従業員の無断欠勤が続いた場合、その従業員を解雇しようとお考えになる経営者の方も少なくありません。
しかし、無断欠勤を理由に、従業員を解雇したとしても、不当解雇であるとして、企業側が敗訴する事例もあります。
そこで、今回は、無断欠勤を理由に従業員を解雇できる相場や、無断欠勤への対処法などについて、弁護士が解説いたします。
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1.いきなりの解雇は危険
無断欠勤を理由に、いきなり従業員の解雇を行うのは、会社にとって、極めて危険な行為です。
なぜなら、労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされているからです。
裁判例上も、無断欠勤を理由に従業員を解雇したものの、「不当解雇」として、企業側が敗訴している事例は多数あります。
「不当解雇」として、企業側が敗訴した場合には、企業がその従業員に対して、解雇日まで遡って賃金を支払う必要があります。仮に、企業と労働者が徹底的に争い、労働訴訟において企業側の敗訴判決が出されるまでに、解雇をしてから2~3年経過している場合には、企業は、2~3年分の賃金を遡って支払わなければなりません。
そのため、無断欠勤を理由に、いきなり解雇をするのは、お勧めできるものではありません。
2.無断欠勤を理由に解雇が認められる相場
裁判例上、無断欠勤を理由に解雇が認められる相場は、従業員が2週間以上、正当な理由なく無断欠勤をして、出社命令にも応じない場合になります。
但し、これはあくまでも目安にすぎず、2週間より期間が短くても解雇が有効になることもありますし、2週間を超えていても解雇が無効にされることもあります。
なぜなら、実際上は、無断欠勤の期間のみならず、無断欠勤の理由や、その従業員のこれまでの勤務態度、無断欠勤により会社に生じた影響等を総合的に考慮して、解雇が有効であるかを判断していくためです。
そのため、「2週間」というのは、あくまで参考程度にされてください。
3.無断欠勤への対処法
3―1 欠勤理由の確認
まずは、無断欠勤をした従業員に対して、欠勤理由を確認してください。
仮に、体調不良など、正当な理由がある場合には、解雇は視野に入らない形になります。
但し、体調不良の裏付けなどを求める場合には、診断書等の提出を求めることになります。
3―2 出社命令の発動
従業員が正当な理由がなく無断欠勤を続ける場合には、出社命令を発動することになります。
この出社命令を行っていないと、後に解雇をしたとしても、不当解雇であると判断される可能性が極めて高くなるので、注意が必要です。
電話で出社命令を行っても、証拠として機能しないので、メールやLINE、住所宛の書面の送付(特定記録を付けて)など、証拠として残る形で出社命令を行うことが重要です。
将来的な解雇を視野に入れるのであれば、この出社命令は、一度ではなく、複数回行っておくことが重要です。
3―3 従業員との連絡が取れない場合
無断欠勤が続く場合、そもそも従業員との連絡が取れないことも多いです。
仮に将来的に解雇を視野に入れるのであれば、そのような場合にも、欠勤理由の確認や出社命令を発動しておく必要があります。
従業員との連絡が取れない場合にも、電話の不在着信としてのみ残すのではなく、メールやLINE、住所宛の書面の送付(特定記録を付けて)など、証拠として残る形で欠勤理由の確認や出社命令を行うことが重要です。
また、上記の通り、将来的な解雇を視野に入れるのであれば、出社命令は、一度ではなく、複数回行っておくことが重要になります。
4.解雇の前にまずは自主退職を促す
無断欠勤が続いた場合でも、いきなり解雇をするのではなく、まずは自主退職を促した方がよいです。
なぜなら、解雇に比べて自主退職の方が、後の紛争リスクを格段に下げられるためです。
これは、従業員との連絡が取れない場合も同じで、書面などで自主退職を促せば、従業員側から退職届を送付してくれることもあります。
5.解雇の前に弁護士に相談を
無断欠勤を理由に解雇する前に、弁護士に相談することが大切です。
なぜなら、無断欠勤の原因や就業規則の規定のされ方などによっては、企業側がそもそも、その従業員を解雇できないケースもあり、弁護士にその確認を取る方がよいためです。
また、解雇をするためには、適切な手続きを踏む必要があり、この手続きを踏んでいないと、後に不当解雇と判断されてしまう可能性が高くなります。
後に不当解雇と判断された場合には、上記の通り、解雇日までの賃金を遡って支払う必要が生じ、企業にとって、とても大きな負担になります。
このような事態を生じさせないためにも、解雇前に、弁護士に相談するのが重要になってくるのです。
6.最後に
今回は、無断欠勤と解雇について、企業側で労働問題や紛争案件に注力する弁護士が解説しました。
京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
従業員が無断欠勤をして、お困りの企業経営者の方やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。