これらの発言は、「セクハラになり得る言動」とされています。

他方、厚生労働省のガイドラインによると、「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などの発言は、性別役割分担意識に基づく言動の例とされており、この性別役割分担意識に基づく言動そのものがセクハラに該当するわけではないとされています。但し、セクハラの発生の原因や背景となり得るため、こうした言動も含めてなくしていく必要があるとされています。

そのため、「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などの発言は、それのみでセクハラに該当するかは怪しいですが、実際に、加害従業員によって、このような発言がなされていた場合には、始末書の提出等を求めるなどの措置を行っていくことも検討する必要があります。

3.最後に

今回は、どこからがセクハラになるのかについて、企業の方向けに、具体的な事例を交えて解説していきました。

従業員からセクハラ被害の申告があった場合、適切に処理をしないと、会社が被害者から訴えられるリスクがありますし、対して、処理の仕方を間違えると、加害者からも会社が訴えられるという二重のリスクがはらんでおり、会社としても、慎重に処理をすることが求められます

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働問題を解決してきました。

当然、セクハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、会社が従業員からセクハラ被害の申告を受けたり、セクハラに関する問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。

セクハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

■参考情報

①厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

②人事院 「セクシュアル・ハラスメント」

https://www.jinji.go.jp/sekuhara/1homu.html

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