医師や経営者、プロスポーツ選手などの高額所得者と離婚するときには、一般的な会社員の離婚の場合とは異なる注意点があります。
財産分与や養育費、婚姻費用なども高額となりますし、相手が会社経営をしている場合には、株式や会社名義の財産も問題となるでしょう。
今回は高額所得者と離婚するときに必須の知識を、京都の弁護士が解説します。
このページの目次
1 財産分与の割合
相手が高額所得者の場合、婚姻中に形成された資産額が多く、財産分与対象資産も高額になりがちです。
一般的な事案における財産分与の割合は「夫婦で2分の1ずつ」ですが、一方が高額所得者の場合、修正される可能性があります。
たとえば配偶者が医師で病院経営をしているケース、会社経営を行って大きく成功しているケースでは、請求者の財産分与割合を減らされるという裁判例もあります。
ただ、相手が医師や経営者だからといって、必ずしも財産分与割合が調整されるとは限りません。
調整するとしても、どこまで割合を減らすべきかについては、ケースバイケースで判断されます。30%とすべき事案もあれば40%、45%などとすべき事案もあります。
相手に財産分与を求めたとき「お前は財産形成に貢献していないから10%しか渡さない」などと言われても、鵜呑みにする必要はありません。
まずは一度、弁護士へ相談して妥当な割合を算定するところから始めましょう。
2 財産分与の対象資産
相手が高額所得者の場合、多種多様な財産を形成しているでしょう。
一般的な預貯金や生命保険などに加えて、株式や投資信託、投資用の不動産なども所有している方も多数います。
また、経営者の方は、退職金代わりに長期平準定期保険や逓増定期保険などの保険に加入している場合があります。こうした保険も財産分与の対象になる可能性があるので、見逃してはなりません。
さらに、相手が株式会社を経営していて、婚姻後に会社株式を取得した場合には、相手が保有する会社株式も財産分与対象になると考えられます。
財産分与の対象となる資産を見逃すと、受け取れる分与額が減ってしまうので、漏れなく調査して洗い出しましょう。
財産分与対象資産の例
- 現金、預貯金
- 保険(退職金代わりの保険を含む)
- 不動産(自宅及び投資用物件)
- 上場株式(投資対象)
- 投資信託
- 自社株式
- 高級時計、絵画、骨董品などの動産
3 会社名義の財産について
個人と会社は別人格なので、会社名義の財産は基本的に財産分与の対象になりません。
ただし、たとえば、夫のいわゆる「一人法人」で実質的には個人事業と同視できる場合、会社の創業時から妻も会社経営に中心的に携わっていて会社財産の形成に貢献している場合などには、会社名義の財産も一部財産分与の対象にできる可能性があります。
どこまでの財産が分与の対象になるかわからない場合、弁護士までご相談ください。
4 財産隠しに要注意
適正に財産分与を受けるためには、財産隠しを防がないといけません。
高額所得者は、さまざまな対象へ資産を分散させており、財産分与を避けるために一部の資産を隠そうとするケースがよくあります。
相手の開示資産を鵜呑みにせず、漏れがないか調査しましょう。自宅に保管されている資料類を探しても限界がありますので、弁護士への依頼も有効です。
弁護士会照会という方法を使って調査できる場合もありますし、調停や訴訟になれば、裁判所からの調査もできる可能性があります。
5 養育費や婚姻費用の計算方法
相手が高額所得者の場合、子どもの養育費や離婚するまでの別居中の婚姻費用(生活費)の計算方法にも工夫が必要です。
一般的に、養育費や婚姻費用は裁判所の定める「養育費、婚姻費用の算定表」を用いて計算します。しかし算定表は「給与所得者の場合に年収2000万円」が上限となっており、それを超える場合の金額が記載されていません。
年収2000万円を超える相手の場合、養育費や婚姻費用は個別に計算する必要があります。
家庭裁判所では、
- 年収2000万円の場合の金額をそのまま適用する方法
- 基礎収入を減らして調整し、個別計算する方法
などの対応がとられます。
具体的にどういった計算をあてはめるべきかについては、事案によって異なるので、相手と養育費や婚姻費用について話し合う際には、弁護士までご相談ください。
6 慰謝料の金額
配偶者が不倫したために婚姻関係が破綻した場合、配偶者から暴力やモラハラ被害を受けたために離婚する場合などには慰謝料を請求できます。
配偶者が医師や経営者などの高額所得者である場合、慰謝料の金額が高額になる可能性もあります。
一般的に、慰謝料の相場は50~300万円程度ですが、相手の収入や資産が高額なのに、その程度の金額では、被害者の気持ちが慰謝されにくいということもあるかもしれません。
特に話し合いで解決する場合、一般より高額な慰謝料額を定めるケースも多く、慰謝料代わりに不動産の分与を受けること、財産分与割合を増やしてもらうこともあります。
相手と交渉する際には、弁護士が対応することにより、有利な条件を引き出しやすくなることも多く、自分で対応するストレスもかかりません。
益川総合法律事務所には、男性弁護士も、女性弁護士も在籍しております。
医師や経営者などの高額所得者と離婚する際には、お気軽にご相談ください。