メタバースと法律(3)~メタバースと知的財産法~

メタバースを利用する際には、知的財産関連法を無視するわけにはいきません。

他人の知的財産権を侵害してしまうと、損害賠償請求をされたり刑罰を適用されたりする可能性もあるので、十分に注意をする必要があります。

また、メタバース上での知的財産権保護はまだ十分ではない部分もあります。

今回は、メタバースと知的財産権について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1  メタバース上で重要な知的財産

メタバース内では、さまざまなコンテンツが提供され、また、デジタルプロダクト(製品、商品)の販売をはじめとした経済活動も行われます。

こういったコンテンツやプロダクトを保護するには、知的財産法の適用を検討しなければなりません。

また、他人の知的財産権を侵害すると違法となってしまうので、勝手にコピーや模倣などしないよう注意が必要です。

メタバースの利用の際には、知的財産関連法が関係する場面が多いので、意識をする必要があるでしょう。

2 メタバースと著作権

メタバース上のコンテンツやプロダクトには、「著作権」が認められる可能性があります。

著作権は、著作者の思想や感情を創作的に表現した著作物に認められる著作者のさまざまな権利です。

たとえば、あるユーザーがイラストや写真をメタバース上で販売しているとき、そういったイラストや写真には著作権が認められます。

こういったプロダクトをコピーして利用すると、著作権侵害になってしまいます。

著作権は、著作者が作品を生み出したと同時に発生します。特に登録などを行う必要はありません。

3 メタバースと意匠権

メタバース上の工業用のデザインには「意匠権」が認められる可能性があります。

意匠権とは、工業的なデザインに認められる排他的な権利です。

意匠権を取得するには、特許庁に出願して意匠権の登録をしなければなりません。登録された意匠権には独占的な利用権が認められます。

ただし、現在の意匠法では、何らかの機器の使用と無関係な「単なる画像または映像」は意匠登録の対象になっていません。

つまり、単なる画像表現によるコンテンツは、意匠登録できないのです。

そのため、メタバースでコンテンツの画像を模倣されても意匠権によって保護することができません。

ただし、この点については法改正の可能性も議論されており、関係省庁で検討を進めるべきとの提言もされています。

メタバースと意匠権については、今後の法改正の動向についても注目していきましょう。

4 メタバースと商標権

メタバース世界では、商標権が問題になる可能性もあります。

商標権とは、いわゆる「マーク」に認められる独占的な権利です。

たとえば文字や画像、ロゴなどについて商標登録が可能です。

商標権についても、認められるためには特許庁へ出願して登録されなければなりません。著作権のように自然に発生する権利ではないので、間違えないようにしましょう。

メタバースにおいて商標権が問題になる具体例

たとえば、A社が現実世界で商標登録してロゴを利用しているとしましょう。

B社が勝手にA社のロゴを使ってメタバース上でプロダクトを販売したとします。

この場合、A社はB社に対して商標権侵害にもとづいて利用の差し止めや損害賠償請求ができるのでしょうか?

商標権によって保護される場合、まったく同一でなく「類似している」場合でも差止請求などができます。たとえば、B社がA社のロゴに似せて見た目が類似しているロゴを使ってプロダクトを販売した場合にも商標権によって保護される可能性があるということです。

ただし、現実世界の商品とメタバース上のプロダクトでは用途が大きく異なるため、類似性が認められない可能性もあります。

メタバース世界でもロゴの商標保護を受けたい場合には、メタバース内での使用をふまえた指定商品・指定役務として商標登録しておく必要があるといえるでしょう。

5 メタバースと不正競争防止法

商標権によってロゴが保護されない場合でも、不正競争防止法によって保護される可能性があります。

不正競争防止法では、世間に周知されている商品を模倣して混同させるような表示をすることが禁止されるからです。

商標登録していないロゴやイラストなどであっても混同を惹起するような行為をされれば不正競争防止法違反になります。

ただし、不正競争防止法によって保護されるのは「周知・著名」な場合に限られます。

無名な企業のロゴなどは保護されません。そういった企業が自社のロゴを保護するには、指定商品や指定役務に配慮して商標登録をしておく必要があるといえるでしょう。

まとめ~メタバースと知的財産権については弁護士へ相談を

メタバース世界はまだまだ発展途上であり、現行の知的財産法との関連でも整備や判例の蓄積を待たねばならない点が多々あると考えられます。

なお、政府は、官民会議を立ち上げ、知的財産権保護について検討して2023年3月にも結論をまとめるとされています。

どういったケースで知的財産権の侵害行為となるのか、自社の権利を保護するためにどういった対処をすれば良いのかなどについては、非常に法律的に専門性の高い事項です。

メタバース上の知的財産権の問題が気になる場合には、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

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