近年、企業が(元)従業員から労働訴訟を起こされることも少なくありません。
そこで、今回は、企業が(元)従業員から労働訴訟を起こされた時に、会社が取るべき対応などについて、企業側で労働問題に注力している弁護士が解説いたします。労働訴訟を起こされた経営者の方や、企業担当者の方は、是非参考にしてみてください。
このページの目次
1.企業が従業員から訴えられる内容
企業が(元)従業員から訴えられる労働訴訟の内容としては、下記の4つが代表的なものになります。
(1)解雇無効
1つ目は、解雇が無効であると訴えられるケースです。
これは、労働者の地位に関わる訴えになります。
この場合、解雇無効の訴えとともに、従業員から会社に対する賃金請求も加えられていることがほとんどです。この賃金請求においては、解雇が無効になった場合に、解雇期間中の賃金をさかのぼって請求されることになります。解雇してから判決が出るまでに、数年単位でかかることもあり、このような場合には、数年分の賃金請求が飛んでくることになります。
この訴えを企業が起こされた場合には、①解雇に合理的な理由があること、②解雇という手段を選択することが相当であることを、企業側が積極的に主張していく必要があります。
(2)セクハラやパワハラなどを理由とする損害賠償請求
2つ目は、セクハラやパワハラを理由に、企業が損害賠償請求を受けるケースです。
このケースの場合には、セクハラやパワハラをしたとされる従業員や役員とともに、企業も損害賠償を受けるケースになります。
会社内でセクハラやパワハラがあった場合、企業側の責任が認められてしまうことも多いです。
この訴えを企業が起こされた場合には、企業側は、主に下記のような反論をしていくことになります。
①そもそもセクハラやパワハラが存在しない
②セクハラやパワハラについて企業が適切に防止措置を取っていた
③セクハラやパワハラが発覚した後に企業が適切に対応している
(3)労働災害を理由する損害賠償請求
3つ目は、労働災害を理由に、企業が損害賠償請求を受けるケースです。
これは、労働が原因で従業員が死亡したり、障害を負った場合などに、企業が損害賠償を受けるものです。
代表的なものとしては、過労死や、長時間労働が原因で従業員が大きな障害を負う事例などが挙げられます。
この訴えを企業が起こされた場合には、企業側は、主に下記のような反論をしていくことになります。
①その従業員が労働者ではない(労働者性)
②従業員の死亡又は障害は、業務が原因ではない(業務起因性)
この②の中で、過重労働や長時間労働といった従業員側の主張には理由がないことを主張してくことになります。
③従業員側の主張する損害額が誤っていること(損害論)
もし、従業員側が障害を負って、後遺障害等級が付いている事案であれば、後遺障害等級についての反論も検討することになります。
(4)未払残業代請求
4つ目は、未払残業代請求などの、未払賃金を請求されるケースです。
未払残業代や未払給料については、元々2年で時効消滅していましたが、2020年4月1日から時効期間が3年に伸びました。そして、将来的には、時効が5年になる見込みです。
この消滅時効期間が伸びたことにより、未払残業代などの請求金額も大きくなってきています。
この訴えを会社が起こされた場合には、企業側は、主に下記のような反論をしていくことになります。
①従業員側の主張する労働時間が誤っている
②管理監督者に該当するため、未払残業代を支払う必要がない
③時効により消滅している
2.訴訟を起こされた際に企業が取るべき対応
(1)訴状と証拠の内容確認
企業が(元)従業員から訴えられた場合、裁判所を通じて、従業員側の訴状や証拠などが送られてくることになります。
この訴状の「請求の原因」と記載されている部分の中には、一体なぜ、当該従業員が企業を訴えているのかの理由が示されています。そして、相手方の主張を裏付ける証拠も添付されています。
まず、企業においては、相手方の主張の適否について、検討する必要があります。
(2)反論を検討する
相手方の主張を理解した後は、自社で反論を検討することになります。
労働訴訟において、通常、従業員側の訴状の内容が全て正しいということはありません。
企業において、訴状の誤っている部分についての反論を検討するとともに、企業側の主張を裏付ける証拠を収集していくことになります。
(3)企業側の労働訴訟に長けている弁護士を探す
企業が労働訴訟を起こされた場合、ほとんどのケースで、企業は弁護士に依頼をします。これは、自社で訴訟に対応することが、現実的にみて難しいためです。
そのため、当該訴訟を依頼するために、企業側の労働訴訟に長けている弁護士を探す必要があります。
もし、自社に顧問弁護士がいるのであれば、まずはその弁護士に相談することになるでしょう。
意外と、自社の顧問弁護士が労働訴訟に対応していないケースもあるようで、当事務所にも顧問弁護士がいるのに労働訴訟についてご相談やご依頼を頂くケースもあります。
裁判所から訴状が届いたタイミングですぐに弁護士にご相談頂ければと思います。
(4)答弁書を作成する
訴えられた場合、企業は答弁書を作成する必要があります。
この書面において、従業員側の主張が誤っている点や、企業側が認識している事実関係及びそれを裏付ける証拠を示していくことになります。
裁判官は早い段階で訴訟の見通しを立てることも多いため、初回の答弁書から、自社の主張を全て出し切るつもりで対応することが重要です。
3.顧問弁護士のすすめ
企業が訴えられた場合にも、顧問弁護士がいれば、すぐに相談をして対策を打てるため、安心です。
企業が訴えられると、必要以上に不安になる経営者の方もいらっしゃいます。これまで、訴えられたという事実を重くとらえて、1人で悩み、精神的に追い込まれた経営者の方も見てきました。
しかし、経営者の方の役割は、前を向いて会社を前進させることであり、訴訟を起こされたからといって必要以上に不安になられる必要はありません。
このような企業の防衛については、顧問弁護士に任せて頂くのがよいと考えています。
これまでの顧問先様からのご依頼案件の中には、対応を間違えると顧問先様が危機的状況に陥るような案件も多数ありましたが、当事務所では顧問先様にご満足頂く形で無事に案件を解決してきました。安心して、当事務所に顧問弁護士をお任せ頂ければと思います。
4.最後に
今回は、従業員から労働訴訟を起こされた時に企業が取るべき対応について、解説いたしました。
当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
当然、労働訴訟についても多数の対応経験を有しており、労働訴訟に関する企業側の対応方法を熟知していると自負しております。
従業員から労働訴訟を起こされて、お悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽に当事務所までご相談頂ければと思います。