会社に求められるセクハラ対策とは?会社側の弁護士が解説

近年、会社内のセクハラに対する意識が高まっています。

当事務所も、企業の顧問弁護士をやっておりますが、顧問先の企業様より、「企業のセクハラ対策としては、どのようなことをやっておけば良いですか?」といったご質問を受けることがあります。

そこで、今回は、企業に求められるセクハラ対策について、会社側にて労働問題に注力する弁護士が解説します。経営者の方や、企業の担当者の方は、是非参考にしてください。

1.会社にはセクハラの防止措置を講じる義務がある

男女雇用機会均等法第11条では、会社が、職場内のセクハラについて、対策を講じることを義務付けています

そのため、会社がセクハラ対策を行うことを怠っていた場合には、会社内でセクハラ被害が発生した際、会社が責任を問われる可能性が生じてきます

2.会社が取るべきセクハラの防止措置

それでは、会社は、どのようなセクハラの防止措置を取ればよいのでしょうか?

厚生労働省のガイドラインには、会社が取るべきセクハラ対策が解説されています。

そのため、以下では、このガイドラインをかみ砕いて、会社が取るべきセクハラの防止措置を解説します。

(1)会社の方針の明確化及びその周知

まずは、会社内でセクハラがあってはならない旨の会社側の方針等を明確にし、従業員に周知・啓発することです。

この方法としては、就業規則や職場における服務規律等を定めた文書に、会社の方針を規定し、労働者に周知する方法や、社内報・パンフレット等の資料に、セクハラへの会社の方針を規定する方法があげられます。

一つ注意して頂きたいのが、セクハラ対策についての会社の方針を示すことやそれを従業員に周知する方法は、口頭ではなく、書面等で残して頂きたいとの点です。

もし、従業員がセクハラ被害を申告して、会社を訴えてきた場合、口頭で会社の方針を示していても、裁判の証拠としての価値がとても低いです。

仮に、就業規則や、社内報・パンフレット等で、会社のセクハラ対策の方針を示すことが難しかったとしても、せめて、会社のセクハラ対策の方針を書面にしておいて頂きたいです。

そして、その書面を従業員に配布して、社内に掲示する、又は全従業員にメールにて、その書面を送付する等の措置を取っておくのがよいです。

(2)行為者への厳正な対処方針の規定作成及びその周知

次に、就業規則において、職場でセクハラを行った者について、厳正に対処する旨の会社の方針、及び具体的な対処内容を規定し、従業員に周知することが必要です。

セクハラを行った者への対処(懲戒)内容を規定するのは、セクハラを行ってしまった場合のルールを明確にすることで、従業員への注意喚起を行うことを目的にしています。

(3)相談窓口の設置

次に、セクハラに関する相談窓口を設置することが必要です。

この相談窓口は、従業員に周知されていることが必要となります。

この周知の方法は、口頭ではなく、書面又はメールにて行って下さい。

(4)相談に対応できる状況を整えること

相談窓口を設置しても、その相談窓口が形式的なものであったり、相談に適切に対応できないと意味がありません。

そのため、相談窓口の担当者が、セクハラに関する相談に対して、その内容や状況に応じて適切に対応できる状況を整えておくことが必要となります。

また、相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、関係部署と連携を図ることができる仕組みを整えておくことが望ましいです。

(5)被害者等のプライバシー保護のための措置の実施と周知

せっかく相談窓口を設置して、相談に対応できる状況を整えても、相談した内容が外部に漏れるのであれば、従業員も安心してセクハラに関する相談を行うことができません。また、行為者についても、一定程度のプライバシーを保護する必要があります。

そのため、相談者や行為者等のプライバシーを保護するために、必要な措置を講じるとともに、それを従業員に周知することが必要となります。

(6)相談等を理由に不利益な取扱いをしないことの定めと周知

男女雇用機会均等法第11条においては、従業員がセクハラ被害に関する相談等を行ったことを理由に、会社がその従業員に、不利益な取扱いを行うことが禁止されています。

そして、会社は、書面にて、従業員がセクハラに関する相談等を行ったことを理由に不利益な取扱いをしないことを定めるとともに、それを従業員に周知することが求められます。

3.最後に

今回は、企業に求められるセクハラ対策について、厚生労働省のガイドラインをかみ砕いて、解説いたしました。

中小企業においては、セクハラの防止措置を講じている会社様の方が少なく、実際にセクハラ被害を申告されたり、従業員から会社が訴えられてから、その必要性に気がつくという会社様が多いというのが実情だと思います。

当事務所は、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決してきました。

当然、セクハラ案件についても、多数の対応経験を有しており、会社が従業員からセクハラ被害の申告を受けたり、セクハラに関する問題で訴えられた場合の対応策を熟知していると自負しております。

セクハラ問題でお悩みの事業者の方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

■参考情報

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000378144.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

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